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2021年の切削加工業界はAIが活躍 前編

ブログをご覧いただきましてありがとうございます。
タクミセンパイを運営している服部です。

2021年最初の記事は切削加工業界の2021年予想です。

この記事を読んでほしい人

  • 2021年の切削加工業界を知りたい
  • 切削加工業界でのAI活用を知りたい
  • AIのよくある勘違いを知りたい
  • AIシステム導入で得られるものを知りたい
  • AIシステムの開発・導入時期を知りたい
  • AIの導入方法を知りたい

2021年もAIが活躍

2021年も引き続き、切削加工業界においてAIが活躍すると予想します。

なぜ2021年もAIが活躍するのか、その理由をご説明いたします。

切削加工業界に求められる変革

2021年1月現在はウィズコロナの世界、そしてその後来るであろうアフターコロナの世界で、切削加工業界は下記3点の変革を求められると私は考えます。

  • 新しい働き方への対応
  • 人材育成
  • 差別化の獲得

新しい働き方への対応

コロナウイルスの拡大による2020年4月の緊急事態宣言後、リモートワークという働き方が定着しました。

リモートワークをしている時、紙媒体しか存在しない書類の利用に、皆さん苦労しているのではないでしょうか。

歴史が長い製造業の会社の場合、紙媒体しか存在しない書類が会社の書庫や段ボールに保存されていることが多いとお聞きします。
また、紙媒体の書類をPDFのデータにして、自社のデータベースに整理して保管してはいるものの、活用が進んでいないのが現状ともお聞きします。

過去の技術文書や議事録など、紙媒体の書類をAI OCRによってデータ化し、さらにAIの力で自動でタグ付けや分類、必要な情報を抽出することで、活用できるデータベースを構築できるようになってきました。

長い歴史の中で作り上げた資産が、リモートの導入より活用されにくくなっています。新しい働き方への対応に、AIが力を発揮しています。

人材育成

優秀な新入社員の獲得難易度が増し、熟練の職人は定年退職し、会社の技術力が弱くなっているとお聞きします。

そんな中、会社の資産をAIによって活用し、人材育成につなげる動きが出てきました。

リモートワークの場合、昔からよく言われている「見て覚えろ」ができなくなりました。
そして、リモートワークをされた方なら分かると思いますが、今まではわからないことがあれば、知っていそうな人にタイミングを見計らって直接相談すれば解決していました。

ただ、リモートワークの場合、電話やメールで相談するとなるとハードルが上がり、無駄に時間がかかったり、コミュニケーションコストが上がります。
一方、欲しい情報が会社のデータベースのどこにあるか分かっていないと、探すのに苦労したり、ほとんどの場合見つけることができません。

会社のデータベースから、自分に必要な情報を勝手にレコメンドしてくれるようなAIのサービスが出てきました。
それはまさに、会社の資産から生まれた1人の人間のような存在で、なんでも教えてくれる全社員の味方です。

製造業の各個人が作り上げた資産の共有と活用が、リモートワークの導入より進みにくくなっています。人材育成に、AIが力を発揮します。

差別化の獲得

AIは、業界TOPではない会社であって、業界の常識を変えて、TOPの地位を獲得できる力を持っています。

ウィズコロナで苦しい現在、製造業の生き残りをかけた戦いが始まっています。
生き残るためには、他が持っていないような差別化が必要であり、AIは差別化を短期に獲得する力を持っています。

予想まとめ

日本の切削加工業界の高品質で納期厳守の文化を維持しつつ、AIを活用して「新しい働き方への対応」、「人材育成」、「差別化の獲得」を進めることが、生き残りに必要であると考えます。
(過剰品質を求める流れには反対ですが)

2回にわたって、切削加工業界を変えるAIについて説明いたします。

ちなみに、AIと並んで、IoT(Internet of Things)も展示会やメディアで最近よく聞くキーワードです。

IoTの活用事例としては、工作機械をインターネットにつなげることでリアルタイムに稼働情報を取得するなどがあります。
IoTはあくまでデータを集めるための手段であり、集まったデータの活用にAIが注目されています。

つまり、IoT(データ収集)→AI(データ活用)であり、DX(デジタルトランスフォーメーション)の手段の1つとしてAIが活用されています。

AIを調べると、データサイエンティストというワードをよく目にするかと思います。
AIを含むテクノロジーを利用することでデータを分析をすることをデータサイエンスといい、その業務を担当するのがデータサイエンティストです。

DX、データサイエンス、AIの関係を下図にまとめてみました。

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AIのよくある勘違い

初めに、AIのよくある勘違いについて説明いたします。

2000年代初頭のディープラーニング(深層学習)の登場により、第三次AIブームに突入しました。
*ディープラーニングや第三次AIブームは、調べるとたくさんいい記事が出てくるので、ここでは詳しい説明を省略いたします。

ただ、ディープラーニングはブームのキッカケに過ぎず、AIが実用可能なものになったのは、データが容易に集められるようになったことと(IoTでビッグデータ収集など)、データの処理能力が向上していることが主な理由です。

AIの導入を検討されている方が良く勘違いされていることが、下記3点です。

  • 現在のAIは全てディープラーニングである
  • AIは人より精度の高いことができる
  • AIは人の仕事を奪う

現在のAIは全てディープラーニングである

第三次AIブームのキッカケとなったのは、ディープラーニングです。

しかし、ディープラーニングは画像や音声、テキストを認識することができる技術であり、これらのデータを対象としたケースにおいては、今までのAIシステム以上の精度を出すことができますが、すべてのデータにおいて万能というわけではありません。

ディープラーニング以外のマシンラーニング(機械学習)には、決定木、ランダムフォレスト、回帰分析など様々な手法があるのですが、現在もこれらの手法は現役で採用されています。

AI、マシンラーニング(機械学習)、ディープラーニング(深層学習)の関係を下図にまとめてみました。

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ちなみに、AIでどうにかしたいと相談受けた内容が、AIがなくても実現できるケースもあります。

2021年現在、AIで課題を解決する手法は、ディープラーニングが全てではないことを知っていただければと思います。

AIは人より精度の高いことができる

AIを魔法のようなものと勘違いされている方が結構います。

機械学習は、大量のデータから高次元・複雑な法則を読み取ることが可能であり、人が今までやっていたことを自動化できるのは、魔法のようだとも言えますが、人より精度が高い結果を出せることはほとんどありません。

AIは、学習というフェーズがあるのですが、例えば100点の学習データを使っても、90点くらいの結果が出るといった感じです。
結果を出すまでの時間(スピード)に関しては、AIの方が優れているケースはあります。

AIは人を超えた万能なシステムにはなれないことを、知っていただければと思います。

AIは人の仕事を奪う

こちらはAIが注目された初期によくメディアなどで取り上げられた内容です。

AIのシステムを構築する上で、どのような結果を出すべきか指示し、その結果を評価できるのは人です。
つまり、AIシステムを構築し、そのシステムを維持・向上させるのに、必ず人が必要になるのです。

また、前述した通り、AIは完璧なものを作り出すことはできないので、AIと人が共同する仕組みをつくることが理想的といえます。

AIによって人が全く不要になることはなく、不要な人を減らして、人がAIの結果をチェックするような体制になることを知っていただければと思います。

AIのビジネスへの活用

次に、AIのビジネスへの活用について説明いたします。

2021年現在、AIはビジネスの世界で当たり前に使われるものになりました。
2020年は、新聞に毎日AIを活用した技術やサービスの記事が見つかるほど、AIがビジネスの世界で当たり前に活用され始めたことを肌で感じることができました。

Google アラートでAIをキーワードに設定してみると、毎日新しいAI活用のニュースが通知されます。

国内だけでもAI関連の会社は300社以上あるといわれており、先進的なAIの技術やサービスを提供するのは主にAIスタートアップであることが多いです。

AIスタートアップの多くは、創業初期はAIシステムの受託開発に力を入れています。
受託開発とは、ユーザーの求めるAIシステムをオーダーメイドでゼロから作り上げるものです。

AIシステムの受託開発は、PoC(概念実証)と呼ばれるAIで実現可能か確認するフェーズが基本的にはあるんですが、これに1~3ヶ月・数百万円かかります。
PoCで実現可能か確認できたあと、AIシステムの構築と顧客システムへの導入に数ヶ月・数千万円、また保守やライセンスに毎年数百万円~数千万円かかり、大規模で高額なものになります。

製造業の99%は中小企業であるため、前述したAIの受託開発システムはおもに大手を対象としたものでした。

ただ、2020年頃より、大手でのAIの検証や導入はある程度落ち着きを見せ、AIスタートアップは中小企業をターゲットにした、AI製品に力を入れ始めています。

ここで言うAI製品とは、顧客ごとにAIを学習させることなく(させる場合もそこまで大掛かりなものでななく)、既にある程度完成されたシステムで、汎用的に使えるものを示しております。

2020年は、製造業に限らず、様々な業界や業種をターゲットとしたAI製品が多く誕生した年でした。
汎用的なAI製品は、月額数万円~数百万円で利用でき、今後さらに種類は増え、導入する企業が増えると考えられます。

AIシステム導入によって得られるもの

AIシステムを導入することで得られるものを大きく下記2つに分類してみました。

  • 自動化
  • 自動化+新規ビジネスモデルの創出
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自動化

AIシステムを導入することで、今まで人がやっていたことをAIに置き換え、自動化できます。

既に登場しているAIシステムを例に説明すると、下記のようなケースです。

  • 取引先からFAXで届いた部品の注文書を人が目で見て手入力していたものを、AI OCRを使って自動で読み取って入力する
  • 取引先との会議を録音し、録音データを音声認識させて、議事録を自動で作成する
  • 取引先から見積もりを依頼された図面を画像解析し、過去の履歴から似たような図面を見つけて、価格や納期の参考にする

今まで人がやっていた業務をAIに置き換えて自動化することで、人件費を削減できるだけでなく、スピードが向上したり、習熟度に関わず同じ精度が出せたりします。

ただし、これらのメリットは主にAIシステムを導入した会社内で完結してしまいます。

自動化+新規ビジネスモデルの創出

自動化+新規ビジネスモデルの創出について、紳士服のコナカが提供する自動採寸AIシステムを例に説明します。

コナカが提供する自動採寸AIシステムは、専用のアプリを使って、身長や体重といった身体データの入力と、写真を数枚撮影するだけで、誤差±1㎝程度のオーダーメイドスーツを購入できるといったサービスです。

このサービスが登場する前は、コナカの店舗に行き、テーラーと呼ばれるスペシャリストに採寸してもらうことで初めて、精度の高いオーダーメイドスーツを手に入れることができました。
自動採寸AIシステムは、サービスを利用する人にとって、わざわざ店舗に足を運ばなくていいことと、人と接触しなくていいといった今のウィズコロナの時代に合ったメリットがあります。

このように、AIによってテーラーの採寸が自動化されただけでなく、それらがシステムになることで利用者にもメリットが生まれ、新たな価値を生み出すことができています。

この価値により、スーツが欲しい人は数あるオーダーメイドスーツの会社の中から、自宅にいながら購入できるコナカを選択するようになり、自動採寸AIシステムを中心とした新たなビジネスモデルが構築されています。

AIシステムの開発・導入時期

次に、AIシステムをいつ開発・導入するべきかについて説明いたします。

自動化が目的の場合

AIシステムの導入が、自動化だけを目的とするものであれば、特に緊急性がない限り様子見してしまってよいと思います。

というのも、現在AIスタートアップ各社がAI製品をどんどんリリースしており、汎用的ではあるが安価に利用できるものが今後増えてくるからです。

新たなビジネスモデルの創出もしたい場合

一方、自動化だけでなく、新たなビジネスモデルの創出がAIシステム導入の目的となる場合、すぐに動くべきだと思います。

初めてAIによって○○を実現したというプレスリリースは、打てば初めての事例として注目されて拡散性が高いというメリットがあります。

ちなみに、AIシステムで特許を取ることはできるのですが、特許によってそのアイデアを完璧に守ることは難しいです。
異なるAIの手法を使い、同じような結果を出すことが可能なので、特許によって技術(アイデア含む)を守ることは難しいとされています。
そのため、特許にあまり力を入れていないAIスタートアップも存在します。

作り上げたAIシステムを独占するというのも手ですが、AIシステムを外販することで開発費の回収だけでなく新たな売り上げを得て、市場のコントロール権を得るべきだと私は考えます。

そのため、プレスリリースによって注目させる→AIシステムでスピーディに市場で存在感を表す→AIシステムの外販を開始して新たな売り上げを得つつ市場のコントロール権を得ることが理想的だと考えます。

AIの導入方法

ユーザーの皆様が、AIを導入する手段を下記の図にまとめました。

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①自社開発

ユーザーが自社の社員でAIシステムを開発・導入するパターンです。

最近では、製造業の大手では自前のAIエンジニアを獲得、育成しているのを耳にするようになりました。
ただ、AIスタートアップと異なり、AIに関する最新の技術や導入事例の情報がユーザーの立場だと入手しにくいため、スピード感はないとお聞きします。

しかし、外注でAIシステムの導入を進める際に、AIを分かっている人材が自社にいることは、プロジェクトの成功確率をぐっと上げてくれます。

AIの得意なところ、苦手なところをわかってる人がいるだけで、プロジェクトの成功確率だけでなく、学習データの用意や結果に対する評価など、プロジェクトがスケジュール通りに進められるようになります。

②AIスタートアップと受託開発(or製品購入)

現在、最も多いAIシステムの導入方法が、AIスタートアップとの受託開発です。

AIに関する最新の論文から情報を得ているAIエンジニアと一緒に、システムを開発していきます。

ユーザーとして気を付けなければならないのは、AIエンジニアはAIに関しては詳しいですが、製造業のビジネスモデルに詳しいわけではありません。
そのため、プロジェクト開始前に、AIスタートアップ側の営業やエンジニアに、自社のビジネスモデルやプロジェクトの目的、業界の常識を正しく伝えることが重要です。

自動化+新たなビジネスモデルの構築を目的とする場合は、自社開発かAIスタートアップと受託開発する方法を取ることが多いです。

③メーカーからのAI導入済み製品の購入

AIが既に搭載された製品をメーカーから購入するパターンです。

例えば、DMG森精機のAIチップリムーバル搭載のマシニングセンタを購入するような場合です。
この場合、AIシステムの開発はメーカーで完了しており、ユーザーは特にAIに関してすることはほとんどありません。
(学習データで用意して、自分たちで学習させる必要がある製品も今後登場すると思います)

AIシステムはメーカーが独自で開発している場合もあれば、AIスタートアップと協同で開発している場合もあります。

④大手IT会社からのAI製品購入

オリジナルのAI製品を販売しているパターンです。

汎用的で多くのユーザーに利用されるようなシステムを取り扱っているケースが多いです。

AIシステムは大手IT会社が独自で開発している場合もあれば、AIスタートアップと協同で開発している場合もあります。

⑤商社からの製品購入

機械商社や工具商社のオリジナルのAI製品を購入するパターンです。

現時点でこのパターンは確認できていませんが、2020年にユアサ商事がAIスタートアップと資本提携するなど、今後増えていく可能性があります。

AIのシステムは商社が独自で開発する場合もあれば、AIスタートアップと協同で開発する場合もあります。

⑥その他からの製品購入

③~⑤に該当しない、例えばユーザーが自社のために作ったAIシステムが外販され、それを購入するようなパターンです。

AIの受託開発のシステムは非常に高額なので、自社で利用するだけでなく、外販することで開発費を回収するような場合もあります。

AIシステムはその他の会社(例えばユーザー)が独自で開発している場合もあれば、AIスタートアップと協同で開発している場合もあります。

オススメのAI導入の進め方

私は、自社で1〜2名のAI人材を獲得・育成しつつ、スピード感あるAIスタートアップと一緒にAIシステムを開発することをオススメしており、この場合だとAIシステム導入と自社のAI人材の育成を同時に実現できます。

AIシステムの構築において、学習データの量と質が重要になってきます。
量については、数千、数万データ以上が望ましいといったケースもあります。
ただ、今までの1/10の量でも同等の精度が出せる技術なども登場しており、今は量よりむしろ質が重視されています。

AIシステムのプロジェクトにおいて、プロジェクトがスタートしてから学習データを集めるとなると、そこから半年~数年かかるといったケースも実際あります。

自社にAI人材がいると、すぐにAIシステムのプロジェクトがスタートしないにしても、早い段階で質の良い学習データを集める動きを進めることができ、スタートダッシュをきりやすくなります。

まとめ

  • 2021年の切削加工業界ではAIが活躍する
  • コロナの影響もあり、切削加工業界では「新しい働き方への対応」「人材育成」「差別化の獲得」の3つの変革が求められる
  • ディープラーニング以外の手法も現役で利用されている
  • 多くの場合、AIは人より高い精度を出すことができず、万能ではない
  • AIが人の仕事を奪うことはなく、AIと人が共同する仕組みをつくることが理想形である
  • AIシステムの導入により、自動化のみの達成か、自動化に加えて新規ビジネスモデルの創出が可能である
  • AIシステム導入の目的が自動化のみの場合、緊急性がない限り様子見でよい
  • AIシステム導入の目的が新規ビジネスモデルの創出の場合、早期に取り組みべきである
  • AI導入方法は数パターンあり、自社の技術・人材や、求めるスピードによって選択する必要がある
  • AI導入は、自社で1~2名のAI人材を獲得・育成しつつ、スピード感あるAIスタートアップと一緒に開発することをオススメする

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