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2021年の切削加工業界はAIが活躍 後編

ブログをご覧いただきましてありがとうございます。
タクミセンパイを運営している服部です。

2021年の切削加工業界はAIが活躍 前編」に続き、切削加工業の2021年を変えるAIについてご説明いたします。

前編では、切削加工業界に求められる変革として、下記の3点の変革が必要であると述べました。

  • 新しい働き方への対応
  • 人材の育成
  • 差別化の獲得

これらについて、事例を交えながら、さらに深掘りしていきたいと思います。

この記事を読んでほしい人

  • 2021年の切削加工業界を知りたい
  • 「新しい働き方への対応」「人材育成」「差別化の獲得」の重要度と緊急度を知りたい
  • 切削加工業界におけるAI活用のテーマを知りたい
  • AI活用による情報資産の活用と事例を知りたい
  • AI活用による暗黙知の可視化と事例を知りたい
  • AI活用による脱属人化と事例を知りたい
  • AI活用による差別化の獲得と事例を知りたい

重要度×緊急度の2軸マトリクス

「新しい働き方への対応」「人材育成」「差別化の獲得」の3つの変革を、重要度×緊急度の2軸マトリクスに当てはめてみました。

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横軸が緊急度で右にいくほど緊急度が高く、縦軸が重要度で上にいくほど重要度が高くなっています。

新しい働き方への対応

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2021年1月現在、再び東京と関東3県に緊急事態宣言が出され、「新しい働き方への対応」は重要度、緊急度ともに高いと考えます。

「新しい働き方」、具体的にはリモートワークやWEB商談、ペーパーレス化への対応につながるAI製品含むITサービスはすでに多く存在するため、早期に導入が可能です。

AIを使った製品でいえば、請求書や注文書のテキストデータ化に使われるAI OCRサービス、問い合わせに対応するAI チャットボットサービスなどがあり、これらは既に先進的な企業では使用され始めています。

また、AIに限定しないITサービスとしては、ZoomやteamsなどのWeb会議システム、SansanやHotprofileなどの名刺管理システム、SalesforceやKintoneなどの商談管理システム(SFA)などが多くの企業で利用されています。

「新しい働き方への対応」は、早期に運用を開始するために、今すぐ取り組むべきテーマだと考えます。

人材育成

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切削加工業界における「人材育成」のテーマは、優秀な新入社員の獲得難や職人の退職など、コロナの前から問題になっていました。
コロナ前は数年かけて取り組めばいいテーマで、そこまで重要度と緊急度は高くありませんでした。

しかし、現在コロナの影響で、フルリモートや一部リモートを導入した新しい働き方にシフトする中、社員間のコミュニケーションが低下しています。

新卒や転職者は、入社して数週間は研修などで出社して、その後はリモート勤務といった働き方が増えています。
入社間もない時期に、誰に相談すればよいかわからない状態、そして相談しやすい関係の構築がしっかりできていない状態で仕事をしなければならず、苦労しているという声をよくお聞きします。

気軽に相談しにくい環境だと、自分で調べることが多くなりますが、入社まもない時は聞いてしまったほうが圧倒的に効率がいいと思います。
また、他の人の仕事の仕方を見て覚えることができないのも、痛手です。

何を隠そう私も、転職して1週間でほぼフルリモート勤務になって苦労しました笑

入社まもない社員に限らず、勤続年数が数年以上の社員であっても、リモートワークでコミニケーションが低下してモチベーションが下がり、生産性が落ちたり、転職を考える時間を与えてしまいます。

入社間もない優秀な人材を成長させて活かす、そして勤続年数が数年以上の人材を維持させることを考えれば、「人材育成」の重要度は高いと考えられます。

「人材の育成」は、ウィズコロナ時代においては、2021年度中に運用を開始させ、1〜3年で確立させるべきテーマだと考えます。

AIを使った製品でいえば、モチベーションクラウドやタレントパレットなどの組織改善サービスなどの必要性が高まっています。

差別化の獲得

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AIを活用した「差別化の獲得」を実現すると、早くても1年はかかります。

「差別化の獲得」を実現するための、受託開発でのAIシステム導入の一般的なフローが下記になります。

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データがそろっていないと集めるところから始めなければならなかったり、データはあるが整理やラベル付けされていないとその作業に時間がかかり、データ準備に数ヶ月というケースはよくあります。

そのため、現在の自社の経営状況や差別化できる商品を確認し、AIによる「差別化の獲得」が早期に必要だと判断した場合は、2021年内のシステム稼働は難しいにしても、今から準備に取りかかる必要があります。

そのため、重要度は高めに設定し、緊急度はそこまで高くしませんでした。

3つの変革をAIで実現できることで分類

「新しい働き方への対応」「人材育成」「差別化の獲得」の3つの変革を、AIによって実現できることで分類してみました。

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「新しい働き方への対応」および「人材育成」は、AIによる自動化が実現できます。

「新しい働き方への対応」と「人材育成」は、課題と解決手段が共通している部分があるため、重なりあうように配置しました。

「人材育成(ノウハウを他社に販売できる場合)」と「差別化の獲得」は、AIによる自動化だけでなく新規ビジネスモデルの創出が可能です。

切削加工業界の3つの重要テーマ

「新しい働き方への対応」および「人材育成」をより深堀するために、切削加工業界における3つの重要テーマを下記に記載しました。

  • 情報資産の活用
  • 暗黙知の可視化
  • 脱属人化

「情報資産の活用」「脱属人化」「暗黙知の可視化」を、3つの変革の分類に追加してみました。

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「新しい働き方への対応」を実現するための手段に、「情報資産の活用」や「脱属人化」があります。
同じく、「人材育成」を実現するための手段に、「暗黙知の可視化」や「脱属人化」があります。

「脱属人化」は、「新しい働き方への対応」と「暗黙知の可視化」を達成することで、実現が容易になります。

さらにその先には、「差別化の獲得」が期待できます。

業務におけるAIの活用は一歩一歩取り組むべきですが、あらかじめ全体像を描いて計画・検討しておくと、1つ1つの取り組みがつながり、大きな成果を得ることができます。

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情報資産の活用

会社には、創業時から社内で製作したものから、顧客から受領したものまで、大量の資料が保管されています。

特に製造業は歴史が長い会社が多く、20年以上前だとまだまだPCが普及しておらず、2000年以前は手書きの紙の書類しか存在しないのが当たりです。

紙媒体でしか保管されていない製造業の資料には、技術仕様書、図面、報告書、議事録、特許関連書類、契約関連書類、競合調査資料、業界誌、実験データなど様々なものが存在しています。

それらが廃棄されずに保管されているのは、いつか使われる可能性があったり、保管の義務があるからでしょう。

紙媒体でしか保存されていない場合、書庫やダンボールの山から資料を探す必要があり、探すだけで時間がかかります。
そもそも資料の存在さえ知らないと、探すことさえできません。

紙媒体の資料に関しては、AI OCRの技術などで、データ化して活用できる形にする動きがでてきています。

コロナウイルスの影響で、自宅での仕事も増えてきて、紙の書類を会社で見ることが難しくなり、AIを活用した効率的なデータ化や活用がますます進むと考えられます。

会社に存在するが、ほとんど利用されていない・全く利用されない資料を利用できる形にすることにAIの活用が進み、製造業の強みとする長い歴史の中で蓄積した資産を活かす動きがみられると考えております。

AI製品としては、株式会社電通国際情報サービス(ISID)が提供する、技術文書や帳票類をAIでテキストデータ化する製品:TexAIntelligence(テクサインテリジェンス)などがあります。

暗黙知の可視化

まず、暗黙知について説明いたします。

経験したことで得た知識。特に作業現場で培われた、勘や感覚などとして体得された知識。経験値ともいう。逆に文章や数値として表現し伝達できる形式の知識を形式知という。(weblio辞書より)

つまり、マニュアル化できない(もしくは困難)な知識のことをいいます。

「脱属人化」とテーマは近いのですが、脱属人化の場合は、職人がなぜそうしているかをマニュアル化できる場合は、それをシステム化して再現することが容易です。

一方、暗黙知はマニュアル化が困難なため、AIがないとシステム化することが難しいです。
マニュアル化が困難なことをAIが手助けしてくれるとはいえ、あくまでAIが実現できるのは、学習に用いたデータに基づく過去の延長線上のことです。

さらに、システムを作る上で、人が結果の許容範囲を指定したり、データや結果の合否を判定して調整しなければならない場合もあり、人とAIでシステムを作り上げることになります。

製造業には、職人技と呼ばれるような技術を持っている方が多いです。
しかし、職人が働き続けている間は会社にとってプラスになりますが、例えば怪我をして働けなってしまったり、転職してしまったり、定年退職してしまうなど、人に依存した技術は経営上のリスクにもなります。

職人技というと、手先の器用な作業をイメージされる場合もあるかと思いますが、目を使って検査機では見落とす不良品を見つけたり、耳を使って機械の初期の異常に気付くなど、五感を活用したものから、過去の経験など知識を活用したものまで幅広いです。

職人の手の動きをロボットで再現する取り組みも増えておりますが、AIの活用として伸びているのは職人の目や耳に変わる技術です。

職人しか気づけないバリ・傷・打痕・錆などをAI画像認識で発見する、機械の故障の初期に発生する異音をAI音声認識技術で発見するなど、「暗黙知の可視化」を実現するAIは今後ますます増え、導入する企業が増えていくと思います。

人が実施している目視によるワークの外観検査をAIが行う、異常検知・外観検査技術は、製造業におけるAIの活用として進んでいます。
異常と判断すべき指標をマニュアル化できなくても、正常と異常の画像を用意することができれば、AIが判断してくれるようになります。

今では学習データ用に100枚程度の画像を用意さえすれば、十分な精度が出せるようになってきています。
さらに、異常の画像データが集まりにくい現状から(素晴らしいことですが!)、正常な画像だけで学習できるような技術も進んでいます(良品学習などといいます)。

AI製品としては、株式会社Albertが提供する、異常検知・外観検査・物体検出なをAIで自動化する製品:タクミノメなどがあります。

切削面のカッターマークにバラツキがあったとしても、バリ・傷・打痕・錆などを正確に特定することが可能です。

脱属人化

まず、属人化について説明いたします。

企業などにおいて、ある業務を特定の人が担当し、その人にしかやり方が分からない状態になることを意味する表現。多くの場合批判的に用いられ、誰にでも分かるように、マニュアルの作成などにより「標準化」するべきだとされることが多い。企画・開発業務など、属人化されているのが一般的と言われる業務もある。(weblio辞書より)

脱属人化において、マニュアルが容易できればAIは必要ないのではないか、と思われる方もいらっしゃると思います。
ただ、自分の仕事を思い出して欲しいのですが、例えマニュアルがあっても、分かりにくかったりボリュームが大きいと見るのが嫌になりますよね。

また、マニュアルがあるのに見ない人や、あるのを知らずに働いている人もいます。
そのため、人が作ったマニュアルをベースにAIのシステムを構築することで、誰でも簡単に正しい結果を出すことができるようになります。

例えば、製造業の業務に不可欠な図面を対象とした画像解析技術を活用して、ベテランにしかできない図面の確認作業や、過去の取引内容から似たような図面を探せすことができるAI製品が登場しています。

株式会社電通国際情報サービス(ISID)が提供する図面確認作業をAIで自動化する製品:DiCA(ディーカ)や、株式会社日立ソリューションズが提供する類似図面をAIで検索できる製品:Hi-PerBT 図面検索AIなどです。

図面の確認ができる人が忙しかったり、休んでいたりすると進まなかった業務が、システムによりいつでもチェックできるようになります。

部品はマイナーチェンジや類似品が多いので、同じ人が図面を見れば「1年前に似たようなものを見たことがある」と気づけますが、初めて見た人が担当すると過去の実績に気づけません。
そんな時、類似図面を検索できると、誰でも気づくことができます。

その他、データ化されている資料であっても、適切にタイトルがつけられてなかったり、保管場所が守られていないと、必要な時に必要な人が使えない状態にあります。

これらの課題を解決するために、検索しなくても関連性の高い資料をレコメンドしてくれるようなAI製品が登場してきています。

株式会社図研プリサイトが提供する、情報資産をAIでレコメンドする製品:Knowledge Explorerなどが該当します。

差別化の獲得

「脱属人化」と「暗黙知の可視化」に取り組むことで、職人の技術がAIによって自動化され、それを外向けに活用することで、「差別化の獲得」が可能になってきます。

DMG森精機が提供する、AIを使った切りくず自動除去システム:AIチップリムーバルは、今まで人がやっていた切りくずの蓄積具合の確認や処理をAIにより自動化し、誰でも利用できるように工作機械に搭載して製品としての差別化の獲得を実現しています。

切削加工の加工プログラム作成をAIで完全自動化するようなAI製品も登場予定です。(アルム株式会社のARMCODE1
切削工具の寿命をAIで予測するような動きも出てきています。(北村化学産業株式会社

切削工具の寿命予測は夢のような技術ですが、工具の種類、突き出し量、加工条件、ワークの材質、段取りの誤差、工作機械の種類、クーラントの種類などパラメーターが大量にあるため、すべてのユーザーで汎用的に高精度で予測するには時間がかかるのではと考えます。

とはいえ、切削加工業界にも、これまでの当たり前を変えるAIが誕生しており、今後が楽しみです。

自社の業務改善のためにAIによる自動化を実現するだけでなく、その技術やノウハウを外販することで差別化を獲得し、新たなマーケットを作ることがAI活用の理想と考えます。

まとめ

  • コロナの影響もあり、切削加工業界において「新しい働き方への対応」は、重要度・緊急度ともに高い
  • 切削加工業界において「人材の育成」は、コロナの影響で2021年度中に運用を開始させ、1~3年で確立させるべきテーマとなった
  • AIによる「差別化の獲得」が早期に必要な場合、2021年内のシステム稼働は難しいにしても、すぐに準備に取りかかる必要がある
  • 「人材育成(ノウハウを他社に販売できる場合)」と「差別化の獲得」は、AIによる自動化だけでなく、新規ビジネスモデルの創出が可能である
  • 「情報資産の活用」「暗黙知の可視化」「脱属人化」の3つが、切削加工業界における重要なテーマである
  • 「情報資産の活用」について、紙の資料をAIでデータ化するなど、製造業の強みとする長い歴史の中で蓄積した資産を活かす動きが進んでいる
  • 「暗黙知の可視化」について、マニュアル化が困難な職人の目や耳をAIで再現し、システム化する動きが進んでいる
  • 「脱属人化」について、人が作ったマニュアルをベースにAIシステムを構築し、誰でも簡単に正しい結果を出すことができる仕組化が進んでいる
  • 「脱属人化」と「暗黙知の可視化」に取り組み、職人の技術をAIで自動化し、それを外販することで「差別化の獲得」が可能となる

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