切削加工業界の動向・トレンドを知りたいですか。
この記事を書いた私は工具メーカーでの営業・マーケティングの経験を活かし、切削工具と切削加工業界に特化した専門サイト「タクミセンパイ」を2020年から運営しています。
2025年の活動の中で感じた切削加工業界の変化をまとめました。
本記事では切削加工業界の2025年を振り返り、業界の動向・トレンドを紹介しています。
この記事を読むことで「切削加工業界の景気」「MECT2025開催実績と実用化が進むセンシングツール」「切削加工業界でのX活用と生成AI」の3つの視点から業界の今を知ることができます。
切削加工業界の2025年を振り返る
切削加工業界の2025年を振り返り、業界の動向・トレンドについて下記3つのテーマで紹介します。
- 切削加工業界の景気
- MECT2025開催実績と実用化が進むセンシングツール
- 切削加工業界でのX活用と生成AI
切削加工業界の景気
工作機械の受注総額、特殊鋼工具の生産高から切削加工業界の景気を確認していきます。
特に工作機械の受注額は景気の先行指標とされており、設備投資意欲を把握するために重要なデータとなっています。
工作機械の受注総額
日本工作機械工業会が公開している工作機械主要統計のうち、2022年~2025年10月の工作機械 受注総額をまとめたものが下記です。

2025年の工作機械 受注総額は10月までの合計(10か月間)で直近好調だった2022年比88.1%、昨年2024年比107%でした。
工作機械の受注総額は2022年に及ばなかったものの、2024年と比較して好調で、少しずつ回復していることが予想できます。
下記は工作機械受注額の内需・外需をまとめたものです。

2022年の工作機械受注額合計は内需:外需=34:66、2025年(10月まで)は内需:外需=28:72です。
2022年と比較すると、2025年(10月まで)の工作機械受注額は外需の割合が高くなっています。
そのため、2025年10月までのデータでは外需が工作機械の受注を牽引していると考えられ、国内の切削加工業界としては設備投資が2022年同等まで進んでいないと予想します。
特殊鋼工具の生産高
経済産業省機械統計のうち、2022年~2025年8月までの特殊鋼工具 生産高をまとめたものが下記です。

2025年の特殊鋼工具 生産高は8月までの合計(8か月間)で直近好調だった2022年比92.1%、昨年2024年比98.7%でした。
消耗品である切削工具のうち特殊鋼工具の生産高は2022年に及ばず、2024年から低い水準で推移しています。
切削工具の生産高より、2024年以降に切削加工の仕事が少なくなっていることが予想できます。
その他景気に関する情報
金属加工をされている企業のXアカウントから、2025年前半に「リーマン・ショックの時より酷い」「同業者が倒産した」などの投稿が確認され、2024年と比較しても厳しかったのではいう印象です。
専門誌の特集を分析した「【2025年】切削加工業界の専門誌 特集まとめ」を公開していますが、2025年特有のトレンドはありませんでした。
2025年はトレンド起因で切削加工業界の売上が伸びることはなく、また特定の業界が伸びたということもなかった1年でした。
切削加工業界とは直接関係しませんが、2025年は「フィジカルAI」というキーワードが注目されるようになりました。
2025年12月に開催された国際ロボット展においても、フィジカルAIに関連した展示が目立ち注目を集めました。
ファナックとNVIDIA、安川電機とソフトバンクがフィジカルAIの領域で協業することが発表され、この領域から切削加工業界の投資が進むと嬉しいところです。
MECT2025開催実績と実用化が進むセンシングツール

2025年10月22日(水)〜25日(土)にポートメッセなごや(名古屋市国際展示場)でMECT2025(メカトロテックジャパン2025)が開催されました。
MECT2025開催実績と実用化が進むセンシングツールについて紹介します。
MECT2025開催実績
MECT2025の来場者数合計は77,613人で、MECT2019の90,244人と比較して12,631人少なく、MECT2023の77,225人と比較して388人増えました。
MECT2025の来場者数は前回より微増(前回比101%)し、2019年規模には届いていません(2019年比86%)。
MECTの来場者数は今後しばらく2025年実績ベースで推移し、2019年規模には回復しないのではないかと予想します。
MECTは約98%が国内から参加しているため、来場者数の減少から、国内における切削加工の市場規模が2019年以降に減少したと考えられます。
MECT2025の開催曜日ごとの傾向として、土曜日の来場者数は他の曜日と比較して昨年同様に少なく、前回MECT2023の土曜日から2.3%減少しています。
MECTの土曜日における来場者数は減少傾向にあり、切削加工業界で働き方に変化が起きていると考えます。
MECT2025の結果について詳しくは「MECT2025の来場者数と会場レポート」をご覧ください。
実用化が進むセンシングツール
MECT2025では切削工具をIoT化したセンシングツールについて、実用化が進んでることが確認できました。
センシングツールは切削工具のイノベーションとして期待できる技術で、今後工作機械・測定機器などとの連携やAIを用いたデータ活用が進む領域であり、トレンドになるのではと予想します。
センシングツールについては「実用化が進むセンシングツールをMECT2025で調査」で紹介しています。
切削加工業界でのX活用と生成AI

切削加工業界におけるXの活用が2025年も活発でした。
Xを活用し、MECT2025出展社は来場者へ情報を発信したり、魅力的なノベルティで来場を促していました。
また、MECT2025参加者においても、Xで情報を収集したりフォロワー間で交流していることが確認できました。
一方、2022年から毎日Xの投稿を続けている経験より、2025年のXはフォロワー数を増やすことが難しくなったという印象です。
Xのアルゴリズムが変わり、アルゴリズムにGrokが活用されるようになったことで、これまで通りの運用ではなかなか伸びずに苦労しました。
新規アカウントがフォロワー数を増やすことが難しくなったため、先行してフォロワー数を獲得しているXアカウントが今後有利になる場面が増えるのではないかと予想します。
2025年の切削加工業界におけるXで特徴的だったのは、投稿画像・動画への生成AI活用が進んだことです。
ChatGPT・Copilot・Geminiの他、Xに搭載されたGrokを利用し、画像や動画を生成してXに投稿することが当たり前になりました。
タクミセンパイが開催した切削工具に関する画像・動画を投稿する企画においても、生成AIを使った画像の投稿が確認されました。
「#切削工具の日」の生成AIを用いた投稿画像は「【2025年】#切削工具の日 投稿まとめ Part2」で見ることができます。
生成AIの登場により、切削加工業界のX活用における画像・動画投稿のハードルが下がり、投稿者のイメージを具体化しやすくなったと感じます。
生成された画像や動画をキッカケに、議論やコミュニケーションが進んでいるようなシーンも確認できました。
生成AIを用いた画像生成は著作権などの観点でトラブルになる側面もあります。
しかし、切削加工業で生成される画像が著作物に該当するケースが少ないこと、投稿される方のSNSリテラシーが高いこともあってか、目立ったトラブルは確認されませんでした。
今後も切削加工業界のXにおいて、生成AIを用いた画像・動画の投稿は増え、活用が進むのではないかと予想します。
編集長コメント
「切削加工業界の2025年を振り返る」いかがでしたか。
切削加工業界の変化を中心にまとめました。
業界誌や専門誌を見ているだけでは気付けない視点もお伝えできたと思いますので、業界関係者の皆さまは参考にしていただければ嬉しいです。
2025年10月には、高市早苗政権が発足しました。
高市総理は日本の製造業の復権を経済政策の柱の1つとして重視しており、これから切削加工業界においても関連した投資が進むことを期待しています。
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執筆者情報

本記事はタクミセンパイの服部が執筆・編集しました。
私は工具メーカーでの営業とマーケティングの経験を活かし、切削工具と切削加工業界に特化した専門サイト「タクミセンパイ」を2020年から運営しています。
私(服部)の実績や経歴については「運営について」に記載しています。
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