オリジナル記事

歴史的価値のある工作機械を見ることができる施設9選と機械遺産7選

歴史的価値のある工作機械を見たことがありますか

この記事を書いた私は工具メーカーでの営業・マーケティングの経験を活かし、切削工具と切削加工業界に特化した専門サイト「タクミセンパイ」を2020年から運営しています。
工作機械の魅力を発信するために、歴史的価値のある工作機械を展示する施設について独自にまとめました。

本記事では歴史的価値のある工作機械が展示されている9つの施設と機械遺産に認定された7つの工作機械(または工作機械群)について紹介しています。
この記事を読むことで、歴史的な工作機械を見ることができる魅力的な施設を知ることができます

MECT2025攻略ガイド MECT2025攻略ガイド

歴史的価値のある工作機械を見ることができる施設9選と機械遺産7選

本記事では、歴史的価値のある工作機械を見ることができる9つの施設を紹介しています。

工作機械を中心に展示する下記3施設を紹介しています。

  • 日本工業大学 工業技術博物館(埼玉県)
  • ヤマザキマザック工作機械博物館(岐阜県)
  • 三共工作機械資料館(静岡県)


また、工作機械を複数展示している下記3施設についても紹介しています。

  • 博物館明治村 機械館(愛知県)
  • 熊本大学 工学部 研究資料館(熊本県)
  • トヨタ産業技術記念館(愛知県)


さらに、歴史的価値のある工作機械を展示している下記3施設を紹介しています。

  • 国立科学博物館(東京都)
  • 三菱重工業 長崎造船所 史料館(長崎県)
  • 大和ミュージアム 屋外展示(広島県)

これらの施設の多くには、日本機械学会より「機械遺産」に認定された工作機械が展示されており、認定年と機械遺産名称についても紹介しています。



1.日本工業大学 工業技術博物館

画像
画像提供:Xフォロワー様


「日本工業大学 工業技術博物館」では工作機械の他、工作機械でつくられた工業製品として蒸気機関車も展示されています。

2018年に日本機械学会より「日本工業大学の所蔵する歴史的工作機械群」が機械遺産として認定されました。
明治中期から昭和50年代に輸入または国内製造された歴史的工作機械が機械遺産の対象です。

歴史的価値のある工作機械を見ることができる「日本工業大学 工業技術博物館」の概要は下記にまとめています。

施設名日本工業大学 工業技術博物館
運営日本工業大学
工作機械展示点数約270台
所在地〒345-8501
埼玉県南埼玉郡宮代町学園台4-1 日本工業大学 工業技術博物館
アクセス方法・「東武動物公園駅」西口よりバスで約5分、徒歩で約14分
・「新白岡駅」東口よりバスで約12分
・東北自動車道「久喜IC」「蓮田スマートIC(下り側)」より車で約15分
・首都圏中央連絡自動車道(圏央道)「幸手IC」より車で約15分
開館日1987年
開館時間9:30~16:30
日曜・祝日、8月中旬~下旬、年末年始、大学入試日は休館
入場料無料
公式サイト日本工業大学 工業技術博物館 公式サイト




2.ヤマザキマザック工作機械博物館

画像
画像提供:Xフォロワー様


「ヤマザキマザック工作機械博物館」では工作機械の他、工作機械でつくられた工業製品として蒸気機関車やT型フォードも展示されています。
地表から約11メートルの深さにある地下博物館です。

2024年に日本機械学会より「米国輸出を果たしたNC旋盤 MTC-2500R」が機械遺産として認定されました。
国産NC機として初めて米国に輸出された1970年製のNC旋盤「Mazak Turning Center 2500R(機番200)」が機械遺産の対象です。

歴史的価値のある工作機械を見ることができる「ヤマザキマザック工作機械博物館」の概要は下記にまとめています。

施設名ヤマザキマザック工作機械博物館
運営ヤマザキマザック株式会社
工作機械展示点数展示数不明
所在地〒505-0037
岐阜県美濃加茂市前平町3-1-2
アクセス方法・長良川鉄道「前平公園駅」より徒歩で約10分
・バス美濃加茂市コミュニティバス「ヤマザキマザック工作機械博物館」 下車すぐ
・東海環状自動車道「美濃加茂IC」より車で約10分
開館日2019年
開館時間10:00~16:30
月曜日および年末年始は休館
(月曜日が祝日の場合、火曜日が休館日)
入場料大人500円
高校生・大学生300円
小学生・中学生200円
*団体割引あり
*障がい者割引あり
*学校からの団体申し込みの場合は無料
公式サイトヤマザキマザック工作機械博物館 公式サイト




3.三共工作機械資料館

sankyo-machine-tools-museum-01


「三共工作機械資料館」では工作機械(海外製中心)の他、切削工具や測定機器、機構模型なども見ることができます。

2023年に日本機械学会より「三共工作機械資料館所蔵の歴史的工作機械群」が機械遺産として認定されました。
17~20世紀に製造された137台のコレクション(保存・収集された機械)が機械遺産の対象です。

歴史的価値のある工作機械を見ることができる「三共工作機械資料館」の概要は下記にまとめています。

施設名三共工作機械資料館
運営会社株式会社三共製作所
工作機械展示点数88台
所在地〒439−0018
静岡県菊川市本所2290
アクセス方法・JR「菊川駅」よりタクシーで約8分
・JR「掛川駅」よりタクシーで約25分
・東名「菊川IC」より車で約6分
開館日2021年
開館時間10:00~16:00
土日祝日および年末年始は休館
入場料無料
*事前予約制で公式サイトよりメールでの予約が必要
公式サイト三共工作機械資料館 公式サイト

事前予約制で平日のみの開館であるため訪問時は注意が必要です。



4.博物館明治村 機械館

画像
Photo by (c)Tomo.Yun 


「博物館明治村 機械館」では展示物の1つとして工作機械を複数見ることができます。

2007年に日本機械学会より「足踏旋盤《明治8(1875)年伊藤嘉平治作》」が機械遺産として認定されました。
田中久重の工場で機械製作を学んだ伊藤嘉平治が、1875年頃に製造した鍛鉄製足踏旋盤が機械遺産の対象です。

また、2014年に同じく日本機械学会より「国産機械「門形平削り盤」-工部省赤羽工作分局製-」が機械遺産として認定されました。
1879年に工部省赤羽工作分局で製造された6フィート型の門形平削り盤が機械遺産の対象です。

歴史的価値のある工作機械を見ることができる「博物館明治村 機械館」の概要について下記にまとめています。

施設名博物館明治村 機械館
運営公益財団法人 明治村
工作機械展示点数展示数不明
所在地〒484-0000
愛知県犬山市字内山1番地
アクセス方法・バス「停明治村」下車すぐ
・中央自動車道「小牧東IC」から3km
開館日1965年
開館時間9:30~17:00(季節により変更あり)
休館日は公式サイトを確認
入場料明治村(全体)の入場料
大人:2500円
高校生:1500円
中学生:700円
小学生:700円
*団体割引あり
公式サイト博物館明治村 公式サイト




5.熊本大学 工学部 研究資料館

画像


「熊本大学 工学部 研究資料館」では展示物の1つとして工作機械を複数見ることができます。

2007年に日本機械学会より「熊本大学の旧機械実験工場と文化財工作機械群」が機械遺産として認定されました。
1908年に竣工した旧機械実験工場と動態保存されている11台の工作機械群が機械遺産の対象です。

歴史的価値のある工作機械を見ることができる「熊本大学 工学部 研究資料館」の概要について下記にまとめています。

施設名熊本大学 工学部 研究資料館
運営熊本大学
工作機械展示点数11台
所在地〒860-0862
熊本県熊本市中央区黒髪2丁目39-1
アクセス方法・産交バス「熊本大学前」下車すぐ
・都市バス第1環状線「子飼橋」から徒歩で約10分
開館日1977年
開館時間毎月1回、第三木曜日に一般公開
13:00~16:00
入場料無料
公式サイト熊本大学 工学部 研究資料館公式 サイト

開館日が毎月1回(第三木曜日)であるため訪問時は注意が必要です。



6.トヨタ産業技術記念館

画像


「トヨタ産業技術記念館」では展示物の1つとして工作機械や切削工具を複数見ることができます。

歴史的価値のある工作機械を見ることができる「トヨタ産業技術記念館」の概要について下記にまとめています。

施設名トヨタ産業技術記念館
運営トヨタ産業技術記念館 運営組合
工作機械展示点数展示数不明
所在地〒451-0051
名古屋市西区則武新町4-1-35
アクセス方法・名古屋本線「栄生駅」から徒歩で約3分
・なごや観光ルートバス「トヨタ産業技術記念館」下車すぐ
・「名古屋駅」からタクシーで約5分
・名古屋高速6号清須線「明道町IC」から車で約5分
・名古屋高速都心環状線「丸の内IC」から車で約10分
開館日1994年
開館時間9:30~17:00
月曜日(祝日の場合は翌日)・年末年始は休館
入場料一般:1000円(65歳以上は600円)
大学生:500円
中高生:300円
小学生:200円
*団体割引あり
*学校行事は大学生250円、中高生および小学生は無料
公式サイトトヨタ産業技術記念館 公式サイト




7.国立科学博物館

画像
池貝鉄工所製 1889年製造 第1号旋盤(国立科学博物館にて2024年撮影)


「国立科学博物館」では展示物の1つとして工作機械を見ることができます。

2012年に日本機械学会より「池貝工場製第1号旋盤(現存最古の動力旋盤)」が機械遺産として認定されました。
日本最初の工作機械メーカーである池貝工場(後の池貝鉄工所)の創業者 池貝庄太郎と弟 喜四郎が1889年に自社の工場設備機械として製作した英式9フィート旋盤が機械遺産の対象です。

オランダ・ロッテルダム NSBM社(蒸気船会社)製の1863年に製造された竪削盤は、幕府の注文で長崎製鉄所に納められました。
その後、集成館、深川造船所、若松車両会社で使用され、1998年までの130年以上の間現役で稼働しています。

歴史的価値のある工作機械を見ることができる「国立科学博物館」の概要について下記にまとめています。

施設名国立科学博物館
運営独立行政法人 国立科学博物館
展示している工作機械・池貝鉄工所製 1889年製造 第1号旋盤(現存する国産工作機械で最も古い物の1つ)
・オランダ・ロッテルダム NSBM社製 1863年製造 竪削盤
所在地〒110-8718
東京都台東区上野公園 7-20
アクセス方法・JR「上野駅」公園口から徒歩で約5分
・東京メトロ銀座線・日比谷線「上野駅」7番出口から徒歩で約10分
・京成線「京成上野駅」正面口から徒歩で約10分
開館日1877年
開館時間9:00~17:00
月曜日および年末年始は休館
入場料一般・大学生:630円(65歳以上は無料)
高校生以下:無料
*団体割引あり
*障碍者割引あり
公式サイト国立科学博物館 公式サイト
画像
オランダ・ロッテルダム NSBM社製 1863年製造 竪削盤(国立科学博物館にて2024年撮影)




8.三菱重工業 長崎造船所 史料館

画像


「三菱重工業 長崎造船所 史料館」では展示物の1つとして工作機械を見ることができます。

1997年に「竪削盤」が国の重要文化財に指定されました。

歴史的価値のある工作機械を見ることができる「三菱重工業 長崎造船所 史料館」の概要について下記にまとめています。

施設名三菱重工業 長崎造船所 史料館
運営三菱重工業株式会社
展示している工作機械オランダ・ロッテルダム NSBM社製 1856年製造 1857年輸入 竪削盤
(日本最古の工作機械)
所在地現在改修中
アクセス方法現在改修中
開館日1985年
開館時間現在改修中
入場料現在改修中
公式サイト三菱重工業株式会社 公式サイト




9.大和ミュージアム 屋外展示

画像
画像提供:Xフォロワー様

「大和ミュージアム 屋外展示」では展示物の1つとして工作機械を見ることができます。

歴史的価値のある工作機械を見ることができる「大和ミュージアム 屋外展示」の概要について下記にまとめています。

施設名大和ミュージアム 屋外展示
運営大和ミュージアム運営グループ
展示している工作機械ドイツ・ドルトムント ワグナー社製 1938年輸入 大型旋盤 15299機
(呉海軍工廠 砲煩部 砲身工場にて戦艦大和の主砲身を削る)
所在地〒737-0046
広島県呉市中通1丁目1-2
アクセス方法・JR呉線「呉駅」より徒歩で約5分
・「呉港」より徒歩で約1分
・「呉IC」より車で約5分
・「阿賀IC」より車で約10分
展示開始日2023年
開館時間年中無休
入場料屋外展示は無料
公式サイト大和ミュージアム 公式サイト

大型旋盤 15299機のストーリー

呉海軍工廠 砲煩部 砲身工場にて戦艦大和の主砲身を削った大型旋盤 15299機はストーリーが素晴らしく、きしろ商事の「金属&樹脂加工Navi」より抜粋して紹介します。

15299機は呉海軍工廠 砲煩部 砲身工場に設置され、戦艦大和の主砲身を削りました。
呉海軍工廠にはワグナー社の旋盤が2台存在していたようです。

GHQの指導により1台の旋盤は破壊されましたが、もう1台の15299機は奇跡的に終戦の難を逃れました。

1953年、15299機は神戸製鋼所 高砂工場に払い下げられます。
神戸製鋼所では大型タンカー用のクランクシャフトを削りました。

1991年、最新機の導入により、神戸製鋼所での役目を終えた15299機はしばらく眠りにつきます。

神戸製鋼所から船舶用品の切削加工を請け負う株式会社きしろの播磨工場長が倉庫に眠っていた15299機に注目します。
15299機はまだ現役で稼働すべき設備で、技術の継承にも役立つと判断しました。

1996年、きしろ播磨工場に15299機が搬送され、5年ぶりに再稼働します。
きしろでは大型船舶用のプロペラ軸などを削りました。

2013年、最新機の導入により、きしろ播磨工場でも15299機はその使命を果たし、遊休機械として工場内に保管されます。

歴史的価値の高い15299機をこのまま処分するのは忍びないと考え、きしろは「大和ミュージアム」への寄贈を申し入れます。

一方、大和ミュージアムは、新型コロナウイルスの影響を受けて来館者数が4分の1に激減し、さらに感染対策費がかさんでいました。
コロナの影響で、15299機をきしろ播磨工場から大和ミュージアムへ輸送して設置する財源の確保ができないという問題に直面します。

そこで、財源確保の解決策としてクラウドファンディングを2021年8月3日に開始します。
クラウドファンディングはわずか1日で1億円が集まり、最終的に寄付総額269,480,000円を達成しました
寄付者6,626 名の熱い想いにより、15299機輸送の財源問題を解決することができました

2023年3月5日、69年ぶりに呉の地に帰ってきた15299機の除幕式が開催され、一般公開されました。



機械遺産に認定された工作機械7選

本記事で紹介した、機械遺産に認定された7つの工作機械を認定年順にまとめました。

リンク先の「日本機械学会 機械遺産 公式サイト」で、機械遺産の詳細な情報を確認することができます。

認定年機械遺産の名称
2007年足踏旋盤《明治8(1875)年伊藤嘉平治作》
2007年熊本大学の旧機械実験工場と文化財工作機械群
2012年池貝工場製第1号旋盤(現存最古の動力旋盤)
2018年日本工業大学の所蔵する歴史的工作機械群
2014年国産機械「門形平削り盤」-工部省赤羽工作分局製-
2023年三共工作機械資料館所蔵の歴史的工作機械群
2024年米国輸出を果たしたNC旋盤 MTC-2500R

編集長コメント

「歴史的価値のある工作機械を見ることができる施設9選と機械遺産7選」いかがでしたか。

現存する最も古い機械式工作機械は三菱重工業 長崎造船所 史料館に保存された1857年輸入の竪削盤で、日本における工作機械導入の歴史が160年以上残っています。

歴史的に価値のある工作機械を今でも見ることができるため、展示されている施設を本記事にて紹介させていただきました。

もし近くに行く機会があれば、実物を見ることをオススメします。

関連記事

執筆者情報

hattori


本記事はタクミセンパイの服部が執筆・編集しました。

私は工具メーカーでの営業とマーケティングの経験を活かし、切削工具と切削加工業界に特化した専門サイト「タクミセンパイ」を2020年から運営しています。
私(服部)の実績や経歴については「運営について」に記載しています。

タクミセンパイとして収集した最新情報をもとに、ここでしか読めない独自視点の記事や調査データを提供しています。
中立的な立場として発信する情報は、読者から「信頼できる」と高い評価を得ています。

メールマガジンのご案内

mail-magazine-taku-kumi


タクミセンパイでは月に1回メールマガジンを配信しております。

お届けする内容としては下記になります。

・切削工具・切削加工業界の新着オリジナル記事
・切削工具・切削加工業界のオススメ記事
・イベント情報
・会員優先のキャンペーン・イベント情報

ご興味のある方は「メールマガジンのご案内」ページをご確認ください。

会員登録は無料でいつでも退会可能です。

Copyright ©  2020 タクミセンパイ. All Rights Reserved.