切削加工の歴史を見て学ぶことができる日本工業大学 工業技術博物館をご存じですか。
この記事を書いた私は工具メーカーでの営業・マーケティングの経験を活かし、切削工具と切削加工業界に特化した専門サイト「タクミセンパイ」を2020年から運営しています。
歴史的な工作機械が多数展示されている日本工業大学 工業技術博物館で見て学ぶことができる切削加工の歴史について記事を執筆しました。
本記事では日本工業大学 工業技術博物館に訪問し、現地で見て学ぶことができる切削加工の歴史に関する展示を紹介しています。
この記事を読むことで、工作機械を中心とした切削加工の歴史が学べる施設としての日本工業大学 工業技術博物館の魅力を知ることができます。
- 切削加工の歴史を見て学ぶことができる日本工業大学 工業技術博物館とは
- 日本工業大学 工業技術博物館館で切削加工の歴史を見て学ぶ
- 日本工業大学 工業技術博物館のエントランス
- 日本工業大学 工業技術博物館で見ることができる初期の工作機械
- 日本工業大学 工業技術博物館で見ることができる池貝鐵工所の歴史
- 日本工業大学 工業技術博物館で見ることができる工作機械自動化の変遷
- 歴史的に価値のある工作機械
- 横形フライス盤(製造:プラット&ホイットニー社)
- 車輪旋盤(製造:クレバン・ブラザーズ社)
- 門形平削り盤(製造:東京瓦斯電気工業)
- ライジアルボール盤 DR-360形(製造:唐津鐵工所)
- S型旋盤(製造:新潟鐵工所)
- ジグ中ぐり盤(製造:東京第一陸軍造兵廠)
- タレット旋盤 4T形(製造:国産精機)
- ジグ中ぐり盤(製造:シップ社・三井精機工業)
- VDF旋盤(製造:ベーリンガー社)
- 昭和の名機と言われた3大旋盤
- ひざ形立てフライス盤(製造:牧野竪フライス製作所)
- 組み合わせ工作機械(製造:大日金属工業)
- NC旋盤(製造:池貝鉄工)
- 倣いフライス盤(製造:山口機器研究所)
- パラレルリンク形マシニングセンタ(製造:オークマ)
- 日本工業大学 工業技術博物館の復元町工場
- 日本工業大学 工業技術博物館の切削工具展示
- 日本工業大学 工業技術博物館の工業製品展示
- 編集長コメント
- 関連記事
- 執筆者情報
- メールマガジンのご案内
切削加工の歴史を見て学ぶことができる日本工業大学 工業技術博物館とは

切削加工の歴史において重要な工作機械を中心とした展示物を見ることができるのが日本工業大学 工業技術博物館です。
工作機械だけでなく数多くの工業製品を見ることができます。
1987年(昭和62年)の学園創立80周年記念事業の1つとして、日本工業大学内に工業技術博物館が開設され、一般公開されています。
2018年に日本機械学会より「日本工業大学の所蔵する歴史的工作機械群」が機械遺産として認定されており、工作機械の貴重な展示施設です。
明治中期から昭和50年代に輸入または国内製造された歴史的工作機械232点が機械遺産の対象です。
また、「工業技術資料(日本工業大学収集)」として178点が2008年に国の登録有形文化財に指定されています。
多くの工作機械が動態保存されており、実際に動いているところを見ることができます。
日本工業大学 工業技術博物館の概要は下記です。
| 施設名 | 日本工業大学 工業技術博物館 |
| 運営会社 | 日本工業大学 |
| 工作機械展示点数 | 約270台(うち約7割が動態保存) |
| 所在地 | 〒345-8501 埼玉県南埼玉郡宮代町学園台4-1 日本工業大学 工業技術博物館 |
| アクセス方法 | ・「東武動物公園駅」西口よりバスで約5分、徒歩で約14分 ・「新白岡駅」東口よりバスで約12分 ・東北自動車道「久喜IC」「蓮田スマートIC(下り側)」より車で約15分 ・首都圏中央連絡自動車道(圏央道)「幸手IC」より車で約15分 |
| 開館 | 1987年 |
| 開館時間 | 9:30~16:30 日曜・祝日、8月中旬~下旬、年末年始、大学入試日は休館 |
| 入場方法 | 入場無料 |
| 公式サイト | 日本工業大学 工業技術博物館 公式サイト |
日本工業大学 工業技術博物館館で切削加工の歴史を見て学ぶ

切削加工の歴史において重要な工作機械を中心とした展示物を見て学ぶことができる日本工業大学 工業技術博物館の情報を紹介していきます。
マニアックな部分も含めて気になった展示を紹介していますので、参考にしていただければと思います。
日本工業大学 工業技術博物館のエントランス

日本工業大学 工業技術博物館のエントランスから紹介していきます。

エントランスには2018年8月7日に日本機械学会に認定された「機械遺産認定証」が展示されていました。
機械遺産の名称は「日本工業大学の所蔵する歴史的工作機械群」です。
明治中期から昭和50年代に輸入または国内製造された歴史的工作機械232点が機械遺産の対象です。
日本工業大学 工業技術博物館で見ることができる初期の工作機械
日本工業大学 工業技術博物館で見ることができる、日本における初期の工作機械に関する展示を紹介します。
ワグネルの木製足踏旋盤

ワグネルが島津製作所 創業者である島津源蔵氏に送った「木製足踏旋盤(製造:江戸末期)」が、島津製作所創業記念資料館に現存しています。
「ワグネルの木製足踏旋盤」は、ベッド・フレーム・足踏作動枠・駆動車などが硬木材で作られ、主軸関係・主軸軸受部・駆動軸糸や刃物取付代が金属で作られています。
日本工業大学の学生および職人によって1983年(昭和58年)に複製された「ワグネルの木製足踏旋盤」が、日本工業大学 工業技術博物館に展示されています。
伊藤嘉平治の鍛鉄製足踏旋盤

田中久重の工場で機械製作を学んだ伊藤嘉平治が1875年(明治8年)に製造した「鍛鉄製足踏旋盤」が、博物館明治村 機械館に展示されています。
2007年に日本機械学会より「足踏旋盤《明治8年(1875)伊藤嘉平治作》」として機械遺産に認定されました。
「足踏旋盤《明治8年(1875)伊藤嘉平治作》」については「歴史的価値のある工作機械を見ることができる施設9選と機械遺産・重要文化財」の記事でも紹介しています。

日本工業大学の学生および職人によって1983年(昭和58年)に複製された「伊藤嘉平治の鍛鉄製足踏旋盤」が、日本工業大学 工業技術博物館に展示されています。
日本工業大学 工業技術博物館で見ることができる池貝鐵工所の歴史
日本工業大学 工業技術博物館で見ることができる、日本最初の工作機械メーカーである池貝鐵工所の歴史(創業初期)に関する展示を紹介します。
池貝鐵工所は戦前の工作機械5大メーカーの1つです。
第一号池貝旋盤模型

池貝忠雄(池貝喜四郎のご子息)によって作られた、「第一号池貝旋盤模型」が展示されています。
池貝鉄工所の創業者である池貝庄太郎と弟 喜四郎が1889年(明治22年)に自社の工場設備機械として製作した「第一号池貝旋盤」は、「国立科学博物館」に展示されています。
2012年に日本機械学会より「池貝工場製第1号旋盤(現存最古の動力旋盤)」として機械遺産に認定されました。
「池貝工場製第1号旋盤(現存最古の動力旋盤)」については「歴史的価値のある工作機械を見ることができる施設9選と機械遺産・重要文化財」の記事でも紹介しています。
手回し動力装置付き旋盤(製造:池貝鐵工所)

1890年(明治23年)に池貝鐵工所で製造された「旋盤」と「手回し動力装置(複製品)」が展示されています。
「手回し動力装置」は現存するものがなかったため、「池貝鉄工(株)50年史」の中の挿し絵を元に、池貝鉄工と日本工業大学の学生および職員によって1984年(昭和59年)に復元されました。

実際に人が「手回し動力装置」を動かし、サイズ感が伝わる写真がこちらです。
工作機械を稼働させるためには、「手回し動力装置」を両側から2人で回す必要があります。
普通旋盤(製造:池貝鐵工所)

こちらは1936年(昭和11年)に池貝鐵工所で製造された「普通旋盤」です。
1930年頃にアメリカのプラット&ホイットニー社で製造された当時最新鋭のモータ直結全歯車式旋盤を模倣しています。
池貝鐵工所製の「普通旋盤」は、プラット&ホイットニー社と異なり、日本人の体格に合うように心高を少し低く設定し、切替えレバーの操作で簡単にインチとミリ両方のねじを切れる工夫などが追加されており、改善技術の高さがわかります。

模倣したプラット&ホイットニー社の普通旋盤(写真奥)と並んだ姿を見ることができます。
日本工業大学 工業技術博物館で見ることができる工作機械自動化の変遷
日本工業大学 工業技術博物館で見ることができる、工作機械自動化の変遷がわかる展示物を紹介します。
足踏み旋盤(製造:不明)

こちらは製造者・製造年不明の「足踏み旋盤」です。
東京都足立区で錠前の製作を続けていた若林重次郎氏が1975年頃まで使用していた旋盤で、伝聞によると日露戦争(1904-1905)前に入手したとのことです。
旋盤(製造:大隈鐵工所)

こちらは1924年頃(大正13年頃)に大隈鐵工所で製造された「旋盤:OB-7吋形」です。
大隈鐵工所は戦前の工作機械5大メーカーの1つです。
タレット旋盤(製造:大隈鐵工所)

こちらは1920年(大正9年)に大隈鐵工所で製造された「タレット旋盤:TC-2号形」です。
単軸自動旋盤(製造:ブラウン&シャープ社)

こちらは1927年(昭和2年)にアメリカのブラウン&シャープ社で製造された「単軸自動旋盤」です。
倣い旋盤(製造:昌運工作所)

こちらは1962年(昭和37年)に昌運工作所で製造された「倣い旋盤」です。
プログラム制御ベッド形立フライス盤 S-2形(製造:松浦機械製作所)

こちらは1962年(昭和37年)に松浦機械製作所で製造された「プログラム制御ベッド形立フライス盤 S-2形」です。
プラグイン方式のプログラム制御を採用し、手動の汎用工作機械が主流であった時代に重宝され、約10年間でシリーズ1,000台を販売しました。

制御盤におけるプラグボードの所定位置にプラグを挿入することで、起動・停止、主軸回転数、XYZ軸の送り速度、自動定寸停止位置などを設定できます。
数値制御膝形立てフライス盤 KSNCP 70形(製造:牧野フライス製作所)

こちらは1971年(昭和46年)に牧野フライス製作所で製造された「数値制御膝形立てフライス盤 KSNCP 70形」です。
NC装置とサーボ機構は富士通ファナック製で、電気油圧パルスモータを使ったオープンループ方式を採用した初期の量産NC工作機械です。

当時は機械本体の他に、大きな制御盤・NC装置・油圧装置等が個別に設置され、倍のスペースが必要でした。

紙テープで数値を制御しています。
数値制御旋盤 LX-20N形(製造:池貝鉄工)

こちらは1978年(昭和53年)に池貝鉄工で製造された「数値制御旋盤 LX-20N形」です。
操作盤に初めて12インチディスプレイが付き、「数値制御旋盤 LX-20N形」は「テレビ旋盤」という名称で発売されて話題となりました。
従来は紙テープを作成してテープから直接指令して工作機械を制御していましたが、キーボードでグラフィックディスプレイを見ながらメモリーに入力し、読み出して制御できるようになりました。
操作盤にディスプレイが付いたことにより、作業者が途中で指令データの一部を楽に変更できるようになり、NC機が小ロット生産にも利用されるようになりました。

12インチディスプレイとキーボードが付いた操作盤です。
マシニングセンタ(製造:シンシナティー社)

こちらは1968年頃(昭和43年頃)にアメリカのシンシナティー社で製造された「マシニングセンタ」です。
1968年頃にシンシナティー社で製造された「マシニングセンタ」にはATCが存在していません。
マシニングセンタ Eb形(設計:カーネイ&トレッカー社、製造:東芝機械)

こちらはアメリカのカーネイ&トレッカー社が設計し、1970年頃(昭和45年頃)に東芝機械で製造された「マシニングセンタ Eb形」です。
1958年にカーネイ&トレッカー社が、世界初のマシニングセンタ「ミルウォーキーマチック」を開発し、世界を驚かせました。
カーネイ&トレッカー社と東芝機械、三井物産の合弁会社が1969年に発足し、マシニングセンタの国内生産が1970年にスタートしました。
歴史的に価値のある工作機械
日本工業大学 工業技術博物館で見ることができる、歴史的に価値のある工作機械を厳選して紹介します。
横形フライス盤(製造:プラット&ホイットニー社)

こちらは1900年頃(明治33年頃)にアメリカのプラット&ホイットニー社で製造された横形フライス盤です。
展示物の中でもかなり古い工作機械です。
車輪旋盤(製造:クレバン・ブラザーズ社)

こちらは1905年(明治38年)にイギリスのクレバン・ブラザーズ社で製造された「車輪旋盤」です。
鉄道車両の車輪は走行による摩耗や損傷により外周の真円度が悪くなるため、定期的に削り直す必要があります。
最初は車輪を外して立て旋盤等で削っていましたが、のちに車軸に取り付けたまま左右の車輪を削れる「車輪旋盤」が開発されました。
日本工業大学 工業技術博物館に展示されている「車輪旋盤」は、戦前千葉にあった陸軍鉄動隊が導入したものです。
門形平削り盤(製造:東京瓦斯電気工業)

こちらは1921年(大正10年)に東京瓦斯電気工業で製造された「門形平削り盤」です。
東京瓦斯電気工業は戦前の工作機械5大メーカーの1つです。
ライジアルボール盤 DR-360形(製造:唐津鐵工所)

こちらは1929年(昭和4年)に唐津鐵工所で製造された「ラジアルボール盤 DR-360形」です。
合計142台製造された「ラジアルボール盤 DR-360形」は、ユーザーから高い評価を得てドル箱機の1つに数えられるに至りました。
唐津鐵工所は戦前の工作機械5大メーカーの1つです。
S型旋盤(製造:新潟鐵工所)

こちらは1938年(昭和13年)に新潟鐵工所で製造された「S型旋盤」です。
政府が工作機械の欧米脱却を目指して、当時の資源局が新潟鐵工所に旋盤の設計を命令しました。
強力高速旋盤として誕生した「S型旋盤」は、戦前シリーズ合計900台ほど製造されました。
「S型旋盤」含むS型工作機械については「戦前の日本における工作機械・切削工具と切削加工の歴史」の記事で詳しく紹介しています。

同年1938年(昭和13年)に新潟鐵工所で製造された通常の旋盤と並んだ姿を見ることができます。
新潟鐵工所は戦前の工作機械5大メーカーの1つです。
ジグ中ぐり盤(製造:東京第一陸軍造兵廠)

こちらは1940年(昭和15年)に東京第一陸軍造兵廠で製造された「ジグ中ぐり盤」です。
タレット旋盤 4T形(製造:国産精機)

こちらは1941年頃(昭和16年頃)に国産精機で製造された「タレット旋盤4T形」です。
ゴーハムによる設計で1937年に誕生した「タレット旋盤4T形」は、試験の結果、欧米に劣らぬ性能が認められました。
その後に国産精機のタレット旋盤は量産され、1959年までにシリーズ合計4,332台製造されました。
国産精機のタレット旋盤とゴーハムについては「戦前の日本における工作機械・切削工具と切削加工の歴史」の記事で詳しく紹介しています。

国産精機の「タレット旋盤4T形」は、モータが機械内に内蔵されています。
ジグ中ぐり盤(製造:シップ社・三井精機工業)

画像左が1928年頃(昭和3年頃)にスイスのシップ社で製造された「ジグ中ぐり盤」です。
そして、画像右がシップ社の「ジグ中ぐり盤」を参考に、1943年(昭和18年)に三井精機工業で製造された国内初の「ジグ中ぐり盤」です。
三井精機工業と模倣したシップ社の「ジグ中ぐり盤」が並んだ姿を見ることができます。
VDF旋盤(製造:ベーリンガー社)

こちらは昭和初期にドイツのベーリンガー社で製造された「VDF旋盤」です。
ドイツのメーカー4社が集まった組織VDFで製造された「VDF旋盤」は当時最高峰の旋盤と評価され、池貝鐵工所の旋盤もこちらを研究して生まれました。
VDF旋盤については「ドイツにおける工作機械と切削加工の歴史」の記事で紹介しています。
昭和の名機と言われた3大旋盤

昭和の名機と言われた3大旋盤として、左から「エリコン旋盤(三菱重工業 1961年製造)」、「普通旋盤(池貝鉄工 1964年製造)」、「普通旋盤 LS形(大隈鐵工所 1966年製造)」が展示されています。
普通旋盤(製造:池貝鉄工)

1964年(昭和39年)に池貝鉄工で製造された「普通旋盤」は、親ねじにボールねじを採用し、工業デザイナーが外観を設計するなど当時としてはチャレンジングな製品です。
普通旋盤 LS形(製造:大隈鐵工所)

1966年(昭和41年)に大隈鐵工所で製造された「普通旋盤 LS形」は、1958年から販売を開始し、約40年間で3万台近く販売しました。
ひざ形立てフライス盤(製造:牧野竪フライス製作所)

こちらは1957年(昭和32年)に牧野竪フライス製作所で製造された「ひざ形立てフライス盤」です。
牧野竪フライス製作所の「ひざ形立てフライス盤」は当時ベストセラーになりました。
組み合わせ工作機械(製造:大日金属工業)

こちらは1969年(昭和44年)に大日金属工業で製造された「組み合わせ工作機械」です。
「組み合わせ工作機械」は旋削・フライス加工・形削り加工・穴あけ加工が1台で可能で、船舶に積み込まれ、応急時の部品加工などに利用されました。
NC旋盤(製造:池貝鉄工)

こちらは1976年(昭和51年)に池貝鉄工で製造された「NC旋盤」です。
操作盤の数値表示にニキシー管が利用されています。
倣いフライス盤(製造:山口機器研究所)

こちらは1976年(昭和51年)に山口機器研究所で製造された「倣いフライス盤」です。
「倣いフライス盤」はプロペラ形状の加工に利用され、実ワークも展示されています。
パラレルリンク形マシニングセンタ(製造:オークマ)

こちらは2002年にオークマで製造された「パラレルリンク形マシニングセンタ」です。
「パラレルリンク形マシニングセンタ」は、6本のボールねじを伸縮させることで主軸の位置と姿勢を制御する6軸マシニングセンタです。
日本工業大学 工業技術博物館の復元町工場
日本工業大学 工業技術博物館には、4つの町工場が復元されています。
町工場を忠実に再現しており、当時の雰囲気を知ることができます。
山本工場の復元

歯磨きチューブなどを製造していた山本工場では、プレス型を内製していました。
日本工業大学 工業技術博物館内に、かば材張りの床含めて山本工場が復元されています。
山本工場の工作機械

山本工場の復元エリアには8台の工作機械が展示されており、当時高級機であった海外製工作機械が中心となっています。
動力伝達方式の変遷

山本工場の復元エリアでは、動力伝達方式の変遷がパネルで紹介されています。
工作機械の動力伝達方式は、単独運転方式(人力・畜力・水車・蒸気機関)、集合運転方式(シャフトとベルト)、単独運転方式(モータ)と工作機械の動力伝達方式が移り変わっていきました。
山本工場の工作機械は集合運転方式を採用しています。
集合運転方式はシャフトやベルトの段階で生じるエネルギー損失が大きく、天井のシャフトから油が落ちたり、ベルトが埃をまき散らすなど、製品の品質と作業環境においては課題がありました。
ベルトのつなぎ方サンプル

山本工場の復元エリアには、ベルトのつなぎ方サンプルが展示されています。
左から針金、ボタ、レーシングです。
ヒノデ紡機製作所の復元町工場

精紡機や精紡機のスピンドルを製造していたヒノデ紡機製作所の研削部門の一部が日本工業大学 工業技術博物館内に移設され、工場が再現されています

ヒノデ紡機製作所の工場復元エリアには4台の工作機械が展示されており、これらの機械は昭和初期に製造されたものです。
時計工場の復元町工場

機械式記録時計などを製造していた千代田精機工業の工場が、日本工業大学 工業技術博物館内に復元されています。

時計工場には、複数の小型工作機械が並んでいます。
植原鉄工所の復元町工場

1907年(明治40年)に創業した植原鉄工所の工場が、日本工業大学 工業技術博物館内に復元されています。

植原鉄工所では約60年間、各種機械部品を製造していました。
植原鉄工所の工場建屋を実測に基づき忠実に復元し、見学者の安全等を考えて実際の工場より天井を高くした上で、若干の機械が削減されて展示されています。

植原鉄工所の工場復元エリアには9台の工作機械が展示されています。
室内の暗さ、ベルト駆動による音と揺れなど、当時の町工場の雰囲気を感じることができます。
日本工業大学 工業技術博物館の切削工具展示
日本工業大学 工業技術博物館には、切削工具も展示されていました。

こちらは「ろう付けバイト」と「完成バイト」です。

こちらは「テーパーリーマ」です。

こちらは「アジャスタブルリーマ」と「ハンドリーマ」です。

こちらは「ハンドタップ」です。
日本工業大学 工業技術博物館の工業製品展示
日本工業大学 工業技術博物館には、工作機械以外にも数多くの工業製品が展示されており、その一部を紹介します。
発動機

日本工業大学 工業技術博物館には、工作機械動力の変遷がわかる展示として蒸気缶・蒸気機関・ガスエンジン・石油機関が展示されています。
紙テープ装置

日本工業大学 工業技術博物館には、NC工作機械用の紙テープ装置が展示されています。
歯車加工機械

日本工業大学 工業技術博物館には、歯車加工機械が複数展示されています。
放電加工機

日本工業大学 工業技術博物館には、形彫り放電加工機やワイヤ放電加工機が複数展示されています。

こちらは1954年(昭和29年)に、日本放電加工研究所が完成させた国産の実用放電加工機第1号です。
1号機であることを記念して金色に塗装し直されています。
レヒートガスタービン AGTJ-100形

1978年から10年間、通商産業省工業技術院のムーンライト計画(省エネルギー技術研究開発)の1つとして、高能率ガスタービンの開発が行われました。
そして、1987年(昭和62年)に製造されたのが「レヒートガスタービン AGTJ-100形」です。
「レヒートガスタービン AGTJ-100形」は当時の熱効率を10%以上改善できることを実証し、技術的なインパクトを世の中に与えたため、成果を実機で保存することになりました。
全長21mあり、日本工業大学 工業技術博物館の展示物の中でも特に存在感があります。
編集長コメント
「日本工業大学 工業技術博物館で切削加工の歴史を見て学ぶ」いかがでしたか。
イギリス・アメリカ・ドイツ・日本の工作機械と切削加工の歴史について調べていたこともあり、展示内容のこだわりを理解することができました。
工作機械を中心とした切削加工の歴史が学べる施設としての日本工業大学 工業技術博物館の魅力がこの記事で伝われば嬉しいです。
個人的にオススメしたいポイントが3つあります。
1つ目のオススメポイントは、戦前の工作機械5大メーカーである池貝鐵工所・新潟鐵工所・大隈鐵工所・唐津鐵工所・東京瓦斯電気工業の工作機械をすべて見られることです。
特に池貝鐵工所については展示台数が多く、手回し動力装置付き旋盤は必見です。
2つ目は、日本が海外製工作機械を模倣して成長していたった歴史を展示品として見られることです。
池貝鐵工所とプラット&ホイットニー社の「普通旋盤」、シップ社と三井精機工業の「ジグ中ぐり盤」など、模倣の中で日本が試行錯誤して技術を高めていったことがわかる展示は貴重だと考えます。
3つ目は、復元町工場です。
動態展示のために作った架空の工場ではなく、実際に存在した工場を可能な限り忠実に再現した展示によって、今は見ることができない様々な情報を得ることができます。
特に植原鉄工所の復元町工場は必見で、当時の工場内の暗さ、ベルト駆動による音や振動のリアルさは是非現地に行って五感で味わってほしいと思います。
最後に、記事のテーマを重視して触れていませんが、日本工業大学 工業技術博物館には動態保存された蒸気機関車などものづくりへの熱量とこだわりを感じる展示が複数存在し、終日楽しむことができる施設です。
東京駅から東武動物公園駅まで電車で約1時間、駅からスクールバスで約5分で日本工業大学 工業技術博物館に着くことができます。
JIMTOFの参加や東京出張に合わせて、日本工業大学 工業技術博物館に訪れてみてはいかがでしょうか。
さらに、本記事とあわせて読んでいただきたい記事を紹介します。
日本工業大学 工業技術博物館の展示物とも関連性の高い内容として、「アメリカにおける工作機械と切削加工の歴史」と「戦前の日本における工作機械・切削工具と切削加工の歴史」を読んでいただくと、工作機械の技術変遷を確認できると思います。


関連記事
- 歴史的価値のある工作機械を見ることができる施設9選と機械遺産・重要文化財
- イギリスにおける工作機械と切削加工の歴史
- アメリカにおける工作機械と切削加工の歴史
- ドイツにおける工作機械と切削加工の歴史
- 戦前の日本における工作機械・切削工具と切削加工の歴史
執筆者情報

本記事はタクミセンパイの服部が執筆・編集しました。
私は工具メーカーでの営業とマーケティングの経験を活かし、切削工具と切削加工業界に特化した専門サイト「タクミセンパイ」を2020年から運営しています。
私(服部)の実績や経歴については「運営について」に記載しています。
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