
生産技術エンジニアの仕事を詳しく知りたくありませんか。
この記事は生産技術アウトソーシングサービスを提供する辰星メタルパートナーに記事執筆を依頼し、切削工具と切削加工業界に特化した専門サイト「タクミセンパイ」が編集しました。
本記事では「生産技術エンジニアの役割」「生産技術エンジニアの難しさとやりがい」を紹介しています。
この記事を読むことで、生産技術エンジニアの役割を理解することができ、その存在の重要性を知ることができます。


生産技術エンジニアの役割

生産技術エンジニアは、工場の生産性を最大化し、品質とコストのバランスを取りながら、安全で持続可能な生産体制を構築する重要な役割を担っています。
また、新しいアイデアを実現し、ものづくりの未来を創る存在でもあります。
生産技術エンジニアは、常に改善を追求し、技術の進歩とともに成長し続けることが求められる職種です。
そして、活躍するためには、技術力だけでなく、課題解決力や関係者との調整力も重要です。
日本の主要産業である「ものづくり業界」をサポートする仕事、それが生産技術エンジニアです。
本記事では、生産技術エンジニアとして特に重要である下記4つの役割について解説します。
- 生産性向上
- 品質管理
- 環境負荷低減
- 安全管理
生産技術エンジニアの役割:生産性向上

生産性とは、「投入した資源に対して、どれだけの成果や利益を生み出せるか」を示す指標です。
生産性は様々な観点から考える必要があります。
例えば、サイクルタイムやリードタイム(加工時間、段取時間、搬送時間など)、不良率(10個作って5個が不良なら、実質5個分しか生産できない)、人件費、間接材料費など多岐にわたります。
工場内で生産性を阻害している最大の要因を「見える化」し、特定した上で優先順位をつけて対応することが必要です。
そのための道筋を立て、改善を推進するのが生産技術エンジニアの役割です。
実際の経験の一例を紹介します。
ある穴あけ加工工程では、複数の切削工具と工程を経て加工を行っていましたが、不良率が高く、全数計測が必要であり、人件費も増大していました。
そこで、まず不良発生の原因を分析しました。
- 不良が発生したワークを観察する
- どのような加工工程(設備、使用工具、条件、加工順序)なのかを把握する
- ワークの品質データを収集・分析する
調査の結果、リーマでの仕上げ穴加工時に位置ずれが発生していることが分かりました。
工程を確認すると、位置ずれのリスクが高い工法が採用されていました。
前工程の影響か、仕上げ加工時にずれているのかを判断するために、各工程の品質データを収集・分析しました。
その結果、前工程での位置ずれが主な要因であることが判明しました。
そこで、前工程の工法を見直し、切削工具や加工方法を変更したところ、前工程の加工精度が大幅に向上し、仕上げ工程の位置精度も改善しました。
その後の経過観察により、突発的な不良は発生しなくなり、全数計測の作業を削減することができました。
また、加工時間の短縮や工具費用の低減も達成し、大きな生産性向上につながりました。
このように、「不良率の改善」から、副次的に「人件費の削減」「リードタイム短縮」「工具費用削減」など、幅広いコスト削減や改善効果を得ることができます。
三現主義(現場・現物・現実)を重視し、根気よく原因追及と対策を実行することが重要です。
他部署との連携
生産性向上に関する仕事は、製造部などとの連携が必要になります。
「生産性向上」のテーマは、工作機械や切削工具など各メーカーが特に力を入れて研究・開発している領域であり、常に最新の技術・製品の情報を入手しておく必要があります。
生産技術エンジニアの役割:品質管理

「品質」は、求められるシーンによって3つに分類することができます。
- お客様が最終製品を使用する際に「必要な機能を満たすための品質」
- 部品を組み合わせる際に「組立作業を円滑に進めるための品質」
- 部品加工を行う上で「工程を成り立たせるための品質」
これらすべての品質を確保するために、適切な工程設計を検討することが生産技術エンジニアの役割です。
また、現状よりもさらに高い品質を追求し、技術レベルを向上させることも重要な使命と考えています。
要求品質を確認するためのツールとして製品図面があります。
図面には、要求精度が様々な公差を用いて表現されています。
しかし、必ずしもすべてが図面に明記されているわけではなく、長年の製造経験から現場のノウハウに基づき、意図的に追加工を行うことで現場の運用を円滑にしている場合もあります。
理想的にはすべての要件を図面に反映すべきですが、設計者の負担が大きく、細部まで表現しきれないケースも多々あります。
こうした現場の実情を把握し、適切な対応を行うことも生産技術エンジニアの役割です。
基本的には、図面に記載されている要求精度を満たすことが前提ですが、一般的な加工精度や過去の加工実績と比較して過剰品質になっている場合があります。
その際は、開発者と議論し、「なぜこの品質が必要なのか」「過去の実績と比較して過剰ではないか」「他に最適な方法はないか」などを検討し、円滑な生産と最適なコストバランスを実現する工程設計を行う必要があります。
品質が高すぎるとコストが増加するため、最適な品質レベルのバランスを取ることも、生産技術エンジニアの重要な役割です。
他部署との連携
品質管理に関する仕事は、製造部・開発部・品質管理部との連携が必要になります。
役割分担としては下記となります。
- 製造部:サンプルワークを製造してライン内計測を実施
- 開発部:図面公差と最終製品との関連性の検証、工程変更時の最終製品の性能試験の段取り
- 品質管理部:幾何公差など精密計測と品質データのまとめ、現状把握と全体の取りまとめ
- 生産技術部:現状工程設計の把握や改善案の提示
同じく品質にかかわる仕事として品質管理部があります。
品質が担保されている工程設計であるかを確認して、製品が規格値内で安定して製造されているかを日々確認することが品質管理部の仕事です。
生産技術エンジニアの役割:環境負荷低減

日本は豊かな自然に恵まれた国である一方、資源に乏しい国でもあります。
そのため、限りある資源を有効活用し、環境負荷を抑えた生産体制を構築することが求められています。
近年、環境に対する取り組みが企業としてさらに重要になっています。
生産技術エンジニアは、持続可能なものづくりの観点から、品質や生産性の向上だけでなく、環境に配慮した製品の選択、工程の設計を行う重要な役割を担っています。
まず、省エネルギーの観点から、設備の選定や加工プロセスの最適化を進め、エネルギー消費を最小限に抑えることが求められます。
特に、電力はほぼすべての生産設備で使用されるため、無駄なエネルギー消費を削減し、コストの最適化を図ることが重要です。
加工時間の短縮や、エネルギー効率の高い機器の導入も、省エネ対策の一環として有効な手段となります。
また、環境汚染の抑制も重要な課題です。
工程内で発生する汚染物質の排出を最小限に抑え、廃棄物の削減を意識した工程設計を行うことが求められます。
例えば、切削油剤や洗浄液の適正管理、リサイクル可能な材料の活用、廃棄物の発生を抑制する加工技術の導入などが挙げられます。
さらに、地域社会との共生も考慮しなければなりません。
どれほど生産性の高い製造ラインであっても、環境負荷が大きく、周辺環境に悪影響を及ぼすような工場では長期的な操業が難しくなります。
地域の環境基準を遵守し、周辺環境に配慮した生産活動を行うこと、持続可能な経営の基盤となります。
エネルギー消費の「見える化」を進め、無駄な消費を削減することで、コスト削減と環境負荷の低減を両立することも重要です。
他部署との連携
環境負荷低減に関する仕事は、製造部・総務部などとの連携が必要になります。
「環境負荷低減」のテーマは、工作機械や切削工具など各メーカーがここ数年で力を入れている領域で、業界の動向を確認しておく必要があります。
生産技術エンジニアの役割:安全管理

生産ラインにおける作業者の安全を確保することは、生産技術エンジニアの最も重要な責務の一つです。
安全性を考慮した作業環境の設計は、事故を未然に防ぎ、作業者が安心して業務に従事できるようにするための基盤となります。
まず、作業性の安全性を確保するためには、作業者が不安なく作業を行える環境を整える必要があります。
生産設備を導入する際には、関係部署と連携して安全性のチェックを行い、設備の稼働が作業者の安全に影響を与えないことを確認します。
特に、重量物を扱う作業においては、腰痛や挟まれ事故を防止するための対策が欠かせません。
また、安全機器の取り付けや、段取りミスを防止するための工程設計も重要です。
ぽかよけ(ミス防止)を意識した設計を行うことで、ヒューマンエラーを減少させ、安全性を向上させることができます。
騒音や臭気、視界の問題についても十分に対策を講じ、作業環境を改善することが求められます。
場内搬送の安全を確保するためには、適切な設備配置や作業指示を行い、作業者が安心して物品を移動させることができる環境を提供します。
また、整理整頓を徹底し、作業場の無駄な混雑を防ぐことで、事故を防止します。
さらに、ヒヤリハット報告を積極的に行い、問題を早期に発見し、即時に対応できる体制を整えることが生産技術エンジニアの重要な役割です。
これにより、事故を未然に防ぐとともに、作業環境の改善が迅速に進みます。
他部署との連携
安全管理に関する仕事は、総務部などとの連携が必要になります。
生産技術エンジニアの難しさとやりがい

生産技術エンジニアの難しさ
生産技術エンジニアの仕事にはいくつかの難しさがあります。
まず、製造工程全般、法令、財務など幅広い専門知識を有することが重要です。
また、社内外の様々な関係部署との連携が必要であり、コミュニケーション力や調整力が求められます。
さらに、スケジュール管理の負担や、多岐にわたるタスクの対応も避けられません。
生産ラインでは、品質・コスト・納期(QCT)のバランスを取ることが常に求められ、適切な判断力が求められます。
加えて、社内を説得するためには技術的な根拠とプレゼンテーション能力が必要であり、全体をリードする力が求められます。
生産技術エンジニアのやりがい
難しさがある一方で、生産技術エンジニアの仕事には大きなやりがいもあります。
ダイナミックな業務を担当することができ、予算を大きく使って自分のアイデアや計画を実現できる点は大きな魅力です。
また、自分のイメージを具現化し、実際のモノづくりが行われる過程を目の当たりにすることができるのは、この仕事ならではの喜びです。
さらに、良くも悪くも自分の能力が生産ラインに反映され、その結果が直接的に影響を与える点にやりがいを感じることができます。
成功すれば、後世に名を残すこともでき、良くも悪くも自分の成果が語り継がれます。
また、多くの人から頼られる存在となり、責任あるポジションを担うことができる点も魅力的です。
幅広い知識を有することで、専門性が高まり、工場の中で最も物知りな存在になることも可能です。
生産技術エンジニアとしてのキャリアは、出世や転職においても有利なポジションを築けるため、将来の成長にも大きな可能性を秘めています。
辰星メタルパートナーの紹介
今回記事を執筆いただいた辰星メタルパートナーを紹介します。
辰星メタルパートナーは切削加工専門の生産技術エンジニアが提供する「生産技術アウトソーシングサービス」を提供しています。
ミッション:豊かで愉しい「ものづくり業界」を創る
先人の方たちが築いてくれた誇り高い業界に感謝して、生産技術エンジニアとして未来にバトンを繋ぎます。
未来のエンジニアが愉しく働ける環境を創り、日本そして世界の製造業の発展に貢献します。
コンセプト
雇用から業務委託にすることで、「生産技術エンジニアの雇用コスト半分以下を実現」し、人財不足による改善停滞、競争力低下の課題を解消します。
メインサービス:生産工程の改善支援
大手製造業含む30社以上の改善実績経験がある専門エンジニアが、三現主義による現状分析をもとに、最適な改善アクションプランを提示し、伴走型の改善サービスを提供します。
改善実績:
〇油圧系部品生産性向上
⇒NCプログラム解析し、加工パス、条件見直し、工具改善により20%改善
〇燃料ポンプケース生産性向上
⇒NCプログラムの解析、加工条件見直しにより30%改善
〇スプール穴旋盤リーマ穴加工、突発不良改善
⇒加工工程最適化(加工工具見直し、工程変更)により、突発不良件数ゼロ
その他サービス:工程設計支援、新規設備導入支援、専門技術支援、専門技術教育
編集長コメント
「生産技術エンジニアの役割とやりがい」いかがでしたか。
生産技術エンジニアの具体的な仕事内容を知ることで、製造業において重要な存在であることを理解いただけたのではないでしょうか。
業務内容が多岐にわたる生産技術エンジニアには、仕事としての難しさがある一方で、やりがいがあることがわかります。
学生に対しては生産技術エンジニアを仕事選びの選択肢として考えるキッカケとして、生産技術で今悩んでいる方に対しては仕事に自信をもつキッカケとして読んでもらえれば嬉しいです。
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ライター・執筆者情報

本記事は生産技術アウトソーシングサービスを提供する辰星メタルパートナーの松田様に執筆いただき、タクミセンパイの服部が編集しました。
私は工具メーカーでの営業とマーケティングの経験を活かし、切削工具と切削加工業界に特化した専門サイト「タクミセンパイ」を2020年から運営しています。
私(服部)の実績や経歴については「運営について」に記載しています。
タクミセンパイとして収集した最新情報をもとに、ここでしか読めない独自視点の記事や調査データを提供しています。
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