
生産技術エンジニアの仕事として新製品・新ライン立ち上げについて詳しく知りたくありませんか。
この記事は生産技術アウトソーシングサービスを提供する辰星メタルパートナーに記事執筆を依頼し、切削工具と切削加工業界に特化した専門サイト「タクミセンパイ」が編集しました。
本記事では生産技術エンジニアの「新製品立ち上げ」「新ライン立ち上げ」について紹介しています。
この記事を読むことで、生産技術エンジニアの新製品・新ライン立ち上げの具体的な仕事内容、他部署との連携を知ることができます。


新製品・新ライン立ち上げにおける生産技術エンジニアの役割

生産技術エンジニアには様々な役割がありますが、特に重要な役割として「生産性向上」「品質管理」「環境負荷低減」「安全管理」があります。
詳しくは「生産技術エンジニアの役割とやりがい」の記事で解説しています。
「生産性向上」「品質管理」「環境負荷低減」「安全管理」の役割を総合的に実践する生産技術エンジニアの仕事として、「新製品の立ち上げ」と「新ライン立ち上げ」があります。
本記事では、「新製品立ち上げ」と「新ライン立ち上げ」における生産技術エンジニアの役割を、筆者のエピソードとあわせて解説します。
新製品立ち上げにおける生産技術エンジニアの役割

新製品立ち上げにおける生産技術の役割について解説します。
新製品が開発されると、DR(デザインレビュー)が必要になります。
一般的なDRのやり方には、以下4つのフェーズがあります。
- 商品企画DR
- 構想設計DR
- 詳細設計DR
- 試作評価DR
生産技術エンジニアは、なるべく早い段階から参加することが望ましいですが、一般的には「詳細設計DR」から参加することが多いと思います。
生産技術エンジニアとしては、まず構想設計図面の妥当性を確認します。
こちらを疎かにすると、以後の生産コストに直結するので慎重に検討します。
生産技術エンジニアは新製品立ち上げにおいて、開発者の要求に対して過剰品質ではないか、加工工程が実現可能か、最小限の段取りで生産可能かなど、様々な情報を確認する重要な役割を担っています。
これらの過程で工場関係者と協議し、開発部門へのフィードバックを行って情報を取りまとめます。
さらに、社内加工か社外加工かの選定や、製造現場への説明を行うことも求められます。
「試作評価DR」に進むと、工程手配(治工具、必要な間材、標準書類、加工プログラムなど)や、生産スケジュールの調整を担当し、円滑な生産の実現に向けた調整役を担います。
試作が完了すると、生産コスト実績や試作加工データのとりまとめを行い、関係部署へフィードバックします。
そして、試作品の性能評価、耐久性試験、安全性評価などを行い、設計が適切であるかを確認します。
このように、生産技術エンジニアは量産加工の開始まで関係部署と連携して、円滑な立ち上げができるように伴走する重要な役割を担います。
他部署との連携
新製品立ち上げは、開発部・製造部・品質管理部との連携が必要になります。
各部門との役割分担は下記となります。
- 開発部:製品図面を出図、サンプルワークの素材手配や性能試験、設計変更
- 製造部:サンプルワークの製造、治具など製造に必要な物品の段取り
- 品質管理部:サンプルワークの寸法計測と品質データのまとめ
- 生産技術部:工程設計案の提示や投資申請、全体計画が円滑になるように各部署のサポート
筆者の新製品立ち上げエピソード
筆者がメーカー勤務時代に新製品プロジェクトに参加した際は、最終製品の部品点数が多かったため、部品ごとに担当者が割り当てられ、30人ほどのチームでした。
プロジェクト期間も構想段階から含めると3年以上はかかっていました。
ベンチマークのために他社製品を分解して構造検証したり、今までにない構造のため試作時に治具の最適化や新工法を取り入れました。
また、製品に部品を組み込んだ際に発生した様々なトラブルの対応など、新製品プロジェクトならではの経験が貴重な財産となりました。
新ライン立ち上げにおける生産技術エンジニアの役割

新ライン立ち上げにおける生産技術の役割について解説します。
新ラインの立ち上げ検討には、コンセプト、生産能力、生産ワーク、設備仕様、自働化範囲、設備レイアウト、必要なインフラ、スケジュール、予算、検収条件などといった様々な要素が必要です。
生産技術エンジニアはこれらを総合的に検討し、工場関係者へ説明を行います。
ライン立ち上げは多額の投資が必要であるため慎重に計画を進める必要がありますが、納期が決まっていることから迅速な対応が求められます。
さらに、様々な業者(設備メーカー、治工具メーカー、インフラ工事業者、レイアウト工事業者、製缶業者)との打合せや納期調整、予算交渉も求められ、対応範囲は多岐にわたります。
生産工程の設計時には、新技術の導入検討も行います。
新技術導入により、今まで以上に効率的で高品質な生産体制の確立を目指します。
日々の業務の中でいかに新情報を取り入れることができるかが生産技術力に直結します。
例えば、JIMTOFなどの展示会、商社やメーカーからの新商品プレゼン、各メーカーのメルマガ、製造業関連の情報誌などから情報を入手します。
他部署との連携
新ライン立ち上げは、製造部・工務部・生産管理部・品質管理部・開発部との連携が必要になります。
各部門との役割分担は下記となります。
- 製造部:立上げ用のテストピースの準備、標準書類の作成、新設備の操作教育、ライン作業に必要な物品の準備、新設備の仕様確認(主に操作に関わること)や立会い
- 工務部:保守部品の段取り、インフラの構築、新設備の仕様確認(主に保守性や保守部品に関わること)や立会い、新設備の保守教育、作業の安全性の検証
- 生産管理部:生産スケジュールの調整
- 品質管理部:初回品の検査、工程能力評価、客先への工法変更申請、生産品の定期検査、検査基準書の準備
- 開発部:最終製品時の性能評価
- 生産技術部:全体仕様の検討と発注、全体計画の統括・調整
筆者の新ライン立ち上げエピソード
筆者がメーカー勤務時代、約15億円規模の新ライン立ち上げのプロジェクトリーダーを経験しました。
ラインレイアウト設計、導入設備や治工具の仕様検討、人員配置、自働化範囲、ワーク搬送方法の検討など、全ての仕様の検討に携わりました。
業務ボリュームが大きかったですが、貴重な業務経験を積ませてもらいました。
限られたラインスペースにいかに効率よく設備を配置するか、現行ラインより生産性が高い加工工程はどうするか、コストをかけない設備仕様をどう選ぶか。
その他にも、作業性や保守性、安全性を確保するにはどうするかなど考えることが山ほどあり、失敗できないプレッシャーの中で苦労しました。
ひとりでは到底立ち上げることはできないため、関係各部署や関係会社に業務依頼をして、日々の定期進捗報告会の開催などでスケジュールを把握し、共有しながら立ち上げました。
立ち上げは決してスムーズではなく、想定外の設備トラブルが頻発したり、加工不良が発生したり、危険作業の箇所が出てきたり、レイアウト図面と現物が違うといったことが起きました。
様々な課題を都度修正し、初回品検査や性能試験など所定の手続きを踏み、なんとか量産まで辿り着きました。
当時サポートしていただいた関係者の皆様には大変感謝しています。
この貴重な経験は今の業務に活きており、世の生産技術エンジニアの苦労がわかる経験になりました。
人生の中で大規模な業務に携われるチャンスはなかなかなく、生産技術エンジニアでしか味わえない経験として、チャンスを与えてくれた会社に感謝しています。
辰星メタルパートナーの紹介
今回記事を執筆いただいた辰星メタルパートナーを紹介します。
辰星メタルパートナーは切削加工専門の生産技術エンジニアが提供する「生産技術アウトソーシングサービス」を提供しています。
ミッション:豊かで愉しい「ものづくり業界」を創る
先人の方たちが築いてくれた誇り高い業界に感謝して、生産技術エンジニアとして未来にバトンを繋ぎます。
未来のエンジニアが愉しく働ける環境を創り、日本そして世界の製造業の発展に貢献します。
コンセプト
雇用から業務委託にすることで、「生産技術エンジニアの雇用コスト半分以下を実現」し、人財不足による改善停滞、競争力低下の課題を解消します。
メインサービス:生産工程の改善支援
大手製造業含む30社以上の改善実績経験がある専門エンジニアが、三現主義による現状分析をもとに、最適な改善アクションプランを提示し、伴走型の改善サービスを提供します。
改善実績:
〇油圧系部品生産性向上
⇒NCプログラム解析し、加工パス、条件見直し、工具改善により20%改善
〇燃料ポンプケース生産性向上
⇒NCプログラムの解析、加工条件見直しにより30%改善
〇スプール穴旋盤リーマ穴加工、突発不良改善
⇒加工工程最適化(加工工具見直し、工程変更)により、突発不良件数ゼロ
その他サービス:工程設計支援、新規設備導入支援、専門技術支援、専門技術教育
編集長コメント
「新製品・新ライン立上げにおける生産技術の役割」いかがでしたか。
実際に新製品立ち上げ・新ライン立上げを経験された方の情報を知ることができる機会は少ないと思いますので、こちらの記事を参考にしていただければと思います。
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ライター・執筆者情報

本記事は生産技術アウトソーシングサービスを提供する辰星メタルパートナーの松田様に執筆いただき、タクミセンパイの服部が編集しました。
私は工具メーカーでの営業とマーケティングの経験を活かし、切削工具と切削加工業界に特化した専門サイト「タクミセンパイ」を2020年から運営しています。
私(服部)の実績や経歴については「運営について」に記載しています。
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