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企業アカウントがSNSを活用するための運用体制づくりと注意点

企業アカウントを作成して運用してみたいが、会社に許可してもらえるか、続けられるか不安で困っていませんか

この記事を書いた私は工具メーカーでの営業・マーケティングの経験を活かし、切削工具と切削加工業界に特化した専門サイト「タクミセンパイ」を2020年から運営しています。
切削工具のタクミセンパイ」のアカウントで2020年からXを活用し、毎年フォロワー数を1000人獲得している経験から本記事を書きました。

本記事では企業アカウントがSNSを活用するための運用体制づくり、そして投稿内容の注意点について解説しています。
この記事を読むことで、SNSを活用するための「守り」のヒントを得ることができます

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企業アカウントがSNSを活用するための運用体制づくりと注意点

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本記事では企業アカウントがSNSを活用するための運用体制づくりと注意点についてまとめています。

わたしは製造業、その中でも切削加工という分野でSNSを活用しています。
その経験をもとに本記事を執筆していますが、製造業に限らず幅広い業界で役立つ情報だと考えます。

現在、私が属している切削加工業界ではSNSの活用が進んでいます。
切削加工業界で活用されている代表的なSNSとしてX(旧Twitter)、Facebook、Instagram、Youtubeなどがありますが、テキストのみの投稿が可能であるXが製造業と相性が良く、ここ数年で活用が急速に伸びています
記事執筆時(2025年2月)で、Xフォロワー数が1万人以上の企業アカウント(切削関係)が登場しています。

SNS活用が進んでいるため、「SNSを始めるべきか」「SNSに力をいれるべきか」と悩む企業も増えてきていると予想します。
企業のSNS活用で大事なことは、SNSをプロモーションとして「攻め」で活用しつつ、一方で炎上やクレームを避けて安全にSNSを運用する「守り」の意識が重要であることです。

SNSを運用するにあたり、企業の懸念事項は「炎上」や「クレーム」だと思います。

炎上やクレームが発生すると、企業イメージが悪化し、顧客離れ・不買運動・売上減少・取引先やステークホルダーに迷惑をかけるといった事態に発展する可能性があります。
炎上やクレームはニュースなどでも定期的に取り上げられるため、SNSの負のイメージとして印象的だと思います。

しかし、SNS担当に適した人材を配置し、体制を整えておけば、炎上やクレームのリスクはほとんど防ぐことができると考えます。
2020年から製造業のXを見ていますが、確認された炎上は数回、しかも明らかにSNS担当者の落ち度があったもので防ぐことが可能でした。

本記事では、企業アカウントにおけるSNS運用の「守り」について、運用体制づくりと投稿内容の注意点を中心に解説しています。

2020年12月からXの運用をスタートし、毎日投稿で「攻め」と「守り」のSNS運用を続けてきたタクミセンパイの経験をベースとして本記事を書いています。
また、書籍「自由すぎる公式SNS「中の人」が明かす 企業ファンのつくり方(日経BP/2020年発行)」と「小さな会社・お店が知っておきたい SNSの上手な運用ルールとクレーム対応(同文舘出版 / 2023年発行)」の情報も参考にさせていただきました。

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SNS担当に適した人材

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SNS運用の「守り」において「担当者」選びが最も重要です。

企業アカウントを運用するにあたって、SNS担当者が顧客を理解していることが必要不可欠です。
業務で直接顧客と接した経験があり、顧客の行動心理や感情に対する感度が高い方がSNSを運用することで、顧客を意識した投稿により炎上やクレームを回避できます。

さらに、SNSを運用する担当者は、日頃からSNSを見ている・利用していることが望ましいです。
SNSも発信のトレンドや、発信を控えるべきテーマが突如として発生することがあります。
そのため、定期的にSNSを確認しておく必要があり、それが苦にならない、むしろ楽しめる人材が理想的です。

控えるべきテーマを理解することで炎上やクレームを回避して「守り」、一方で「攻め」においてはトレンドに乗ることができます。
SNS担当者は非常に重要なポジションであり、必要となるスキルも多い仕事であるため、適切な人材を確保するだけでなく、時間を確保して取り組む必要があると考えます。


SNS担当者として顔出しすることは必須ではありませんが、展示会など対面式のイベントにおいて参加できる方が理想的です。
SNSを運用していると、嬉しいことにSNS担当(中の人)に会うために展示会でブースに足を運んでくださる方が増えます

SNS担当に会いに来てくれる方が現れたら、それはSNS活用成功の兆しです。
展示会にSNS担当者がいることで、フォローとの距離が近くなるため、訪問してくださった方が情報を発信することでさらにフォロワー数が増加します。

フォロワーから記念撮影の依頼や写真投稿を相談されるケースがあるかもしれませんが、「顔出しはしていません」と説明すれば顔を隠した写真撮影で乗り切れます。
ちなみに私も顔出しはしていませんが、下記投稿のように写真撮影に対応してきています。


会社のことは社長が最も詳しく、責任も取れる立場なので、「社長にSNSを運用してもらうのはどうか」と考える方がいるかもしれません。
社長は発信できるネタをたくさん持っており、責任を取ることはできますが、SNSが得意とは限りません

現場とSNSの最前線にいることが「攻め」「守り」の両面で重要であるため、より適した人材がいないか確認してみましょう。
社長はネタを提供してもらうサポート役が良いと考えます。


アカウント名と責任

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アカウント名は自由につけてよいですが、私の考えを参考情報として紹介させていただきます。

企業アカウントとして運営するのであれば、アカウント名に企業名を入れると思います。
そして、アカウント名に企業名だけでなく、「公式」と記載される企業も多いです。

「公式」「非公式」の表記に限らず、会社名が使われたアカウントであればフォロワーにとっては企業アカウントの認識です。
そのため、アカウント名に「非公式」と書いてあったとしても、炎上時やクレーム時の責任は「会社」にあると多くの方が考えます

「非公式」と書けば責任から逃れられるわけでもありませんし、フォロワーとしては「会社から認められていないのに勝手に運用しているのでは」という疑問が出てきます。
そのため、「守り」を徹底する上で「非公式」は書くべきではないと考えます。

また、アカウント名に企業名を使っていなくても、プロフィールやアイコン・背景画像、投稿内容などから企業を推測できる場合もあるため、企業アカウントとして運用するならしっかり会社名を記載しましょう。


SNSの運用体制

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SNS担当者とアカウント名が決まったら、次は運用体制を考えていきます。
SNS運用の「守り」において、担当者の次に「運用体制」が重要です。

SNSの運用は、企業代表として責任を持って運用する「守り」の姿勢だけでなく、フォロワーを増やすために親しみやすさを発揮するといった「攻め」のキャラクター性も必要となるため、バランスが大切です。

親しみやすさやキャラクター性を出すことでファンを増やすという「攻め」においては、運用(中の人)は1名が担当するのが良いでしょう。

ただ、継続が困難になったり、業務状況によっては運用が難しいタイミングも発生する可能性もあるため、サブ担当がいると安心です。
メイン担当が不在の時に対応できるように、普段からサブ担当も運用に参加したり、投稿を確認しておけると理想的です。

また、担当者以外にも、炎上発生時の相談先としてSNS運用の責任者を置いておくことが必要です。
責任者について、炎上が発生した際は早急な判断が求められるため、サブ責任者や契約先の弁護士など、相談先を整理できていることが理想的です。

すべての投稿を責任者が確認するいう体制のつくり方もありますが、負担が大きくなり、投稿のリアル感が失われてしまいます
運用初期においては全件チェックでスタートしてもいいかもしれませんが、将来的には担当者が自由に投稿できる体制にできることが望ましいです。

SNSリテラシー教育

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SNS担当者と責任者が決まったら、SNSリテラシー教育を受けましょう。

SNSリテラシー教育は時代や経験によって持っている知識が異なるため、担当者・責任者の認識を合わせるためにも、教育コンテンツとして提供されたものを一度確認しておくことが理想的です。

WEBで検索すると有料・無料のコンテンツが出てくるので、自社に最適なものを選び、担当者・責任者は確認しておきましょう。
本記事を執筆する上で参考とした「小さな会社・お店が知っておきたい SNSの上手な運用ルールとクレーム対応(同文舘出版 / 2023年発行)」もオススメです。


本記事でSNSリテラシー教育に必要な全ての情報を提供しているわけではありません。

ただ、この記事で1つだけ伝えておきたいことは、炎上するリスクは「守り」の運用によって限りなく小さくすることができますが、もし発生してしまった際は投稿を消さずにすぐに責任者に報告し、判断を仰ぎましょう

投稿(炎上の火種)を消して隠蔽することで、さらに事態が悪化するケースが多いというのが事実です。
誰でも閲覧できるSNSの特性上、スクリーンショットで炎上した投稿を画像として保存されている可能性もあり、隠蔽したことを指摘されてしまうからです。

炎上が発生してしまった場合の対応方法・報告ルートを決め、事前に謝罪文のテンプレートを用意しておくと安心です。

基本的な対応は、炎上の原因を誠実に受け止める(投稿を消さない)→速やかに謝罪する、場合によっては追加情報による補足をするといった流れです。


「守り」の運用を続けていても、意図しない形で巻き込まれ、炎上してしまう可能性もゼロではありません。
「攻め」でフォロワーとの関係が構築できていると、もしある発言の切り抜きや誤解で炎上してしまった際は、日頃の投稿を見ている方が「○○の人はそんなつもりではなかったと思いますよ」とフォローしてくれる可能性があります。
つまり、「攻め」が最大の「守り」といえるケースもあるということです。

企業アカウントがSNSを活用する上での注意点

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企業アカウントがSNSを活用する上での注意点を「投稿の基本」「交流の基本」「フォロワー獲得の基本」でまとめています。

これらに気を付けることで「守り」のSNSが可能です。
方針を固めるだけでなく、関係者が共通認識を持ってSNSを運用できることが望ましいです。

また、参考情報として「業界特有の注意点」も製造業を例に紹介しています。

投稿の基本

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SNS活用における「投稿」の基本を紹介します。
「攻め」のためには投稿が不可欠ですが、「守り」を両立するためには気を付けるべきポイントがあります。

紹介する内容を参考にして「投稿」に関する注意事項をまとめておきましょう。

避けるべきテーマ

SNS投稿において、5S(政治、宗教、差別、スポーツ、セクシャル)の話題はトラブルにつながる可能性があるため、避けることが望ましいです。
その他にも、人種や民族、センシティブな社会問題、うわさ話やデマの扱いにも注意です。

また、企業アカウントとして他社や他アカウントへの批判は避けるべきです。
正義感を持っての行動やバズを狙った指摘は、個人アカウントとしては注目を集める1つの手段ですが、企業アカウントとしてはすべきではありません

そして、災害発生時の発信においても、投稿を控えることが無難です。
予約投稿を活用している方は、いつでも停止できるような準備をしておく必要があります。


SNS担当者の個人的な投稿

炎上やクレームにつながる可能性は低いですが、SNS担当者の個人的な投稿(私生活、趣味など)は、バランスが大事です。
担当者の承認欲求を満たすための投稿(自慢など)は、見る人によってはマイナスに感じられるため避けるように心がけましょう。


交流の基本

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SNS活用における「交流」の基本を紹介します。
フォロワー数を増やすためには交流が不可欠ですが、気を付けるべきポイントがあります。

紹介する内容を参考にして「交流」に関する注意事項をまとめておきましょう。

常連アカウントとの交流

SNSの運用を続けていくと、嬉しいことに定期的に「いいね!」や「コメント」をくれるアカウント、「常連アカウント」が出現します。
アカウント開設初期はフォロワー数が少ないため、反応してくれる「常連アカウント」との交流を大切にし、存在感を出していく必要があります。

ただし、フォロワー数が増えてくると、「常連アカウント」との会話はほどほどにする必要があります。
それは、新規アカウントが入りにくい雰囲気を出してしまうため、フォロワー数増加に悪影響を及ぼす可能性があるからです。

ただし、成長を支えてくれた「常連アカウント」への感謝は忘れないようにしましょう。


コメントに対する反応

投稿に対して「コメント」がつくことがあり、嬉しくて反応したい気持ちが生まれると思います。
ただ、「コメント」への反応も注意が必要です。

SNSには様々なアカウントが存在するため、全てのアカウントに対して同一の反応をすることはリスクにつながる可能性があります。
それは、反応先の「アカウント」の日常的な言動が自社にとってマイナスイメージにつながってしまい、トラブルに巻き込まれる可能性があるからです。

そのため、コメントに反応する場合は、プロフィールと直近の投稿(10投稿程度)を見て、対応を判断することをオススメします。


競合との交流

競合に対して交流していくか、こちらも方針を固めておくといいでしょう。

私の経験上、SNSの場では競合同士も仲良く交流している関係性が、見ているフォロワーの立場としては気持ちいいいです。
運用に慣れてからでもいいので、競合との交流にもチャレンジしてみましょう。


DMの解放

DM(ダイレクトメール)の解放について、解放しておくことをオススメします。

もちろん迷惑DMや営業DMが来ることがありますが、DMを開放しておくことで新たなつながりやコラボレーションが生まれる可能性があります。


フォロワー獲得の基本

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フォロワーを獲得する上での注意点を紹介します。

フォロワー数を増やすという目的達成のため、誤った方法を選択することでマイナスなイメージを作ってしまう可能性があります。
「相互フォロー」と「フォロワーを購入する」を紹介します。

相互フォロー

まず前提として、フォロワー数を増やすために、むやみにたくさんのアカウントをフォローすることはオススメできません。

SNSにはフォローするとフォローしてもらえるといった、相互フォローの文化があります。
もちろん必須ではありませんが、礼儀として対応する方が多いと思います。

この文化を悪用する形で、フォローをしてもらったら、フォローを外すという行為をする方が一定数います。
また、フォローしたのでフォロー返しをしてほしいとコメントで要求する方も一定数います。

これらの行為はフォロワーにとって見ていて気持ちのいいことではないのでやめましょう

フォロワーを購入する

SNSを利用している方向けのサービスとして、フォロワーを格安で販売している会社があります。

見かけ上フォロワー数を多く見せることができますが、不自然なフォロワー数の増加や、フォロワー数と「いいね!」のバランスで、簡単に気付かれてしまいます。

フォロワーを購入したという行為に対する非難につながる可能性もあるためやめましょう

業界特有の注意点

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どの業界でも通じる「投稿」と「交流」の基本を紹介してきました。

ただ、業界によって注意すべき内容が異なることもあるため、それらは同業アカウントの投稿などを参考にしてみましょう。

私は製造業に属しているため、この業界特有の注意点を参考に紹介させていただきます。

取引先の情報

特に注意すべきものとして取引先に関する情報(図面、見積もり、ワークなど)が写真に写ってしまうことです。
工作機械に張り付けた指示書やマグネットなどに会社名や製品名が記載されていることもあるため、細心の注意が必要です。

取引先の許可を取っていない写真の使用で指摘されたという話は、製造業ではよく耳にします。


保有設備

工作機械などの設備は、映えるということで投稿する企業が多いです。
私も設備の写真を投稿することに賛成の立場です。

注意点したいのは、どんな設備を保有しているかが会社の差別化になっているケースです。
保有設備を発信する/発信しないは会社の方針であるため、自分で判断しないように注意しましょう。


危険な行為・不適切な使用方法

危険な行為や不適切な使用方法に関する投稿は、会社としての倫理や教育を疑われてしまいます

投稿内容にインパクトがあることでバズを狙える可能性があったとしても、これらの行為は炎上やクレームにつながるため、避けるべきです。


メディア掲載情報の扱い

新聞や専門誌など、メディアに取り上げられた場合、それらの情報は必ず発信すべきだと思います。

ただ注意点として、紙面をそのまま撮影して投稿することが多くのケースで出版側で規制されています。

最近は紙面の掲載などが許可されているケースも増えてきましたが、媒体ごとにルールが異なるため、確認して「掲載許可済み」などと補足して投稿しましょう。


SNS運用にあたっての方針整備

SNS運用の方針が決まった場合、それを文書化し、共有していつでも閲覧できるようにしておけると理想的です。

下記などは事前に方針を明確にして、文書として関係者に共有できると望ましいです。

  • 禁止事項
  • 著作権•肖像権についての注意事項
  • 個人情報についての注意事項
  • 勤務中の利用について
  • 業務目的利用について
  • 問題発生時の対応について


特に、炎上時の対応については関係者で認識をあわせ、すぐに対応できるように整備しておきましょう。

編集長コメント

「企業アカウントがSNSを活用するための運用体制づくり」いかがでしたか。

2020年からXを活用し、毎年フォロワー数を1000人獲得している経験をもとに書いているため、参考になる情報もあるのではと考えています。

「攻め」のSNS運用として「企業アカウントにおける攻めのSNS運用」を公開していますので、あわせて活用いただければと思います。

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執筆者情報

hattori


本記事はタクミセンパイの服部が執筆・編集しました。

私は工具メーカーでの営業とマーケティングの経験を活かし、切削工具と切削加工業界に特化した専門サイト「タクミセンパイ」を2020年から運営しています。
私(服部)の実績や経歴については「運営について」に記載しています。

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