
切削加工業界(工作機械・切削工具)の今がわかる統計データをまとめて確認したくありませんか。
この記事を書いた私は工具メーカーでの営業・マーケティングの経験を活かし、切削工具と切削加工業界に特化した専門サイト「タクミセンパイ」を2020年から運営しています。
2025年時点で公開されている統計データをわかりやすく表現、一部組み合わせて本記事を執筆しました。
本記事では工作機械の受注金額推移と受注用途(内需・外需)、切削工具の生産高推移をまとめています。
この記事を読むことで、切削加工業界の中でも工作機械と切削工具の市場動向を過去データとの比較で把握することができます。


切削加工業界の今を統計データで徹底分析
2025年現在の工作機械業界および切削工具業界を把握するために、下記の情報についてまとめました。
- 工作機械業界と切削工具業界の動向
- 工作機械業界の動向
- 切削工具業界の動向
データとしては「受注統計(日本工作機械工業会)」および「機械統計(経済産業省)」を利用しています。
工作機械業界と切削工具業界の動向(2006-2024)
切削加工に欠かせないものと言えば、マシニングセンタなどに代表される工作機械と、ドリルやエンドミルなどの切削工具です。
この2つの業界を見ることで、切削加工業界の動向を把握することができます。
工作機械の受注総額(単位:億円)と切削工具の生産高(単位:億円)の推移をグラフにしたものが下図です。

グラフから、工作機械受注総額と切削工具生産高はかなり近い動きをしており、工作機械は増減が激しいことがわかります。
新型コロナウイルス発生により緊急事態宣言が初めて発出された2020年4月以降に市場が大きく落ち込んだというより、2019年から既に落ち込み始めていたことがわかります。
2021年以降は、新型コロナウイルス発生前と同等の規模まで市場が回復しています。
工作機械業界の動向

工作機械業界の動向に関するデータをまとめました。
工作機械の受注金額推移(2004-2024)
2004年~2024年における工作機械の受注総額推移が下図となります。

グラフから、リーマンショック以前と同等まで戻っていた工作機械の受注総額が、2019年から低下し、新型コロナウイルスを原因とする緊急事態宣言にて大きなダメージを負ったことがわかります。
2021年以降は、新型コロナウイルス発生前と同等の規模まで工作機械の受注総額が回復しています。
工作機械の受注額(内需と外需)
工作機械の受注額を内需と外需でまとめたものが下図です。

工作機械の受注額について、外需は内需に対して約2倍で推移しています。
工作機械の受注用途(内需)
工作機械の受注用途(内需)をまとめたものが下図です。

2016年~2024年の工作機械の受注額(内需)について、受注用途の1位は一般機械、2位は自動車、3位は自動車部品で、順位の変化はありません。
金額の変化はあるものの、工作機械の各用途の割合はほとんど変化がないことがわかります。
一般機械が全体の約4割、自動車が約3割、自動車部品が工作機械受注用途の約2割を占めています。
工作機械の輸出先(外需)
工作機械の輸出先(外需)をまとめたものが下図です。

2016年~2024年の工作機械の受注額(外需)について、国別の輸出先上位は中国、アメリカ、ドイツの3国で変わっていません。
ただし、工作機械の輸出先トップがアメリカから中国に変わっています。
2024年の工作機械の受注額(外需)は、中国が全体の33%、アメリカが26%、ドイツが4%を占めています。
NC工作機械 種別の生産額推移(2016-2024)
マシニングセンタとNC旋盤について生産額推移が下図となります。

マシニングセンタの受注総額はNC旋盤の約1.5倍あります。
2016年~2024年の受注総額について、マシニングセンタもNC旋盤もほとんど同じ動きをしていることがわかります。
切削工具業界の動向

切削工具業界の動向に関するデータをまとめました。
切削工具の生産高推移(2006-2024)
2006年~2024年における切削工具の生産高推移が下図となります。

グラフから、リーマンショック以前と同等まで戻っていた切削工具の生産高が、2019年から低下し、新型コロナウイルスを原因とする緊急事態宣言にて大きなダメージを負ったことが予想できます。
2021年以降は、新型コロナウイルス発生前と同等の規模まで切削工具の生産高が回復しています。
工具材料別の生産高推移(2006-2024)
超硬工具、特殊鋼工具、ダイヤモンド工具の生産高推移が下図となります。

超硬工具の生産高は切削工具全体の約7割を占めており、特殊鋼工具の約3倍、ダイヤモンド工具の約8倍あります。
2006年~2024年の切削工具の生産高について、超硬工具、特殊鋼工具、ダイヤモンド工具で似たような動きをしています。
2006年と2024年の切削工具生産高の比較結果が下記です。
超硬工具 | 特殊鋼工具 | ダイヤモンド工具 |
+8.4% | −29.3% | +14.6% |
2006年と2024年の切削工具生産高を比較すると、超硬工具が8.4%の成長、特殊鋼工具が29.3%の縮小、ダイヤモンド工具が14.6%の成長をしています。
超硬工具の生産高推移(2006-2024)
超硬工具の生産高推移についてまとめました。
エンドミル、ドリル、その他超硬工具、カッタ、バイトの生産高推移が下図です。

2006年~2024年の超硬工具の生産高について、エンドミル、ドリル、その他超硬工具、カッタ、バイトで似たような動きをしています。
2006年と2024年の超硬工具生産高の比較結果が下記です。
エンドミル | ドリルその他 超硬工具 | その他 超硬工具 | カッタ | バイト |
+46.9% | +14.2% | −23.2% | -7.6% | −40.6% |
2006年と2024年の超硬工具生産高を比較すると、エンドミルが46.9%の成長、ドリルが14.2%の成長、その他超硬工具が23.2%の縮小、カッタが7.6%の縮小、バイトが40.6%の縮小をしています。
超硬チップと超硬サーメットチップの生産高推移が下図です。

2006年~2024年の超硬工具の生産高について、超硬チップ、超硬サーメットチップで似たような動きをしています。
2006年と2024年の超硬工具生産高の比較結果が下記です。
超硬チップ | 超硬サーメットチップ |
+14.7% | −9.3% |
2006年と2024年の超硬工具生産高を比較すると、超硬チップが14.7%の成長、超硬サーメットチップが9.3%の縮小をしています。
特殊鋼工具の生産高推移(2006-2024)
特殊鋼工具の生産高推移についてまとめました。
タップ・ダイス、ドリル、ミーリングカッタ、リーマ・バイトの生産高推移が下図です。
*統計データにはギヤーカッタとブローチの項目がありますが、本記事では使用していません

2006年~2024年の特殊鋼工具の生産高について、タップ・ダイス、ドリル、ミーリングカッタ、リーマ・バイトで似たような動きをしています。
2006年と2024年の特殊鋼工具生産高の比較結果が下記です。
タップ ダイス | ドリル | ミーリング カッタ | リーマ バイト |
-1.9% | −39.3% | −62.7% | −64.1% |
2006年と2024年の特殊鋼工具生産高を比較すると、タップ・ダイスがー1.9%の縮小、ドリルが39.3%の縮小、ミーリングカッタが62.7%の縮小、リーマ・バイトが64.1%の縮小をしています。
ダイヤモンド工具の生産高推移(2006-2024)
ダイヤモンド工具の生産高推移についてまとめました。
C(W)BN工具とダイヤモンド切削工具の生産高推移が下図です。

2006年~2024年のダイヤモンド工具の生産高について、C(W)BN工具とダイヤモンド切削工具で似たような動きをしています。
2006年と2024年のダイヤモンド工具生産高の比較結果が下記です。
C(W)BN工具 | ダイヤモンド切削工具 |
+20.1% | +0.3% |
2006年と2024年のダイヤモンド工具生産高を比較すると、C(W)BN工具が20.1%の成長、ダイヤモンド切削工具が0.3%の成長をしています。
切削加工業界の今を統計データで徹底分析まとめ
- 工作機械の受注総額と切削工具の生産高はかなり近い動きをしており、工作機械は増減が激しい
- 工作機械の受注総額は、新型コロナウイルスを原因とする最初の緊急事態宣言が発出される前から市場は落ち込んでおり、2021年以降はコロナ前と同等の規模まで回復
- 工作機械は外需は内需に対して約2倍の受注額で推移
- 工作機械の受注用途は、1位が一般機械、2位が自動車、3位が自動車部品で、順位の変化はない。一般機械が全体の約4割、自動車が約3割、自動車部品が約2割を占めている
- 工作機械の国別の輸出先上位は、中国、アメリカ、ドイツの3国で変わっていない。ただし、工作機械の輸出先トップがアメリカから中国に変わっている。2024年は中国が全体の33%、アメリカが26%、ドイツが4%を占めている
- 切削工具の生産高は新型コロナウイルスを原因とする緊急事態宣言が初めて発出される前から落ち込んでおり、2021年以降はコロナ前と同等の規模まで回復
- 超硬工具の生産高は切削工具全体の約7割を占めており、特殊鋼工具の約3倍、ダイヤモンド工具の約8倍ある
- 2006年と2024年の切削工具生産高の比較は、超硬工具が8.4%の成長、特殊鋼工具が29.3%の縮小、ダイヤモンド工具が14.6%の成長をしている
- 2006年と2024年の切削工具生産高で大きく増加したのは、超硬エンドミル、超硬チップ、C(W)BN工具
- 2006年と2024年の切削工具生産高で大きく減少したのは、その他超硬工具、超硬バイト、特殊鋼製のドリル、ミーリングカッタ、リーマ・バイト
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執筆者情報

本記事はタクミセンパイの服部が執筆・編集しました。
私は工具メーカーでの営業とマーケティングの経験を活かし、切削工具と切削加工業界に特化した専門サイト「タクミセンパイ」を2020年から運営しています。
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