切削工具と切削加工業界の情報を発信するポータルサイト「タクミセンパイ」をご覧いただきありがとうございます。
当サイトを運営する編集長の服部です。
本記事では「切削加工の現場における足の疲れ、足の疲れと密接に関わる安全靴とプロテクティブスニーカー」について調べた内容をまとめています。
また「JSAA規格 普通作業用(A種)のプロテクティブスニーカーを商品展開するミズノ株式会社に最新技術」についてお聞きしました。
*本記事の一部は「ミズノ株式会社」より情報を提供いただいています。
【記事の信頼性】
本記事を書いた私(服部)は2014年から切削加工業界に携わり、2020年から「タクミセンパイ」を運営しています。
工具メーカーで営業として500社以上の切削工具ユーザー(工作機械で切削加工されている方)に訪問し、技術支援をさせていただきました。
また、マーケティングとして展示会とイベントの企画・運営、カタログとWEBサイトの大型リニューアルプロジェクト、ブランディングプロジェクトを経験しました。
営業とマーケティングの経験をもとに、切削加工業界で働く皆さまに向けて本記事を執筆しています。
切削加工されている人が疲れている部位とは
切削加工されている現場の皆さんに「仕事で最も疲れる部位」についてX(旧Twitter)のアンケートで調査したところ、下記の結果となりました。
45人が回答したアンケート結果は「足」>「目」>「手」でした。
足の疲れに悩んでいる方が多かったため、足の疲れと密接に関わる安全靴に注目しました。
安全靴と聞くと先芯が入っている作業靴をイメージする方が多いと思いますが、JIS規格の「安全靴」とJSAA規格の「プロテクティブスニーカー」が存在しています。
会社が決めた作業靴が支給される場合が多いので、履いているのが安全靴かプロテクティブスニーカーか知らない方もいるかもしれません。
安全性能が同じであれば、軽量性やデザイン性など選択肢の多いプロテクティブスニーカーを切削加工の現場の皆さんに履いて欲しいと思い、詳しく調べてみました。
安全靴とプロテクティブスニーカーについて
安全靴はJIS(日本産業規格)、プロテクティブスニーカーはJSAA(プロテクティブスニーカー規格)によって規格が指定されています。
プロテクティブスニーカーとはJSAA規格が定める一定の安全性や耐久性を備えるスニーカータイプの作業靴です。
普通作業用(A種)と軽作業用(B種)の規格が存在します。
プロテクティブスニーカーの普通作業用(A種)は、つま先部の耐衝撃性、耐圧迫性が安全靴の普通作業用(S種)と同等の性能になっています。
安全靴がプロテクティブスニーカーと最も異なる点は、アッパー材が革製で指定されていることです。
安全靴には重量物に対する耐衝撃性や耐圧迫性に優れた超重量作業用(U種)や重作業用(H種)などの規格も存在しています。
一方プロテクティブスニーカーは、メッシュを使用できるため通気性が良く、人工皮革や編み物(メッシュ)を掛け合わせたデザインを採用できることが特徴です。
革製品と比較して、プロテクティブスニーカーは基本的に軽く設計されていることが多く、その他にもクッション性、安定性、着脱の利便性に優れたモデルなどが存在しています。
プロテクティブスニーカーの普通作業用(A種)は硬質先芯の耐衝撃性・耐圧迫性において、安全靴の普通作業用(S種)と同等の試験をクリアしており、軽い、カジュアルなイメージから建設業界や物流業界での利用が増えているとのことです。
安全靴に求める機能
切削加工されている現場の皆さんに「安全靴を選ぶ上で最もこだわる機能」についてX(旧Twitter)のアンケートで調査したところ、下記の結果となりました。
57人が回答したアンケート結果は「足が痛くならない」>「滑らない」>「蒸れない」でした。
多くの方が「足が痛くならない」機能を特に求めていることがわかりました。
これらのこだわりを実現するにはクッション性や滑りにくさなど、様々な機能が必要になってくると予想しました。
そこで、製造現場でも利用が進むスポーツメーカー製シューズに着目し、ミズノ株式会社のシューズ企画担当者にプロテクティブスニーカーの機能についてお話を伺いました。
快適な履き心地を実現する機能
タクミセンパイ服部(以下、服部):ミズノのプロテクティブスニーカーについて、快適な履き心地を実現する機能としてどのようなものがありますか。
ミズノ株式会社(以下、ミズノ):ミズノでは軽さ、優れたクッション性と動きやすさを実現するプロテクティブスニーカーを提供しています。
クッション性について、ミッドソールの材料や設計が重要であり、ミズノのスポーツのノウハウが活用されています。
かかと部にはセル構造、ミッドソールにはランニング用シューズにも採用されている柔らかい素材(U4icX)を使用し、クッション性を向上させています。
耐滑性について
服部:ミズノが提供するプロテクティブスニーカーについて、滑るという課題に対する機能を教えてください。
ミズノ:耐滑性について、JSAA規格に要求される試験(潤滑油液に対する滑り)を実施し、合格しています。
ミズノでは六角形のアウトソールパターン*により、優れた耐滑性を実現しています。
また、油による劣化に強いラバーソールを採用し、耐油性もあります。
*SⅡソール、DⅡソール、Uソール、Hソール、Wソールにおいて
通気性について
服部:ミズノが提供するプロテクティブスニーカーについて、蒸れるという課題に対する機能を教えてください。
ミズノ:多くの製品でシューズサイドやベロ(甲部分)にメッシュを採用することで通気性をプラスし、蒸れにくくしています。
下の製品ではサイドにメッシュを採用し、ベロにテニスシューズでも採用している通気構造を取り入れることで蒸れにくくしています。
つま先部分が蒸れるという困りごとが多いのですが、下の製品のように前足部のミッドソールに通気孔を設け、蒸れや通気に特化したモデルもあります。
また、下の製品はメッシュ地と通気用の孔をあけたスポンジを組み合わせたインソールで、通気性を良くしています。
一方でメッシュ部分が多いモデルやミッドソールに通気孔を設けているモデルでは、微細な切粉や粉塵の侵入という課題があります。
もしこれらの侵入に困っている場合は、人工皮革比率の高い粉塵・防塵モデルの検討をオススメします。
耐久性について
服部:ミズノが提供するプロテクティブスニーカーについて、耐久性についてはいかがでしょうか。
ミズノ:ソールとアッパーのはく離についてJASS規格が定める基準を合格しています。
つま先部分は傷つきやすいため、耐久性のある人工皮革を採用することで補強しています。
また、履き口(内側)に人工皮革を使用して擦り減りにくくし、擦り減りやすいアウトソール(靴底)はラバーの仕様で耐久性に配慮しています。(*全てのシューズではありません)
人工皮革を多く使用し、メッシュに対して強度を上げた仕様のモデルも存在します。
インソールを自由に選んでよいか
服部:既に利用中の安全靴やプロテクティブスニーカーに、インソールを自由に選んで使用してもよいのでしょうか。
ミズノ:JSAA規格による規格があり、付属もしくは同等のインソールを使用いただくことで、取得した規格・付加的性能を担保しています。
そのため、付属品以外のインソールを使用すると性能を担保できない場合もあるためご注意ください。
とはいえ消耗による交換などの要望もあるため、ミズノから別売りのインソールを販売しています。
ただし、それぞれ対応するモデルが異なるため、購入前に製品情報を念入りにご確認ください。
切削加工業界におけるプロテクティブスニーカーの使用状況
服部:切削加工業界でミズノのプロテクティブスニーカーは使用されていますか。
ミズノ:詳細をすべて把握できていませんが、切削加工業界においてもプロテクティブスニーカーの普通作業用(A種)が使用されていることを認知しています。
業種別では自動車部品製造の方、その他部品製造の方、金型の製造工程の方や自動車の整備師にも使ってもらっていると思います。
切削加工業界といっても加工されている部品の重量や作業環境が異なるため、全ての方が条件を満たすわけではありませんが、規格の範囲で使用できるお客様もいるのではないでしょうか。
もし着用に不安があれば、所属する会社に確認していただくのが一番確実です。
切削加工の現場にオススメのプロテクティブスニーカー
服部:ミズノが提供する製品の中で、切削加工の現場で働いている人にオススメのプロテクティブスニーカーを教えてください。
ミズノ:火気の取り扱い、もしくは発火の恐れがある環境を避けた上で、2つの製品をオススメします。
繰り返しにはなりますが、もし着用に不安があれば、所属する会社に確認をお願いします。
オールマイティLSⅡリーズ
通気性に配慮して、シューズサイドにメッシュを使用
JSAA規格 普通作業用(A種)認定品 プロテクティブスニーカー
クッション性と耐滑性に優れたSⅡソールを搭載したモデルです。
ひもタイプ、3本ベルトタイプ、ボアタイプ、ミッドカットタイプがあります。
SUシリーズ
JSAA規格 普通作業用(A種)認定品 プロテクティブスニーカー
クッション性と耐滑性に優れ、つま先が少し上がっているため、つまずきやすい環境での利用に適しています。
3本ベルトタイプとボアタイプがあります。
ミズノのプロテクティブスニーカーお問い合わせ先
ご興味のある方は下記までご連絡ください。
商品について:ミズノ公式オンライン
個人のお客様:ミズノお客様相談センター TEL:0120-320-799
法人のお客様:お問い合わせ
編集長コメント
「切削加工の現場における足の疲れと安全靴について調べてみた」いかがでしたか。
切削加工業界におけるプロテクティブスニーカーの使用について、検討する上での情報が少なかったので記事にしてみました。
ミズノ株式会社にプロテクティブスニーカーについてお伺いしましたが、安全性だけでなく機能性に優れた製品があることがわかりました。
切削加工業界といっても大型の部品や金型を加工されている方もいるため、全ての方がJSAA規格 普通作業用(A種)のプロテクティブスニーカーを使用できるわけではありませんが、基準をクリアできる会社も多いと考えます。
タクミセンパイとしては、切削加工業界の職場環境(特に現場)が快適になって欲しいと考えているため、プロテクティブスニーカーの使用が進んで欲しいと思います。
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