切削工具の調達状況と生産活動への影響について、2026年の最新情報を知りたいですか。
本記事では、タングステン価格の上昇による切削工具の納期遅延・受注制限・価格上昇が、生産現場へどのように影響しているかを紹介しています。
この記事を書いた私は工具メーカーでの営業・マーケティングの経験を活かし、切削工具と切削加工業界に特化した専門サイト「タクミセンパイ」を2020年から運営しています。
中立的な立場としてアンケートを設計し、独自の調査を実施しました。
この記事を読むことで、2026年に実施した切削工具ユーザー63名のアンケート結果より、切削工具の納期遅延・受注制限・価格上昇の影響を定量的なデータで把握することができます。
63.5%の切削工具ユーザーで切削工具の納期遅延が発生し、36.5%のユーザーが価格上昇分を製品価格に転嫁していることがわかりました。
タングステン高騰が引き起こす切削工具の納期遅延・価格上昇と生産現場への影響

2026年より、切削工具の納期遅延・受注制限・価格上昇が相次ぎ、多くの製造現場に影響が出ています。
切削工具の中でも、原材料の約90%がタングステンによって構成されている超硬工具が特に影響を受けています。
しかも、超硬工具は切削工具全体の70%以上を占めており、現在製造現場で最も利用されていることから影響の範囲が非常に広いです。
しかし、切削工具の調達状況と生産活動への影響について、業界全体でどれほど深刻なのかが定量的に示されていないため、この問題に対して国や業界団体、企業の対策が後手に回っているのが現状です。
そこでタクミセンパイでは、現場のリアルな状況を可視化し、社会に向けて発信するためのアンケート調査「切削工具の調達状況と生産活動への影響」を4月27日から実施しています。
本記事では、切削工具ユーザー63人分の回答結果を紹介しています。
超硬工具の主原料であるタングステンの課題については、「超硬工具の材料であるタングステンの課題」の記事で詳しく紹介しています。
また、株式会社東鋼がnoteに投稿した「中国のタングステン輸出管理が及ぼす日本の切削工具業界への影響と東鋼が社会に対してできること」を見ることで、切削工具メーカーの現場で今起きていることを詳しく知ることができます。
また、切削工具が日本のものづくりにおいてなぜ重要なのか、その理由がわかりやすく紹介されています。
「切削工具の調達状況と生産活動への影響」2026年 調査結果
「切削工具の調達状況と生産活動への影響」に関する下記5つの質問について、切削工具ユーザー63人に回答してもらいました。
- 切削工具の納期遅延 状況
- 切削工具の受注制限・見積辞退 状況
- 切削工具の価格上昇分について製品価格への転嫁状況
- 切削工具の納期遅延・受注制限・価格上昇を原因とした生産への影響
- 切削工具の納期遅延・受注制限・価格上昇に対する改善
「切削工具の調達状況と生産活動への影響」に関するアンケート概要は下記です。
| アンケート回収方法 | タクミセンパイのWEBアンケートフォーム |
| アンケート回収期間 | 2026年4月27日~5月11日 |
| アンケート回答数 | 63名 (回答者は全て切削工具ユーザー) |
本記事では5つの質問に対する回答結果をまとめています。
5月18日(月)までアンケートを継続し、さらに回答数を増やして内容をアップデート予定です。
切削工具ユーザーの方はアンケート(下記リンク先)にご協力よろしくお願いいたします。
5分程度で終わるアンケートで、会社や個人の特定につながる入力項目はありません。
1.切削工具の納期遅延 状況
「切削工具の納期遅延について、体感で構いませんので2026年以降の状況を教えてください。」といった質問で、下記4択から回答いただきました。
- 多くの工具で納期遅延が発生している(50%以上)
- 一部の工具で納期遅延が発生している(10〜49%)
- ごく一部の工具で納期遅延が発生している(1〜9%)
- 納期遅延は発生していない
63名が回答した「切削工具の納期遅延 状況」の結果は下図となりました。

63.5%*の切削工具ユーザーで切削工具の「納期遅延が発生」しています。(*38.1%+22.2%+3.2%の合計)
「ごく一部(1〜9%)の工具で納期遅延が発生している」が38.1%で最も多いという結果でした。
2.切削工具の受注制限・見積辞退 状況
「切削工具の受注制限・見積辞退について、2026年以降の状況を教えてください。」といった質問で、下記4択から回答いただきました。
- 受注制限と見積辞退の両方が発生した
- 受注制限のみ発生した
- 見積辞退のみ発生した
- どちらも発生していない
63名が回答した「切削工具の受注制限・見積辞退 状況」の結果は下図となりました。

28.6%*の切削工具ユーザーで切削工具の「受注制限もしくは見積辞退が発生」しています。(*3.2%+19.0%+6.4%の合計)
「受注制限のみ発生した」が19.0%で最も多いという結果でした。
3.切削工具の価格上昇分について製品価格への転嫁状況
「切削工具の価格上昇分について、2026年以降の製品価格への転嫁状況を教えてください。」といった質問で、下記4択から回答いただきました。
- ほぼ全額転嫁できた/できそう
- 一部のみ転嫁できた/できそう
- 転嫁を相談したが受け入れられなかった
- 転嫁を相談していない
63名が回答した「切削工具の価格上昇分について製品価格への転嫁状況」の結果は下図となりました。

36.5%*の切削工具ユーザーで「切削工具の価格上昇分を製品価格に転嫁済み(一部含む)」という結果でした。(*7.9%+28.6%の合計)
一方、54.0%は価格の転嫁の相談をしていないという状況です。
4.切削工具の納期遅延・受注制限・価格上昇を原因とした生産への影響
「切削工具の納期遅延・受注制限・価格上昇により、2026年以降で生産できない製品が発生しましたか。」といった質問で、下記3択から回答いただきました。
- すでに発生している
- 今後発生する可能性が高い
- 発生していない
63名が回答した「切削工具の納期遅延・受注制限・価格上昇を原因とした生産への影響」の結果は下図となりました。

33.3%の切削工具ユーザーが「今後生産できない製品が発生する可能性が高い」と回答しています。
5.切削工具の納期遅延・受注制限・価格上昇に対する改善
「切削工具の納期遅延・受注制限・価格上昇を受け、実施した/検討している改善内容を教えてください。」といった質問で、下記5択から複数回答いただきました。
- 使用工具メーカーの変更
- 工具材種の変更(例:超硬→ハイス)
- ソリッドタイプからヘッド交換式への変更
- 再研磨の活用
- 加工条件の見直し(切削速度・送り・クーラントなど)
63名が回答した「切削工具の納期遅延・受注制限・価格上昇に対する改善」の結果は下図となりました。

58.7%の切削工具ユーザーが「使用工具メーカーの変更」を実施/検討しているという結果でした。
また、次いで「再研磨の活用」が52.4%、「加工条件の見直し」が41.3%と多いことがわかりました。
切削工具の納期遅延・価格上昇と生産現場への影響まとめと今後

63.5%の切削工具ユーザーで切削工具の納期遅延が発生しており、影響が大きいことが確認できました。
切削工具の受注制限もしくは見積辞退の発生は28.6%の切削工具ユーザーで発生しており、納期遅延と比較すると影響はまだ小さいことがわかります。
タングステン材料の高騰について、短期的な解決手段が見つかっていません。
今後もタングステンの価格が上がり続ける、もしくは高価格の状態が長期化するなど、事態がこれ以上深刻にならないことを願っています。
切削工具の価格上昇を受け、36.5%の切削工具ユーザーが切削工具の価格上昇分を製品価格に転嫁していることがわかりました。
一方、54.0%は価格の転嫁の相談をしていないという課題が明確になりました。
転嫁の相談をしていない方においては、本記事を参考に是非価格交渉を進めてほしいです。
現在起きている切削工具の価格上昇分を転嫁しなければ、事業継続に影響が出てしまうと考えます。
切削工具の納期遅延・受注制限・価格上昇を原因とした生産への影響について、33.3%の切削工具ユーザーが今後生産できない製品が発生する可能性が高いと回答しています。
納期遅延や価格上昇が長期化してしまうと、生産への影響が実際に起こり始めてしまうと考えられます。
切削工具の調達状況と生産活動への影響が定量的なデータで示すことができたため、国や業界団体、企業の対策が進み、この問題の解決に繋がれば嬉しいです。
タングステン材料の高騰に対する短期的な解決手段が現時点ではないため、切削工具ユーザーとしては使用工具メーカーの変更や再研磨の活用、加工条件の見直しが進んでいくと考えられます。
また、切削工具メーカーにおいては、使用済み切削工具の回収に力を入れていく流れが既に始まっています。
参考:アンケート回答者の属性

切削工具の納期遅延・受注制限・価格上昇が特定の業界や地域で発生していないことを確認するため、アンケート回答者(切削工具ユーザー)の属性を確認しています。
アンケート回答者(切削工具ユーザー)63名の属性がわかる情報として下記5つをまとめています。
- 事業所 所在地
- 会社規模(社員数)
- 部品の1ヶ月あたりの生産数量
- 加工に携わっている部品
- 普段利用している工作機械
回答者の偏りはなく、幅広い属性の切削工具ユーザーに回答いただいていることが確認できました。
事業所 所在地
アンケート回答者(切削工具ユーザー)の事業所 所在地を確認しました。
全国の切削工具ユーザーがアンケートに回答されています。

会社規模(社員数)
アンケート回答者(切削工具ユーザー)の会社規模(社員数)を確認しました。
中小企業から大手企業まで幅広い切削工具ユーザーにアンケートを回答いただいています。

部品の1ヶ月あたりの生産数量
アンケート回答者(切削工具ユーザー)の部品1ヶ月あたりの生産数量を確認しました。
試作から量産まで幅広い切削工具ユーザーにアンケートを回答いただいています。

加工に携わっている部品
アンケート回答者(切削工具ユーザー)の普段使用している工作機械を複数回答で確認しました。
幅広い工作機械を使用する切削工具ユーザーにアンケートを回答いただいています。

普段利用している工作機械
アンケート回答者(切削工具ユーザー)が加工に携わっている部品を複数回答で確認しました。
幅広い部品を加工する切削工具ユーザーにアンケートを回答いただいています。

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執筆者情報

本記事はタクミセンパイの服部が執筆・編集しました。
私は工具メーカーでの営業とマーケティングの経験を活かし、切削工具と切削加工業界に特化した専門サイト「タクミセンパイ」を2020年から運営しています。
私(服部)の実績や経歴については「運営について」に記載しています。
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