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実用化が進むセンシングツールをMECT2025で調査

切削工具をIoT化したセンシングツールの最新情報を探していますか

この記事を書いた私は工具メーカーでの営業・マーケティングの経験を活かし、切削工具と切削加工業界に特化した専門サイト「タクミセンパイ」を2020年から運営しています。
切削工具の最新技術・トレンドを調査し、中立的な立場としてまとめています。

本記事ではMECT2025の会場で確認できたセンシングツールとして、京セラと住友電気工業の製品を写真・解説付きでまとめています。
この記事を読むことで、切削工具の最新技術・トレンドとして「センシングツール」の現状を知ることができます

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センシングツールをMECT2025で調査

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切削加工中の状態把握は目視できないため、切削音や加工後の刃先状態を確認し、堪やコツを頼りに推測するしかありませんでした。

技術や経験に頼っていた切削加工の状態把握が、切削工具をIoT化したセンシングツールによって、リアルタイムでデータを取得できるようになりました。
工作機械側でも様々な情報を取得できるようになっていますが、センシングツールであればより加工点に近い位置でデータを取ることが可能です。

3年前のJIMTOF2022からセンシングツールが参考出展されるようになりました。
そして今回のMECT2025で、遂にセンシングツールが実用化に向けて大きく前進したことを確認しました。

1年前のJIMTOF2024で確認できたセンシングツールは「切削工具のIoT化!センシングツールをJIMTOF2024で調査」で紹介しています。

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MECT2025で確認できた切削工具をIoT化したセンシングツール(センサ工具)として京セラの「VIMOA」、住友電気工業の「SumiForce」を紹介します。



京セラのセンシングツール「VIMOA」

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京セラは2025年8月19日に「加工を見える化する新サービス「VIMOA(ヴィモア)」を発表し、9月よりレンタルサービスを開始しています。
VIMOAの専用ページも公開されており、最新情報はリンク先をご確認ください。

生産現場の可視化・監視・分析を支援するセンシングソリューションとして、「切削加工の世界をもっと明確に。もっと正確に。」のキャッチフレーズでVIMOAが紹介されています。
VIMOAは「Visualization(可視化)」「Monitoring(監視)」「Analysis(分析)」の頭文字が由来となっています。

VIMOAを使うことで、加工条件の不具合や工具欠損の要因を可視化することが可能です。

VIMOAの特徴として毎秒約2万2000回のデータを取得する「高サンプリングレート」を採用し、突発的に発生する加工課題の分析を可能にしています。
また、VIMOAは旋盤、マシニングセンタ、自動盤など既存の工作機械にマグネットで簡単に取り付けることが可能です。

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VIMOAの専用アプリ画面


MECT2025会場で実物のVIMOAを見て触ることができ、測定結果が映る専用アプリの画面も確認できました。

VIMOAが取得できる情報としては「振幅波形グラフ」「重心グラフ」「3軸合成値グラフ(しきい値設定)」「FFT解析グラフ」があります。

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VIMOAバッテリー


VIMOAには京セラのスマートフォンと共通のバッテリーが採用されています。
安全で寿命に優れたバッテリーで12時間の連続稼働が可能とのことです。


VIMOAの利用プラン

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センシングツールプラン付属の専用無線LAN


VIMOAを利用するプランとして「センシングツールプラン」が用意され、センシングツールをレンタルすることができます。

センシングツールプランの利用料は「14日間で90,000円のプラン」と「30日間で160,000円のプラン」が用意されています。
また、センシングツールの他に専用無線LANが同梱し、自社のPCで専用アプリにて計測データを収集・解析できるようになっています。

さらに、2026年春サービス開始予定として「AIモニタリングプラン」が発表されています。
AIモニタリングプランは、センシングツールと加工監視AIを組み合わせ、量産ライン全体をモニタリングすることで稼働状況の監視と不具合の一元管理を可能にすると公表されています。

センシングツールプランは、常時監視ではなく、課題が発生した時に短期的に使用する診断機器として位置づけられています。
一方、AIモニタリングプランは、量産フェーズでの使用を想定した常時監視ソリューションの位置づけであり、今後の情報に期待です。



住友電気工業のセンシングツール「SumiForce」

住友電気工業は2024年11月8日に「切削現象を見える化 センシングツール SumiForce」を発表し、レンタルサービスを開始しています。
SumiForceの専用ページも公開されており、最新情報はリンク先をご確認ください。

SumiForceはKKD(勘・経験・度胸)にDX(デジタル革命)をプラスし、切削加工の見える化を実現したセンシングツールとして紹介されています。
センシングツールで見える化させることで、定量値に基づく条件設定、可視化による異常原因究明を実現することができます。

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SumiForceの専用ソフト画面


MECT2025会場で実物のSumiForceを見て触ることができ、測定結果が映る専用ソフトの画面も確認できました。
SumiForceはBluetoothでの接続を採用しています。

SumiForceは「旋削加工用センシングツール」と「転削加工用センシングツール」をラインナップしており、それぞれ紹介していきます。


SumiForce 旋削加工用センシングツール

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タレットに直接装着し、センサーで刃先の状態を測定できるのがSumiForce 旋削加工用センシングツールです。
ホルダ内にバッテリーが内蔵されています。

特徴として下記が紹介されています。

  • 高感度で微細な変化を測定
  • 垂直荷重、水平荷重を測定
  • 25角通常ホルダと同サイズ
  • 剛性は通常ホルダの99%

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MECT2025では新たに、一軸センサーを内蔵した小型自動旋盤用センシングツールも展示されていました。
バッテリーは外付けになっています。


SumiForce 転削加工用センシングツール

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マシニングセンタに直接装着し、工具座標系XY面の切削荷重の変化を測定できるのがSumiForce 転削加工用センシングツールです。
ホルダ内にバッテリーが内蔵されています。

特徴として下記が紹介されています。

  • 高感度で微細な変化を測定
  • スラスト、トルクに加えて、工具座標系XY面の荷重測定
  • ホルダー一体の独自機構構造
  • ATCにも対応



SumiForceの利用プラン

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SumiForceを利用するプランとして、SMFLレンタル(三井住友ファイナンス&リースグループ)を通じて使用することができます。

住友電気工業では、「SumiForceレンタル」と「KKDX加工サポート」をあわせて「ツーリングサポートプラス」としてサービス化しています。
住友電気工業はツールの改善サポートにSumiForceを使い、最適な工具や切削条件を提案するために、センシングツールを活用しています。

SumiForceのレンタルキットにはセンシングツールの他、受信機、ケーブル、ドングルキー、GPSが付属しています。

編集長コメント

「実用化が進むセンシングツールをMECT2025で調査」いかがでしたか。

切削工具のイノベーションの1つが、IoT化だと考えます。
被削材に直接接触する切削工具から得られるデータを利用することで、切削加工が変わっていくと考えます。

私が最初にセンシングツールを取材したのは3年前のJIMTOF2022でした。
ここ3年でセンシングツールの本体強度(特に防水性関連)とバッテリー性能が向上し、MECT2025で実用化に向けて進んでいることが確認できました。

センシングツール本体の改善以上に、ソフト部分を頻繁にアップデートされているとのことです。
取得したデータを業務に活かすためにはソフトが重要であり、今後の動向に注目です。

京セラと住友電気工業への取材で、センシングツールの注目度は高く、少しずつ利用者が増えているというお話をききました。
来年のJIMTOF2026におけるセンシングツール展示が今から楽しみです。

1点残念だったのが、三菱マテリアルが今回センシングツールを展示していなかったことです。
三菱マテリアルのセンシングツールはJIMTOF2024に展示されていましたが、まだ公式の情報ではサービス提供開始されておらず、今後の動向が気になります。

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執筆者情報

hattori


本記事はタクミセンパイの服部が執筆・編集しました。

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