切削油剤を切り替えるためにメーカーの選定を始めてみたものの、参考となる情報がなくて困っていませんか。
この記事は切削油剤に関して専門性の高いライターに記事執筆を依頼し、切削工具と切削加工業界に特化した専門サイト「タクミセンパイ」が編集しました。
本記事では「切削油剤選定の成功確率を上げる方法」「失敗しやすい切削油剤の選び方」「切削油剤の選定チェックリスト 」「切削油剤のトラブル事例」を紹介しています。
この記事を読むことで、切削油剤を初めて切り替える際の進め方と選定方法を知ることができます。
要求条件を洗い出して一般的に起こりうるトラブルについて把握し、優先順位と採用基準を決めることをオススメします。
切削油剤を初めて切り替える際の進め方と選定チェックリスト
切削油剤は金属や樹脂などの切削において「切粉の除去」「被削材の熱膨張を抑える」「加工負荷を低減させる」などの効果から不可欠な資材です。
切削油剤の性能によって工具費用や加工の仕上がりが変わるほど重要な資材であるものの、切削油剤は加工以外でさまざまなトラブルを発生させる側面も持っています。
さらに切削油剤メーカーは50社以上、製品数はおそらく1000種類を超え、初めて選定を任された方は困惑されると思います。
この記事では切削油剤を切り替える際に成功率を上げる進め方、選定に役立つチェックリストを紹介しています。
切削油剤選定が難しい理由
切削油剤の選定において最大の難点は、試さないと効果が分からないことが多い一方で、試すコストが大きいことです。
もし上手くいかなかった場合、テスト用の切削油剤の購入金額と機械を止める機会損失、入れ替え作業の手間が無駄になる可能性があります。
また、切削油剤を元に戻すためにも同じくらいの損失が出ます。
そのため、切削油剤を選ぶために必要な情報を事前にどれだけ集められるかが重要です。
しかし、その情報を得ることが難しく、メーカーから得られる情報はその製品の一面でしかありません。
切削油剤選定の成功確率を上げる方法
要求条件を洗い出して一般的に起こりうるトラブルについて把握し、優先順位と採用基準を決めることで切削油剤選定の成功率を上げることができます。
後述の「切削油剤の選定チェックリスト」と「切削油剤のトラブル事例」を参考にしてください。
新しい切削油剤を選ぶ際の進め方としては主に下記のパターンが存在します。
- 誰にも相談せずに自分で調べて決める
- 同業他社から情報を得て決める
- 直接切削油剤メーカーに相談して決める
- 商社に条件を伝え、提案された製品の中から決める
切削油剤メーカーと切削油剤に詳しい信頼できる人に相談できることが理想的です。
現実的には、取引関係のある商社に相談することになると思います。
商社ではなく切削油剤メーカーに相談する場合は、複数のメーカーとのやり取りの中から、何かしら信頼できるポイントを見つけて選ぶことになります。
失敗しやすい切削油剤の選び方
切削油剤の選定で失敗しやすい代表的なケースをまとめました。
切削油剤選定の失敗は「狙っていた結果が得られなかった」か「狙い通りの結果だったが、他の致命的な欠点が発覚した」にわけることができます。
有名な切削油剤メーカーだからという理由で選んでしまう
有名な切削油剤メーカーという情報を重視してしまうケースです。
選択肢を狭めることになるため、幅広い切削油剤メーカーを検討することで成功率を上げることができます。
自社の条件を十分に把握せずに選定を進めてしまう
新しい切削油剤を試してから初めて「欲しかったものと違った」となってしまうケースです。
後述の「切削油剤の選定チェックリスト」を参考にして、事前に自社が求める要求条件を整理しておく必要があります。
切削油剤で一般的に起こりうるトラブルについて確認せずに選んでしまう
切削油剤のトラブルについての認識があまく、一部のトラブルについて検討することなく決定して失敗してしまうケースです。
切削油剤メーカーが提供する情報だけでは、トラブルについて十分な情報を得ることができません。
後述の「切削油剤のトラブル事例」を参考にして、切削油剤メーカーか商社に相談することでトラブルを防ぐことができます。
価格だけで切削油剤を選んでしまう
切削油剤の価格を重視しすぎてしまうケースです。
切削油剤は工具寿命にも関わるため、予算を増やすことで値段以上の効果を発揮する製品を見つけることができるかもしれません。
もちろん切削油剤の価格も重要ではありますが、総合的なメリットを見ながら幅広い視点で探すことをオススメします。
求める切削油剤の条件が厳しすぎる
切削油剤の採用基準が厳しすぎて選択肢が狭まるケースです。
採用基準に優先順位をつけて選択肢を増やすことで、自社に合った製品を見つけやすくなります。
切削油剤の選定チェックリスト
切削油剤の選定作業は「自社の情報収集」と「採用基準の作成」にわけることができます。
以下のリストを参考に要求条件を整理した上で切削油剤メーカーや商社に相談しましょう。
自社の情報収集
- 被削材の材種(加工性能や被削材の腐食、耐劣化性能に関係)
- 加工内容(加工性能に関係)
- 付属設備(潤滑油回収装置、タンク構造、高圧ユニットなど。耐劣化性能に関係)
- タンク容量(耐劣化性能に関係)
- 過去に使用した切削油剤の使用結果(改善したいトラブルを把握し、新しい切削油剤で起こるトラブルを避けるヒントに)
- 自社の切削油剤管理方法(耐劣化性能に関係)
- 切削油剤を希釈する水の硬度とpH(耐劣化性能に関係)
- 法令への自社の対応(PRTR第一種指定化学物質該当品を使用可能か等)
採用基準の作成
- 要求項目(クリアしてほしい項目のリスト)
- 採用基準(クリアしてほしい基準の決定)
- 優先順位(要求項目の順位づけ)
切削油剤のトラブル事例
切削油剤の選定を成功させるために、切削油剤に関するトラブルを確認しておきましょう。
下記に不水溶性切削油剤と水溶性切削油剤の代表的なトラブル事例をまとめています。
不水溶性切削油剤のトラブル事例
- 油煙がひどい
- 切削油剤の消耗が激しい
- 火災のリスクがある
水溶性切削油剤のトラブル事例
- 急に発泡量が増えタンクから溢れる
- 工具寿命が大幅に落ちる
- 皮膚、目や鼻への刺激がひどい
- 腐りやすい
- 被削材が腐食する
- 機械が腐食する
- 油剤成分が固着する
- エマルジョンが分離する
- 使用している原料が環境や人体への影響から規制され廃番となる
切削油剤を初めて切り替える際の進め方と選定チェックリストまとめ
切削油剤を初めて切り替える際の進め方と、切削油剤選定の成功率を上げる方法について解説しました。
切削油剤の選定は加工性能や現状のトラブルの改善を追求するものであり、どの欠点を受け入れるかの選択とも言えます。
優先順位を定めることで、求める性能の製品が見つかる可能性が高まります。
可能な限り選択肢を広げ、信頼できて知識を持った人に相談できることが理想的です。
切削油剤選定に正解はないのかもしれませんが、紹介した方法を参考にしてもらえれば正解に近い選定ができると考えます。
選定後は入れ替えと加工テストが待っています。
手間や時間はかかりますが、狙い通りの結果が出た時は達成感を得られます。
編集長コメント
「切削油剤を初めて切り替える際の進め方と選定チェックリスト」いかがでしたか。
切削油剤の切り替えを検討したい方が多い一方で、参考になる中立的な情報が少なかったため、本記事を外部ライターに協力いただき作成しました。
切削油剤の種類やメーカーを確認したい方は「切削油剤の種類とメーカー18社リスト」の記事を公開していますので参考にしてください。
切削油剤の手荒れに困っている方は「切削油剤による手荒れの対策に最適な保護クリームとは」の記事を公開していますので参考にしてください。
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ライター・編集者情報
本記事は切削油剤に関して専門性の高いYuさん執筆いただき、タクミセンパイの服部が編集しました。
私は工具メーカーでの営業とマーケティングの経験を活かし、切削工具と切削加工業界に特化した専門サイト「タクミセンパイ」を2020年から運営しています。
私(服部)の実績や経歴については「運営について」に記載しています。
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