切削加工業界(工作機械・切削工具)の今がわかる統計データをまとめて確認したいと困っていませんか。
この記事を書いた私は工具メーカーでの営業・マーケティングの経験を活かし、切削工具と切削加工業界に特化した専門サイト「タクミセンパイ」を2020年から運営しています。
2021年時点で公開されている統計データをわかりやすく表現、一部組み合わせて本記事を執筆しました。
本記事では工作機械の受注金額推移と受注用途(内需・外需)、切削工具の生産高推推移をまとめています。
この記事を読むことで、切削加工業界の中でも工作機械と切削工具の市場動向を過去データとの比較で把握することができます。
工作機械の受注総額は新型コロナウイルスを原因とする最初の緊急事態宣言が発出される前から市場は落ち込んでおり、2020年7月ごろから回復し始めています。
切削工具の生産高は工作機械と比較して約3ヶ月遅れの2020年10月頃から回復し始めています。
切削加工業界の今を統計データで徹底分析
本記事では、日本工作機械工業会および日本機械工具工業会のデータ、経済産業省の生産動態統計調査のデータを使って、定量的な分析をしています。
「【2021年】切削加工業界の今を知る:イベント実績編」では、切削加工業界の2つの展示会に関する分析を中心に、日経産業新聞や月刊生産財マーケティングなどの専門誌におけるメーカー・切削工具ユーザー(工作機械で切削加工されている方)への取材記事から定性的な情報をまとめてみました。
工作機械市場と切削工具市場の動向
切削加工に欠かせないものと言えば、マシニングセンタなどに代表される工作機械と、ドリルやエンドミルなどの切削工具です。
この2つの市場を見ることで、切削工具業界の動向を把握することができます。
工作機械の受注総額(単位:百万円)と、切削工具の生産高(単位:百万円)をグラフにしてみました。
上記グラフから、工作機械受注総額と切削工具生産高はかなり近い動きをしており、工作機械は増減が激しいことがわかります。
新型コロナウイルス発生により緊急事態宣言が初めて発出された2020年4月以降に市場が大きく落ち込んだというより、2019年から既に落ち込み始めていたことがわかります。
工作機械市場の動向
工作機械市場について、より詳細なデータをまとめてみました。
工作機械の受注金額推移
2004年~2020年の工作機械の受注総額の推移をまとめてみました。
上記グラフから、リーマンショック以前と同等まで戻っていた受注総額が、2019年から低下し、新型コロナウイルスを原因とする緊急事態宣言にて大きなダメージを負ったことがわかります。
工作機械の受注総額推移(2019~2021)
工作機械受注総額の2019年~2021年3月の推移をまとめてみました。
新型コロナウイルスを原因とする緊急事態宣言が発出される前から受注総額は低下しており、2020年7月ごろから回復し始めていることがわかります。
工作機械の受注用途(内需)
国内向け(内需)として、どのような用途で工作機械が購入されているかまとめてみました。
2016年~2020年の受注総額は、受注用途の1位は一般機械、2位は自動車、3位は自動車部品で、順位の変化はありません。
金額の変化はあるものの、各用途の割合はほとんど変化がないことがわかります。
一般機械が全体の約4割、自動車が約3割、自動車部品が約2割を占めています。
工作機械の輸出先(外需)
海外向け(外需)として、どのような国・地域で工作機械が購入されているのかまとめてみました。
2016年~2020年の受注総額は、国別の輸出先上位は中国、アメリカ、ドイツの3国で変わっていません。
ただ、工作機械の輸出先TOPがアメリカから中国に変わっています。
2020年時点では、中国が全体の約3.5割、アメリカが約3割、ドイツが約0.5割を占めています。
NC工作機械 種別の受注金額と生産数量の推移
マシニングセンタとNC旋盤について受注総額の推移をまとめてみました。
マシニングセンタの受注総額はNC旋盤の約1.5倍あります。
2016年~2020年の受注総額は、マシニングセンタもNC旋盤もほとんど同じ動きをしていることがわかります。
切削工具市場の動向
切削工具市場について、より詳細なデータをまとめてみました。
切削工具の生産高推移
2006年~2020年の切削工具の生産高の推移をまとめてみました。
上記グラフから、リーマンショック以前と同等まで戻っていた生産高が、2019年から低下し、新型コロナウイルスを原因とする緊急事態宣言にて大きなダメージを負ったことがわかります。
切削工具の生産高推移(2019~2021)
切削工具生産高の2019年~2021年3月の推移をまとめてみました。
新型コロナウイルスを原因とする緊急事態宣言が発出される前から生産高が定価しており、2020年10月以降に回復し始めていることがわかります。
切削工具は工作機械と比較して、約3ヶ月回復が遅れていることがデータからわかりました。
工具材料別の生産高推移
超硬工具、特殊鋼工具、ダイヤモンド工具の生産高の推移をまとめてみました。
超硬工具の生産高は全体の約7割を占めており、特殊鋼工具の約3倍、ダイヤモンド工具の約8倍あります。
2006年~2020年の受注総額は、超硬工具、特殊鋼工具、ダイヤモンド工具で似たような動きをしています。
2006年 VS 2018年の生産高の比較結果が下記です。
超硬工具 | 特殊鋼工具 | 特殊鋼工具 |
+17% | −12% | +27% |
2006年 VS 2018年の生産高は、超硬工具が17%の成長、特殊鋼工具が12%の縮小、ダイヤモンド工具が27%の成長をしています。
超硬工具とダイヤモンド工具が成長し、特殊鋼工具が縮小していることがわかります。
超硬工具の生産高推移
超硬工具の生産高推移についてまとめてみました。
対象は、ドリル、エンドミル、カッタ、バイト、その他超硬工具、超硬チップ、超硬サーメットチップです。
2006年~2020年の受注総額は、ドリル、エンドミル、カッタ、バイト、その他超硬工具で似たような動きをしています。
2006年 VS 2018年の生産高の比較結果が下記です。
ドリル | エンドミル | カッタ | バイト | その他 超硬工具 |
+17% | +64% | +4% | −29% | −15% |
2006年 VS 2018年の生産高は、ドリルが17%の成長、エンドミルが64%の成長、カッタが4%の成長、バイトが29%の縮小、その他超硬工具が15%の縮小をしています。
エンドミルの成長が顕著です。
特殊鋼工具のドリル16%の縮小は、超硬工具に置き換わっていることが予想できます。
2006年 VS 2018年の生産高の比較結果が下記です。
超硬チップ | 超硬サーメットチップ |
+23% | −1% |
2006年~2020年の受注総額は、超硬チップ、超硬サーメットチップで似たような動きをしています。
2006年 VS 2018年の生産高は、超硬チップが23%の成長、超硬サーメットチップが1%の縮小をしています。
特殊鋼工具の生産高推移
特殊鋼工具の生産高推移についてまとめてみました。
対象は、ドリル、ミーリングカッタ、タップ・ダイス、リーマ・バイトです。
*統計データにはギヤーカッタ、ブローチの項目がありますが、本記事では使用していません。
2006年~2020年の受注総額は、ドリル、ミーリングカッタ、タップ・ダイス、リーマ・バイトで似たような動きをしています。
2006年 VS 2018年の生産高の比較結果が下記です。
ドリル | ミーリング カッタ | タップ ダイス | リーマ バイト |
−16% | −44% | +9% | −36% |
2006年 VS 2018年の生産高は、ドリルが16%の縮小、ミーリングカッタが44%の縮小、タップ・ダイスが9%の成長、リーマ・バイトが36%の縮小をしています。
ミーリングカッタとリーマ・バイトが大きく縮小しています。
ダイヤモンド工具の生産高推移
ダイヤモンド工具の生産高推移についてまとめてみました。
対象は、ダイヤモンド切削工具とC(W)BN工具です。
2006年 VS 2018年の生産高の比較結果が下記です。
ダイヤモンド切削工具 | C(W)BN工具 |
+27% | +27% |
2006年~2020年の受注総額は、ダイヤモンド切削工具とC(W)BN工具で似たような動きをしています。
2006年 VS 2018年の生産高は、ダイヤモンド切削工具、C(W)BN工具ともに27%の成長をしています。
切削加工業界の今を統計データで徹底分析まとめ
- 工作機械の受注総額と切削工具の生産高はかなり近い動きをしており、工作機械は増減が激しい
- 工作機械の受注総額は、新型コロナウイルスを原因とする最初の緊急事態宣言が発出される前から市場は落ち込んでおり、2020年7月ごろから回復し始めている
- 工作機械の受注用途は、1位が一般機械、2位が自動車、3位が自動車部品で、順位の変化はない。一般機械が全体の約4割、自動車が約3割、自動車部品が約2割を占めている
- 工作機械の国別の輸出先上位は、中国、アメリカ、ドイツの3国で変わっていない。ただし、工作機械の輸出先TOPがアメリカから中国に変わっている。2020年時点では、中国が全体の約3.5割、アメリカが約3割、ドイツが約0.5割を占めている
- 切削工具の生産高は新型コロナウイルスを原因とする緊急事態宣言が初めて発出される前から落ち込んでおり、2020年10月以降に回復し始めている。切削工具は工作機械と比較して、約3ヶ月回復が遅れている
- 超硬工具の生産高は切削工具全体の約7割を占めており、特殊鋼工具の約3倍、ダイヤモンド工具の約8倍ある
- 2006年 VS 2018年の生産高の比較は、超硬工具が17%の成長、特殊鋼工具が12%の縮小、ダイヤモンド工具が27%の成長をしている
- 2006年 VS 2018年の生産高で大きく増加したのは、超硬エンドミル、超硬チップ、ダイヤモンド切削工具、C(W)BN工具
- 2006年 VS 2018年の生産高で大きく減少したのは、特殊鋼製のミーリングカッタおよびリーマ・バイト、超硬バイト
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執筆者情報
本記事はタクミセンパイの服部が執筆・編集しました。
私は工具メーカーでの営業とマーケティングの経験を活かし、切削工具と切削加工業界に特化した専門サイト「タクミセンパイ」を2020年から運営しています。
私(服部)の実績や経歴については「運営について」に記載しています。
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