切削工具と切削加工業界の情報を発信するポータルサイト「タクミセンパイ」をご覧いただきありがとうございます。
当サイトを運営する編集長の服部です。
本記事では「切削工具材種別に使用上の注意点と保管方法」を解説しています。
「材料別の特徴を理解することで、正しい取り扱いや保管」が進むことを目的に執筆しました。
*本記事は切削工具の製造に精通したライター「すなおさん」に作成いただき、編集させていただきました。
【記事の信頼性】
本記事を書いた私(服部)は2014年から切削加工業界に携わり、2020年から「タクミセンパイ」を運営しています。
工具メーカーで営業として500社以上の切削工具ユーザー(工作機械で切削加工されている方)に訪問し、技術支援をさせていただきました。
また、マーケティングとして展示会とイベントの企画・運営、カタログとWEBサイトの大型リニューアルプロジェクト、ブランディングプロジェクトを経験しました。
営業とマーケティングの経験をもとに、切削加工業界で働く皆さまに向けて本記事を執筆しています。
ハイス切削工具
「ハイス切削工具」は高速度工具鋼を使用した切削工具です。
高硬度の鋼を使用した工具で100年以上の歴史を誇ります。
使用上の注意点
高速度工具鋼はその名の通り、「鋼」です。
鋼は磁性を持ち、磁化した場合は鉄鋼材料の切粉がまとわりつきます。
磁化した場合は脱磁しないと、本来の工具性能を発揮できません。
磁石を近づけないように注意しましょう。
もう一つの鋼の特徴が錆びることです。
コーティングがある場合は錆を防ぐことができますが、摩耗が進むと摩耗箇所から錆びていきます。
錆がある場合は再研磨してから使用することをオススメします。
保管方法
磁石の近くで保管しないように注意しましょう。
摩耗箇所、再研磨箇所から錆びが発生するため、防錆剤を塗布して湿気の少ない場所に保管します。
錆の発生を抑えるため、再研磨のタイミングは使用直前がオススメです。
超硬切削工具
「超硬切削工具」は炭化タングステン(タングステンカーバイト)が主原料の合金で作られた切削工具です。
現在、最も多く使用されている材種でさまざまな切削加工に使用されています。
使用上の注意点
超硬合金の密度は鋼の約2倍あり、切削工具の中では最も重い材種です。
太径のエンドミルやドリルは刃先が鋭いこともあり、手を滑らせると手指を深く切ってしまいます。
対切創手袋の着用や保護キャップを着け、注意深く取り扱うことをオススメします。
超硬合金はハイスの2倍以上の硬度がありますが、脆く欠けやすい材種です。
切削工具同士を接触させたり、落下させると欠ける恐れがあります。
超硬合金は鋼ほどではありませんが磁性があります。
磁石に近づけると磁化し、鉄鋼材料の切粉がまとわりつきます。
磁化した場合は脱磁しないと、本来の工具性能が発揮できません。
磁石を近づけないように注意しましょう。
保管方法
切削工具同士が接触すると欠ける恐れがあるため、個々にケースに入れ保管します。
鋼と違って錆びることはありませんが、水分が付着したまま保管するとバインダーのコバルトが抜けてしまい、炭化タングステンが脱落しやすくなります。
バインダーが抜けると工具寿命が低下するため、水分は確実に拭き取りましょう。
他の切削工具同様、磁石の近くで保管しないように注意しましょう。
CBN切削工具
「CBN切削工具」は鉄鋼系材料に使用される切削工具の中で最高硬度を持つ材種です。
硬度が高いことで、超硬切削工具より工具寿命が長くなります。
高硬度焼入れ鋼の切削加工にも対応し、仕上げ工程を研削加工から切削加工に置き換えることも可能です。
使用上の注意点
超硬合金と比較しても硬度が高いことから、工具同士の接触や落下には特に注意しましょう。
CBNは密度が低く軽い材種ですが、一般的に超硬合金を台金とし、刃先にCBN片がロウ付けされていることが多いです。
台金の超硬合金部分が重いため、落下に注意しましょう。
ロウ材は700℃中盤で溶け始めます。
ロウ材の融解を防ぐため、切削温度に注意して加工しましょう。
また、材種によってはコバルトがバインダーに使われています。
コバルトは磁性を持ち、磁化してしまうと鉄鋼材料の切粉がまとわりつきます。
磁化した場合は脱磁しないと、本来の工具性能が発揮できません。
磁石を近づけないように注意しましょう。
高硬度鋼を加工することも多いことから刃先にはネガランドがついていても、手指を切らない様に注意が必要です。
対切創手袋の着用や保護キャップを着け、注意深く取り扱うことをオススメします。
保管方法
切削工具同士が接触すると欠ける恐れがあるため、個々にケースに入れ保管します。
台金には超硬合金が使われています。
水分が付着したまま保管するとバインダーのコバルトが抜けてしまい、炭化タングステンが脱落しやすくなります。
バインダーが抜けると台金強度が低下を引き起こすため、水分は確実に拭き取りましょう。
また、水分や湿気でロウ材が酸化しロウ付け強度が落ちる恐れもあります。
他の切削工具同様、磁石の近くで保管しないように注意しましょう。
PCD切削工具
「PCD切削工具」は切削工具の中で最高硬度の材種です。
PCDとは多結晶ダイヤモンドのことです。
宝石に使われる単結晶ダイヤモンドとは異なり、ダイヤモンドの細かい粉末をコバルトをバインダーとして焼結しています。
鉄との親和性が非常に高く、鉄鋼材料の加工には不向きです。
しかし、アルミや銅など非鉄材料の加工においては、高い仕上げ面品位と、他の材種を超える工具寿命を得られます。
例外的に炭素含有量が極めて高い鉄鋼材料では、炭素(ダイヤモンド)が被削材に染み込まず使用できることもあります。
超硬合金の切削加工が可能で、超硬金型の直彫り加工も行える優れた材種です。
使用上の注意点
最高硬度の材種であることから非常に脆い特徴があります。
工具同士の接触ではもちろん、樹脂のケースやパレットに落下、接触することでも容易に欠けます。
使用直前まで刃先は発泡スチロールやゴムなど、柔らかいもので保護しておきましょう。
PCDは密度が低く軽い材種ですが、一般的に超硬合金を台金とし、刃先にPCD片がロウ付けされていることが多いです。
台金の超硬合金部分が重いため、落下に注意しましょう。
ロウ材は700℃中盤で溶け始めます。
ロウ材の融解を防ぐため、切削温度に注意して加工しましょう。
また、バインダーのコバルトが磁化してしまうと鉄鋼材料の切粉がまとわりつきます。
磁化した場合は脱磁しないと、本来の工具性能が発揮できません。
磁石を近づけないように注意しましょう。
アルミや銅を加工することが多いことから、すくい角や逃げ角が大きく刃先が鋭いです。
対切創手袋の着用や保護キャップを着け、注意深く取り扱うことをオススメします。
保管方法
切削工具同士の接触やケース本体との接触で欠ける恐れがあるため、個々にクッションをひいたケースに裏返しで入れて保管します。
刃先のPCD片、台金の超硬部分にバインダーとしてコバルトが使用されていることが多いです。
水分が付着したまま保管するとバインダーのコバルトが抜けてしまい、PCD、炭化タングステンが脱落しやすくなります。
バインダーが抜けると工具寿命の低下、台金強度の低下を引き起こすため、水分は確実に拭き取りましょう。
また、水分や湿気でロウ材が酸化しロウ付け強度が落ちる恐れもあります。
他の切削工具同様、磁石の近くで保管しないように注意しましょう。
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