
切削工具について、材種ごとに使用上の注意点と管理方法を詳しく知りたくありませんか。
この記事は切削工具の製造に精通したライター「すなおさん」に記事執筆を依頼し、切削工具と切削加工業界に特化した専門サイト「タクミセンパイ」が編集しました。
本記事ではハイス切削工具、超硬切削工具、CBN切削工具、PCD切削工具ごとに使用上の注意点と保管方法について紹介しています。
この記事を読むことで、切削工具を正しく扱うことができるようになります。


切削工具材種別 使用上の注意点と保管方法

本記事では、ハイス切削工具、超硬切削工具、CBN切削工具、PCD切削工具ごとに使用上の注意点と保管方法についてまとめています。
切削工具ごとに注意点と保管方法が異なるため、特徴を理解した上で取り扱いする必要があります。
ハイス切削工具の注意点と保管方法

「ハイス切削工具」は高速度工具鋼を使用した切削工具です。
高硬度の鋼を使用した工具で100年以上の歴史を誇ります。
使用上の注意点
高速度工具鋼はその名の通り、「鋼」です。
鋼は磁性を持ち、磁化した場合は鉄鋼材料の切粉がまとわりつきます。
磁化した場合は脱磁しないと、本来の工具性能を発揮できません。
磁石を近づけないように注意しましょう。
もう一つの鋼の特徴が錆びることです。
コーティングがある場合は錆を防ぐことができますが、摩耗が進むと摩耗箇所から錆びていきます。
錆がある場合は再研磨してから使用することをオススメします。
保管方法
磁石の近くで保管しないように注意しましょう。
摩耗箇所、再研磨箇所から錆びが発生するため、防錆剤を塗布して湿気の少ない場所に保管します。
錆の発生を抑えるため、再研磨のタイミングは使用直前がオススメです。
超硬切削工具の注意点と保管方法

「超硬切削工具」は炭化タングステン(タングステンカーバイト)が主原料の合金で作られた切削工具です。
現在、最も多く使用されている材種でさまざまな切削加工に使用されています。
使用上の注意点
超硬合金の密度は鋼の約2倍あり、切削工具の中では最も重い材種です。
太径のエンドミルやドリルは刃先が鋭いこともあり、手を滑らせると手指を深く切ってしまいます。
対切創手袋の着用や保護キャップを着け、注意深く取り扱うことをオススメします。
超硬合金はハイスの2倍以上の硬度がありますが、脆く欠けやすい材種です。
切削工具同士を接触させたり、落下させると欠ける恐れがあります。
超硬合金は鋼ほどではありませんが磁性があります。
磁石に近づけると磁化し、鉄鋼材料の切粉がまとわりつきます。
磁化した場合は脱磁しないと、本来の工具性能が発揮できません。
磁石を近づけないように注意しましょう。
保管方法
切削工具同士が接触すると欠ける恐れがあるため、個々にケースに入れ保管します。
鋼と違って錆びることはありませんが、水分が付着したまま保管するとバインダーのコバルトが抜けてしまい、炭化タングステンが脱落しやすくなります。
バインダーが抜けると工具寿命が低下するため、水分は確実に拭き取りましょう。
他の切削工具同様、磁石の近くで保管しないように注意しましょう。
CBN切削工具の注意点と保管方法

「CBN切削工具」は鉄鋼系材料に使用される切削工具の中で最高硬度を持つ材種です。
硬度が高いことで、超硬切削工具より工具寿命が長くなります。
高硬度焼入れ鋼の切削加工にも対応し、仕上げ工程を研削加工から切削加工に置き換えることも可能です。
使用上の注意点
超硬合金と比較しても硬度が高いことから、工具同士の接触や落下には特に注意しましょう。
CBNは密度が低く軽い材種ですが、一般的に超硬合金を台金とし、刃先にCBN片がロウ付けされていることが多いです。
台金の超硬合金部分が重いため、落下に注意しましょう。
ロウ材は700℃中盤で溶け始めます。
ロウ材の融解を防ぐため、切削温度に注意して加工しましょう。
また、材種によってはコバルトがバインダーに使われています。
コバルトは磁性を持ち、磁化してしまうと鉄鋼材料の切粉がまとわりつきます。
磁化した場合は脱磁しないと、本来の工具性能が発揮できません。
磁石を近づけないように注意しましょう。
高硬度鋼を加工することも多いことから刃先にはネガランドがついていても、手指を切らない様に注意が必要です。
対切創手袋の着用や保護キャップを着け、注意深く取り扱うことをオススメします。
保管方法
切削工具同士が接触すると欠ける恐れがあるため、個々にケースに入れ保管します。
台金には超硬合金が使われています。
水分が付着したまま保管するとバインダーのコバルトが抜けてしまい、炭化タングステンが脱落しやすくなります。
バインダーが抜けると台金強度が低下を引き起こすため、水分は確実に拭き取りましょう。
また、水分や湿気でロウ材が酸化しロウ付け強度が落ちる恐れもあります。
他の切削工具同様、磁石の近くで保管しないように注意しましょう。
PCD切削工具の注意点と保管方法

「PCD切削工具」は切削工具の中で最高硬度の材種です。
PCDとは多結晶ダイヤモンドのことです。
宝石に使われる単結晶ダイヤモンドとは異なり、ダイヤモンドの細かい粉末をコバルトをバインダーとして焼結しています。
鉄との親和性が非常に高く、鉄鋼材料の加工には不向きです。
しかし、アルミや銅など非鉄材料の加工においては、高い仕上げ面品位と、他の材種を超える工具寿命を得られます。
例外的に炭素含有量が極めて高い鉄鋼材料では、炭素(ダイヤモンド)が被削材に染み込まず使用できることもあります。
超硬合金の切削加工が可能で、超硬金型の直彫り加工も行える優れた材種です。
使用上の注意点
最高硬度の材種であることから非常に脆い特徴があります。
工具同士の接触ではもちろん、樹脂のケースやパレットに落下、接触することでも容易に欠けます。
使用直前まで刃先は発泡スチロールやゴムなど、柔らかいもので保護しておきましょう。
PCDは密度が低く軽い材種ですが、一般的に超硬合金を台金とし、刃先にPCD片がロウ付けされていることが多いです。
台金の超硬合金部分が重いため、落下に注意しましょう。
ロウ材は700℃中盤で溶け始めます。
ロウ材の融解を防ぐため、切削温度に注意して加工しましょう。
また、バインダーのコバルトが磁化してしまうと鉄鋼材料の切粉がまとわりつきます。
磁化した場合は脱磁しないと、本来の工具性能が発揮できません。
磁石を近づけないように注意しましょう。
アルミや銅を加工することが多いことから、すくい角や逃げ角が大きく刃先が鋭いです。
対切創手袋の着用や保護キャップを着け、注意深く取り扱うことをオススメします。
保管方法
切削工具同士の接触やケース本体との接触で欠ける恐れがあるため、個々にクッションをひいたケースに裏返しで入れて保管します。
刃先のPCD片、台金の超硬部分にバインダーとしてコバルトが使用されていることが多いです。
水分が付着したまま保管するとバインダーのコバルトが抜けてしまい、PCD、炭化タングステンが脱落しやすくなります。
バインダーが抜けると工具寿命の低下、台金強度の低下を引き起こすため、水分は確実に拭き取りましょう。
また、水分や湿気でロウ材が酸化しロウ付け強度が落ちる恐れもあります。
他の切削工具同様、磁石の近くで保管しないように注意しましょう。
関連記事
ライター・執筆者情報

本記事は切削工具の製造に精通したライター「すなおさん」に執筆いただき、タクミセンパイの服部が編集しました。
私は工具メーカーでの営業とマーケティングの経験を活かし、切削工具と切削加工業界に特化した専門サイト「タクミセンパイ」を2020年から運営しています。
私(服部)の実績や経歴については「運営について」に記載しています。
タクミセンパイとして収集した最新情報をもとに、ここでしか読めない独自視点の記事や調査データを提供しています。
中立的な立場として発信する情報は、読者から「信頼できる」と高い評価を得ています。
メールマガジンのご案内

タクミセンパイでは月に1回メールマガジンを配信しております。
お届けする内容としては下記になります。
・切削工具・切削加工業界の新着オリジナル記事
・切削工具・切削加工業界のオススメ記事
・イベント情報
・会員優先のキャンペーン・イベント情報
ご興味のある方は「メールマガジンのご案内」ページをご確認ください。
会員登録は無料でいつでも退会可能です。