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【2024年】金型業界の今を知る

切削工具と切削加工業界の情報を発信するポータルサイト「タクミセンパイ」をご覧いただきありがとうございます。
当サイトを運営する編集長の服部です。

本記事では「2024年の金型業界」について解説しています。
「金型生産額・数量・単価、需要業界別・型種別・都道府県別の金型生産額、世界の金型生産高、金型の輸出入、金型製造業の事業所数・従業員数」についてまとめています。
2021年に公開した「【2021年】金型業界の今を知る」を最新のデータでアップデートしました。

【記事の信頼性】
本記事を書いた私(服部)は2014年から切削加工業界に携わり、2020年から「タクミセンパイ」を運営しています。

工具メーカーで営業として500社以上の切削工具ユーザー(工作機械で切削加工されている方)に訪問し、技術支援をさせていただきました。
また、マーケティングとして展示会とイベントの企画・運営、カタログとWEBサイトの大型リニューアルプロジェクト、ブランディングプロジェクトを経験しました。

営業とマーケティングの経験をもとに、切削加工業界で働く皆さまに向けて本記事を執筆しています。

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金型業界の今を知る

2024年現在の金型業界を把握するために、下記の情報についてまとめました。

  • 金型生産額・数量・単価
  • 需要業界別の金型生産金額構成
  • 型種別の金型生産額
  • 都道府県別の金型生産額
  • 世界の金型生産高
  • 金型の輸出金額
  • 金型の輸入金額
  • 金型製造業の事業所数・従業員数

金型生産額・数量・単価

金型生産額の推移、金型生産額・数量・単価の変化についてまとめています。

金型生産額の推移(1982-2021)

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製造業事業所調査(旧 工業統計)より作成


上記グラフは、金型生産額の推移(1982年~2021年)をまとめたものです。

日本金型工業会がまとめた、製造業事業所調査(旧 工業統計)および経済センサス(産業編)のデータを利用しています。
(工業統計は2020年に廃止、以降は製造業事業所調査を使用。2011年・2015年・2020年は工業統計調査が実施されなかったため、経済センサス(産業編)を使用)

1991年が金型生産額のピークで、その後二度の下降と上昇を繰り返し、リーマンショックで大ダメージを負いました。
2011年以降、ゆっくりと回復し、横ばい状態となっています。

金型の生産高がピークだった1991年(平成3年)は1兆9,575億円で、2021年は1兆4,004億円であるため、金型生産高は28%減少しています。

金型生産額・数量・単価の変化(2007-2022)

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機械統計(経済産業省)より作成


上記グラフは、金型生産額、数量、単価(金型生産額/数量)の変化(2007年~2022年)をまとめたものです。
機械統計(経済産業省)のデータを利用しています。

数量は2011年以降減少し、金型生産額は微増し横ばいとなっており、単価が上昇しています。
付加価値の高い、複雑化・超精密化した金型の割合が増えていると予想できます。


需要業界別の金型生産金額構成

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日本金型工業会調べより作成


上記グラフは、需要業界別の金型生産金額構成(2022年)をまとめたものです。
日本金型工業会調べのデータを利用しています。

圧倒的に自動車用が多く、70.8%を占めています
今後のEV化の流れがどのように影響するか注目です。

EVの主要な部品であるモーター、バッテリー、電子部品は金型による加工が必要です。
また、外装部品は意匠性の高い金型の需要がこれまで以上にあると予想されています。

電動化で高出力のモーターや電池が必要となり、部品が高精度・微細化します。
そのため、金型加工において高い精度・技術力が求められます。
技術力が求められる微細精密加工分野において、日本の金型加工技術は需要があると考えます。


微細精密金型だけでなく、大型の金型も需要が増えています
EV向けのモーターは大型化しており、金型も大型化しています。

また、アメリカのEVメーカーのテスラが導入して話題となった、車体やバッテリーケースなどを一体鋳造する超大型ダイカスト金型のメガキャスト(ギガキャスト)は、中国でも採用が拡がり、日本の自動車メーカーも採用を発表しています。
メガキャスト(ギガキャスト)の動向は特に金型業界として気になるところです。

型種別の金型生産額

型種別の金型生産額についてまとめています。

型種別の金型生産額(2022年)

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機械統計(経済産業省)より作成


上記グラフは、型種別の金型生産額(2022年)をまとめたものです。
機械統計(経済産業省)のデータを利用しています。

プレス型が最も多く42%、次いでプラスチック型が37%を占めています。

最も多くを占めているプレス型ですが、自動車のEV化による影響は大きいと予想されています。
トヨタ自動車が発表したメガキャスト(ギガキャスト)は、177個の鋼板のプレス部品が2個の部品に置き換えられるとされています。
メガキャスト(ギガキャスト)が主流になると、プレス型は大きく減少することが予想できます。

型種別の金型生産額 2022年・2020年・2007年比較

型種別の金型生産額の変化(2022年・2020年・2007年)をまとめたものが下記です。
機械統計(経済産業省)のデータを利用しています。

2022年2020年2007年
プレス型1,487億円1531億円1,945億円
プラスチック型1,312億円1,272億円1,791億円
ダイカスト型374億円389億円483億円
鍛造型194億円175億円205億円
ゴム型74億円76億円120億円
鋳造型45億円59億円136億円
粉末冶金型44億円57億円78億円
ガラス型25億円26億円45億円
合計3,584億円3,584億円4,804億円


プレス型生産額について、2022年2007年と比較して24%減少しています。
プラスチック型生産額について、2022年は2007年と比較して27%減少しています。

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機械統計(掲載産業省)より作成


上記グラフは、型種別の金型生産額の変化(2022年・2020年・2007年)をまとめたものです。
機械統計(経済産業省)のデータを利用しています。

都道府県別の金型生産額

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製造業事業所調査(旧 工業統計)より作成


上記グラフは、都道府県別の金型生産額の上位5県(2021年)をまとめたものです。
製造業事業所調査(旧 工業統計)のデータを利用しています。

愛知県が圧倒的に金型の生産額が大きく、2位の大阪の2倍以上あります。
また、プレス型とプラスチック型は他県と比較して生産額が最も大きくなっています。

世界の金型生産高

世界の金型生産高についてまとめています。

世界の金型生産高(2021年)

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ISTMA Statistical Book 2021より作成


上記グラフは、世界の金型生産高(2021年)をまとめたものです。
ISTMA Statistical Book 2021のデータを利用しています。

世界の金型生産高上位は中国、アメリカ、日本、韓国、ドイツとなっています。
1位の中国は日本の約3.3倍の生産高です。

世界の金型生産高 2021年・2019年比較

世界の金型生産高(2021年・2019年)をまとめたものが下記です
ISTMA Statistical Book 2021および2019のデータを利用しています。

2021年2019年
中国50,526億円39,394億円
アメリカ16,367億円21,047億円
日本15,438億円14,752億円
韓国8,037億円6,955億円
ドイツ5,807億円6,239億円
その他11,060億円11,091億円
合計107,235億円99,478億円


世界の金型生産高合計について、2021年は2019年と比較して8%増加しています。
中国の金型生産髙について、2021年は2019年と比較して28%増加し、大きく成長しています。

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ISTMA Statistical Book 2019および2021より作成


上記グラフは、世界の金型生産高の変化(2021年・2019年)をまとめたものです。
ISTMA Statistical Book 2019および2021のデータを利用しています。

金型の輸出金額

金型の輸出金額についてまとめています。

金型の輸出金額(2022年)

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貿易統計(財務省)より作成


上記グラフは、日本の金型輸出金額(2022年)をまとめたものです。
貿易統計(財務省)のデータを利用しています。

日本の金型輸出金額上位はアメリカ、中国、タイ、メキシコ、インドネシアとなっています。
日本は世界の金型生産高1位の中国と2位のアメリカに対して、輸出しています。

金型の輸出金額 2022年・2020年比較

日本の金型輸出金額の変化(2022年・2020年)をまとめたものが下記です。
貿易統計(財務省)のデータを利用しています。

2022年2020年
アメリカ605億円646億円
中国326億円443億円
タイ252億円275億円
メキシコ174億円157億円
インドネシア159億円108億円
インド91億円67億円
ベトナム90億円89億円
その他198億円165億円
合計2,152億円2,272億円


日本の金型輸出金額合計について、2022年は2020年と比較して5%減少しています。
中国に対する金型輸出金額について、2022年は2020年と比較して26%減少しています。

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貿易統計(財務省)より作成


上記グラフは、日本の金型輸出金額の変化(2022年・2020年)をまとめたものです。
貿易統計(財務省)のデータを利用しています。

金型の輸入金額

金型の輸入金額についてまとめています。

金型の輸入金額(2022年)

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貿易統計(財務省)より作成


上記グラフは、日本の金型輸入金額(2022年)をまとめたものです。
貿易統計(財務省)のデータを利用しています。

日本の金型輸入金額上位は中国、韓国、タイとなっています。
日本は世界の金型生産高1位の中国から輸入しています。


金型の輸入金額 2022年・2020年比較

日本の金型輸入金額の変化(2022年・2020年)をまとめたものが下記です。
貿易統計(財務省)のデータを利用しています。

2022年2020年
中国679億円512億円
韓国398億円396億円
タイ82億円73億円
その他177億円164億円
合計1,336億円1,144億円


日本の金型輸入金額合計について、2022年は2020年と比較して17%増加しています。
中国からの金型輸入金額について、2022年は2020年と比較して33%増加しています。

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貿易統計(財務省)より作成


上記グラフは、日本の金型輸入金額の変化(2022年・2020年)をまとめたものです。
貿易統計(財務省)のデータを利用しています。

金型製造業の事業所数・従業員数

金型製造業の事業所数と従業員数についてまとめています。

金型製造業の事業所数・従業員数推移(1986-2021)

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製造業事業所調査(旧 工業統計)および経済センサスより作成


上記グラフは、金型製造業の事業所・従業員数の推移(1986年~2021年)をまとめたものです。

日本金型工業会がまとめた、製造業事業所調査(旧 工業統計)および経済センサス(産業編)のデータを利用しています。
(工業統計は2020年に廃止、以降は製造業事業所調査を使用。2011年・2015年・2020年は工業統計調査が実施されなかったため、経済センサス(産業編)を使用)

事業所数と従業員数はともに減少しています。
2021年は1986年と比較して、事業所数が64%減少、従業員数が27%減少しています。
事業所数の減少が従業員数より大きい理由は、金型製造業は従業員数9名以下の企業が6割、19名以下の企業が8割を占めているからです。

労働人口と金型製造業の従業員数推移(1986-2021)

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労働力調査および製造業事業所調査(旧 工業統計)および経済センサスより作成


上記グラフは、労働人口と金型製造業の従業員数の推移(1986年~2021年)をまとめたものです。

総務省統計局が実施する労働力調査と、日本金型工業会がまとめた製造業事業所調査(旧 工業統計)および経済センサス(産業編)のデータを利用しています。

労働力人口とは、15歳以上人口のうち、就業者と完全失業者を合わせた人口のことです。
日本の人口が減少する中、労働力人口が増加しているのは、専業主婦などの女性や高齢者の労働参加が進んだことが大きく影響しています。

労働人口について、2021年は1986年と比較して15%増加しています。
金型製造業の従業員数について、2021年は1986年と比較して27%減少しています。
つまり、労働人口は増加しているものの、金型製造業の従業員数は減少している現状がわかります。

金型製造業の事業所数 従業員規模(2021年)

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製造業事業所調査(旧 工業統計)および経済センサスより作成


上記グラフは、金型製造業の事業所数 従業員規模(2021年)をまとめたものです。
日本金型工業会がまとめた、製造業事業所調査(旧 工業統計)および経済センサス(産業編)のデータを利用しています。

9人以下の事業所が60%を占めています。

金型製造業の事業所数 従業員規模 2021年・2019年・2002年比較

金型製造業の事業所数 従業員規模の変化(2021年・2019年・2002年)をまとめたものが下記です。
日本金型工業会がまとめた、製造業事業所調査(旧 工業統計)および経済センサス(産業編)のデータを利用しています。

2021年2019年2002年
9人以下2,629所4,803所9,037所
10人~19人813所938所1,241所
20人~29人377所391所511所
30人~99人443所476所481所
100人以上95所88所82所
合計4,357所6,696所11,352所


事業所数合計について、2021年は2002年と比較して62%減少しています。
「9人以下」の事業所について、2021年は2002年と比較して71%減少しています。

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製造業事業所調査(旧 工業統計)および経済センサスより作成


上記グラフは、金型製造業の事業所数 従業員規模の変化(2021年・2019年・2002年)をまとめたものです。
日本金型工業会がまとめた、製造業事業所調査(旧 工業統計)および経済センサス(産業編)のデータを利用しています。

まとめ

  • 1991年が金型生産額のピークで、その後二度の下降と上昇を繰り返し、リーマンショックで大ダメージを負う。2011年以降、ゆっくりと回復し、横ばい状態
  • 金型生産高について、2021年は1991年と比較して28%減少
  • 金型数量は2011年以降減少し、金型生産額は微増し横ばいとなっており、単価が上昇。付加価値の高い、複雑化・超精密化した金型の割合が増えていると予想
  • 需要業界別の金型生産金額構成(2022年)について、圧倒的に自動車用が多く、70.8%を占めている。EV化、メガキャスト(ギガキャスト)の動向に注目
  • 型種別の金型生産額(2022年)について、プレス型が最も多く42%、次いでプラスチック型が37%を占めている。こちらもEV化、メガキャスト(ギガキャスト)の動向に注目
  • プレス型生産額について、2022年は2007年と比較して24%減少。プラスチック型生産額について、2022年は2007年と比較して27%減少
  • 都道府県別の金型生産額の上位5県(2021年)について、愛知県が圧倒的に金型の生産額が大きく、2位の大阪の2倍以上
  • 世界の金型生産高(2021年)について、上位は中国、アメリカ、日本、韓国、ドイツ。1位の中国は日本の約3.3倍
  • 世界の金型生産高合計について、2021年は2019年と比較して8%増加。中国の金型生産髙について、2021年は2019年と比較して28%増加
  • 日本の金型輸出金額(2022年)について、上位はアメリカ、中国、タイ、メキシコ、インドネシア
  • 日本の金型輸出金額合計について、2022年は2020年と比較して5%減少。中国に対する金型輸出金額について、2022年は2020年と比較して26%減少
  • 日本の金型輸入金額(2022年)について、上位は中国、韓国、タイ
  • 日本の金型輸入金額合計について、2022年は2020年と比較して17%増加。中国からの金型輸入金額について、2022年は2020年と比較して33%増加
  • 金型製造業の事業所・従業員数の推移(1986年~2021年)について、事業所数と従業員数はともに減少。2021年は1986年と比較して、事業所数が64%減少、従業員数が27%減少
  • 労働人口について、2021年は1986年と比較して15%増加。金型製造業の従業員数について、2021年は1986年と比較して27%減少。つまり、労働人口は増加しているものの、金型製造業の従業員数は減少
  • 金型製造業の事業所数 従業員規模(2021年)について、9人以下の事業所が60%を占めている
  • 金型製造業の事業所数 従業員規模の変化(2021年・2019年・2002年)について、事業所数合計について、2021年は2002年と比較して62%減少。「9人以下」の事業所について、2021年は2002年と比較して71%減少

編集長コメント

「【2024年】金型業界の今を知る」いかがでしたか。

切削加工業界としても重要な産業「金型」について、最新データをまとめてみました。
データから感じることは、金型は非常に厳しい状況であるということ。

金型数量と金型生産額が減少する一方で単価が上昇していることについて、付加価値の高い、複雑化・超精密化した金型の割合が増えていると予想しました。
もちろんそれもあるとは思いますが、今まで安価で提供していた企業が減ったことも考えられるのではないかと思いました。

金型製造業の事業所も従業員も減ってはいますが、残った企業が利益率の高い仕事を受注できることをまずは目指すべきであると考えました。

EV化、メガキャスト(ギガキャスト)の登場は金型業界に対する影響が大きいと考え、引き続き動向を把握する必要があります。

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