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「切削工具の情報サイト タクミセンパイ」を運営する、編集長の服部です。
本記事では「NC工作機械で金属を切削加工している人数」を算出してみました。
「日本の切削加工業界の人口・規模、NC工作機械で金属を切削加工している人数」について理解が深まる記事を目指して執筆しました。
【記事の信頼性】
本記事を書いた私は、2014年から切削加工業界に携わり、2020年から「切削工具の情報サイト タクミセンパイ」を運営しています。
工具メーカーで営業として500社以上の切削加工ユーザーに訪問し、技術支援をさせていただきました。
また、マーケティングとして展示会とイベントの企画・運営、カタログとWEBサイトの大型リニューアルプロジェクト、ブランディングプロジェクトを経験しました。
営業とマーケティングの経験をもとに、切削加工業界で働く皆さまに向けて本記事を執筆しています。


NC工作機械で金属を切削加工している人数を予測
NC工作機械で金属を切削加工している人(オペレーター)の人数を公開されているデータを組み合わせ算出してみました。
算出にあたり下記のデータを利用しました。
- 国勢調査
- 経済産業省 生産動態統計
算出の前提
工作機械にはNC工作機械と汎用工作機械がありますが、今回はNC工作機械に限定しています。
また、工作機械の中でも金属工作機械に限定しています。
金属工作機械には研削盤や専用機が含まれていますが、切削加工している人数を算出するために、マシニングセンタおよびNC旋盤に限定しています。
切削工具を使う専用機もありますが、定義があいまいであるため、今回は除外しました。
国勢調査から求める

NC工作機械(マシニングセンタもしくはNC旋盤)で金属を切削加工しているオペレーターを算出するために、国勢調査のデータを利用しました。
国勢調査とは
国勢調査とは、日本に住んでいるすべての人および世帯を対象とする国の最も重要な統計調査で、国内の人口や世帯の実態を明らかにするため、5年ごとに行われています。
国勢調査から得られる様々な統計は、国や地方公共団体の政治・行政で広く利用されるだけでなく、民間企業や研究機関などでも経営や研究などの基礎データとして幅広い用途に利用されています。(総務省統計局より)
皆さんも5年に1度回答されている国勢調査に、実はNC工作機械(マシニングセンタもしくはNC旋盤)で金属を切削加工しているオペレーターに関する情報がありました。
国勢調査の中で対象となる統計データ
記事作成にあたり、国勢調査の中から「平成27年国勢調査(2015年)」を利用しました。
記事作成時点では、令和2年(2020年)の結果がまだ公表されていなかったため、平成27年(2015年)のデータを使っています。
国勢調査の中から、NC工作機械(マシニングセンタもしくはNC旋盤)で金属を切削加工しているオペレーターを算出するにあたり、下記のデータを利用しました。
抽出詳細集計
└ 抽出詳細集計結果
└抽出詳細集計(就業者の産業(小分類)・職業(小分類)など)
└ 10 就業上の地位(8区分), 職業(小分類), 男女別15歳以上就業者数 – 全国
「10 就業上の地位(8区分), 職業(小分類), 男女別15歳以上就業者数 – 全国」の中に、「49d 金属工作機械作業従事者」という選択肢があり、こちらが生産工程で金属工作機械を使用する人です。
平成27年(2015年)の人数が下記となります。
国税調査 分類 | 人数 |
総数(職業小分類) | 58,890,810人 |
└ H 生産工程従事者 | 7,679,870人 |
└ 49 製品製造・加工処理従事者(金属製品) | 1,149,350人 |
└ 49d 金属工作機械作業従事者 | 161,930人 |
生産工程で金属工作機械を使用するオペレーターが約16万人いることがわかりました。
前述した通り、金属工作機械の定義には研削盤や専用機が含まれているため、「49d 金属工作機械作業従事者」から、マシニングセンタもしくはNC旋盤を使用するオペレーター数を算出する必要があります。
経済産業省 生産動態統計の活用
「49d 金属工作機械作業従事者」約16万人から、マシニングセンタもしくはNC旋盤を使用するオペレーター数を算出するために、経済産業省 生産動態統計を利用しました。
「経済産業省 生産動態統計年報 機械統計編」で、マシニングセンタとNC旋盤の年間の生産台数を確認することができます。
金属工作機械の生産台数全体の中でマシニングセンタとNC旋盤が占める割合を使うことで、目的の数値を算出してみたいと思います。
2016~2020年 5年間の生産台数の平均から、金属工作機械全体でマシニングセンタとNC旋盤が占める割合が下記の数値です。
生産動態統計 分類 | 年間生産台数(5年平均) | 割合 |
金属工作機械 | 69,849台 | |
└ マシニングセンタ | 31,229台 | 45% |
└ NC旋盤 | 15,529台 | 22% |
マシニングセンタとNC旋盤の生産台数を合算すると、金属工作機械の生産数量全体の67%を占めていることがわかりました。
「49d 金属工作機械作業従事者」約16万人のうち、67%がマシニングセンタもしくはNC旋盤を使用していると仮定して算出すると108,493人でした。
つまり、NC工作機械(マシニングセンタもしくはNC旋盤)で金属を切削加工しているオペレーターは約10万人いる予想することができます。
ちなみに同じ計算方法で、マシニングセンタを使用するオペレーターが72,869人、NC旋盤を使用するオペレーターが35,624人と予測できます。
工作機械 種類 | 想定オペレーター数 |
マシニングセンタ | 72,869人 |
NC旋盤 | 35,624人 |
合計 | 108,493人 |
10万人に違和感がないか
NC工作機械(マシニングセンタもしくはNC旋盤)で金属を切削加工しているオペレーターの10万人という予想結果について、この数値に違和感がないか別のデータを使って確認してみました。
使用したのはJIMTOF2018の来場者データです。
JIMTOFは2年に1回開催される、世界四大工作機械見本市で、国内の切削加工業界の方が最も参加する展示会です。

JIMTOF2018は2018年11月1日(木)~11月6日(火)の6日間開催され、国内・海外合算の来場者数は188,955人と公表されています。
ユーザー数の算出
来場ユーザー数は、業種別カテゴリーから確認できます。

JIMTOF2018に参加した製造業のユーザー数(国内)は、上記グラフより105,030人であることがわかりました。
ただ、この中には生産工程に携わっていない職種の方(例えば営業や事務など)も含まれています。
職種
生産工程に携わっている人を算出するために、来場者の職種を利用します。
(こちらは単一回答です)

NC工作機械(マシニングセンタもしくはNC旋盤)で金属を切削加工しているオペレーターは、上記グラフの生産・製造に属していると考えられます。
生産・製造を職種とする人(国内)は、上記グラフより全体の22.9%であることがわかりました。
ユーザー数×職種
製造業のユーザーの数(国内)105,030人に、生産・製造を職種とする人(国内)の割合22.9%をかけると、24,052人という数字が出ました。
NC工作機械(マシニングセンタもしくはNC旋盤)で金属を切削加工しているオペレーターが10万人いるという予想結果が出ています。
そのため、JIMTOF2018にNC工作機械(マシニングセンタもしくはNC旋盤)で金属を切削加工しているオペレーターの約4人に1人が来場していることになります。(24,052人/108,493人)
この結果に関して、バリ取り工具メーカーの営業としてJIMTOFに参加された切削加工ユーザーの方と会話した感覚から、そこまで違和感のない数値だなと思いました。
会社の立地や規模、部署の役割によって異なりますが、会社から5~10人に1人くらいがJIMTOFに参加している感覚があったため、4人に1人という結果に違和感はありません。
そのため、NC工作機械(マシニングセンタもしくはNC旋盤)で金属を切削加工しているオペレーターが10万人いるという予想は、それなりに当たっているのでないかと考えます。
まとめ
- 平成27年国勢調査(2015年)のデータから、生産工程で金属工作機械を使用するオペレーターが約16万人いることがわかった
- 経済産業省 生産動態統計年報 機械統計編のマシニングセンタとNC旋盤の年間の生産台数から、NC工作機械(マシニングセンタもしくはNC旋盤)で金属を切削加工しているオペレーターの数が約10万人いると予想した
編集長コメント
「NC工作機械で金属を切削加工している人数を予測」いかがでしたか。
10万人という予測に対する業界関係者の反応、また10万人を裏付ける追加情報を「NC工作機械で金属を切削加工している人数=10万人説に対する反応」で公開していますので、あわせてご確認ください。
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