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【オススメの切削工具とは】日本産機新聞の特集「良い工具」が熱い

切削工具と切削加工業界の情報を発信するポータルサイト「タクミセンパイ」をご覧いただきありがとうございます。
当サイトを運営する編集長の服部です。

本記事では「日本産機新聞2021年2月20日号の特集 良い工具」について紹介しています。
「切削工具ユーザー(工作機械で切削加工されている方)とメーカーがオススメする良い切削工具」について理解が深まる記事を目指して執筆しました。

【記事の信頼性】
本記事を書いた私(服部)は2014年から切削加工業界に携わり、2020年から「タクミセンパイ」を運営しています。

工具メーカーで営業として500社以上の切削工具ユーザー(工作機械で切削加工されている方)に訪問し、技術支援をさせていただきました。
また、マーケティングとして展示会とイベントの企画・運営、カタログとWEBサイトの大型リニューアルプロジェクト、ブランディングプロジェクトを経験しました。

営業とマーケティングの経験をもとに、切削加工業界で働く皆さまに向けて本記事を執筆しています。

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日本産機新聞の特集「良い工具」が熱い

日本産機新聞2021年2月20日号で「特集 良い工具」を取り上げた背景を説明します。

「良い工具とは?」と聞かれて、皆さんはどのような工具を想像されますか。
長寿命、コストパフォーマンスが高い、バリが発生しにくい、などでしょうか。

「特集 良い工具」では、切削工具ユーザー(工作機械で切削加工されている方)代表としてトヨタ自動車が、切削工具メーカー代表として7社が「良い工具」の条件を表現されています。

切削工具メーカーの「良い工具」の条件は、ブランドメッセージに近いものを感じ、ぜひ皆さんにも知ってほしいと思って今回の記事を書かせていただきました。

日本産機新聞について

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日本産機新聞は、1970年(昭和45年)に創刊された新聞です。
発行部数は日本国内で12,500部、ブランケット版(406×545ミリサイズ)で販売されています。

第二次産業部門の中核である機械工業の振興を目的に、機械・工具業界の流通専門紙として誕生しています。

流通専門紙というのが特徴で、機械工具販売店をターゲットとした切削加工業界で唯一の専門媒体になります。

機械・工具業界のニュース、業界動向や市場規模などの情報をタイムリーに提供し、ユーザー・メーカー・機械工具販売店の声と思いを紙面に反映しています。

その他にも、機械・工具業界の展示会情報も掲載しています。

JIMTOFやMECT、インターモールドでは、ポケットガイドブックを発行されています。
会場で一度は手に取ったことがあるのではないでしょうか。

切削工具ユーザーが考える「良い工具」

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切削工具ユーザー代表はトヨタ自動車です。

トヨタ自動車の中でも、5000種類の工具を所有し、工具開発も自ら行っているモノづくりエンジニアリング部に対して、「良い工具」とはどんなものか取材されています。

トヨタ自動車が考える「良い工具」とは

まず、市販されている汎用的な工具と、特殊な工具によって、定義は異なると思います。汎用的な工具でいい工具とは、「生涯寿命が長い工具」です。イニシャルコストが安いだけでは意味がないし、単にランニングコストが良ければいいということでもありません。再研磨、再コーティングを含め、その工具がどれだけ稼げたかということです。特に当社は大量に工具を使うので、生涯寿命の長い工具が多いほど、コストメリットが大きくなります。

出典:日本産機新聞 2月20日号 「特集 良い工具」 トヨタ自動車 ものづくりエンジニア部 課長 中山貴司様 取材


特殊工具でいい工具とは

「ダントツ性能を持った工具」でしょうか。分かりやすく言うと、特長が圧倒的に分かりやすい工具です。特別な材質に強いとか、平面加工の面が極端にきれいに仕上がるとか。こうした工具だけを作っていては、工具メーカーの収益に大きく貢献できないことは分かります。しかし、工具に関する知見の高いメーカーが作った尖った工具があればテストしたくなりますね。

出典:日本産機新聞 2月20日号 「特集 良い工具」 トヨタ自動車 ものづくりエンジニア部 課長 中山貴司様 取材


産機新聞のWEB版でトヨタ自動車のインタビュー原文を確認することができます。

切削工具ユーザーが考える「良い工具」まとめ

汎用的な工具については、再研磨・再コーティングを含めて生涯寿命が長い、コストメリットの高いものを「良い工具」とされています。

イニシャルコストだけではなく、再研磨・再コーティングまで含んで考えられているのがポイントですね。
タクミセンパイでは、再研磨・再コーティングの会社を掲載していますが、私が調べた範囲で50社以上存在しており、コストメリットを考える上で重要な存在であることがわかります。

特殊工具については、特長がわかりやすい、尖った工具を「良い工具」とされています。
工具メーカーとしては、特長をしっかり切削工具ユーザーに伝える必要があると感じました。

切削工具メーカーが考える「良い工具」

Milling,Tools,In,Cnc,Machine,Chop


切削工具メーカーを代表する9社が考える「良い工具」について紹介します。

日本のメーカーだけではなく、海外メーカー(の日本法人)の意見もあるので、幅広い考え方を知ることができます。

イスカルジャパンが考える「良い工具」とは

「勝てる工具」だと思う。顧客はライバルに対して、勝っていかなくてはならない。それを支援できる工具がいい工具だと思う。勝つための要素は、生産性、品質など顧客によって異なるので、新シリーズの技術をベースに、特殊品による個別対応も強化していく。

出典:日本産機新聞 2月20日号 「特集 良い工具」 イスカルジャパン マーケテイング本部穴明製品 プロダクトマネージャー 長竹誉志様 取材


補足情報

機械と工具 2021年3月号の「特集 コスト削減を実現する最新切削工具」の中 で、イスカルジャパンはインダストリー4.0時代にふさわしい工具の開発テーマを下記のように表現されています。

  1.  高い生産性(高い送り)
  2.  安定性(安定した寿命)
  3. (刃先交換の)クイックチェンジ


産機新聞のWEB版でイスカルジャパンのインタビュー原文を確認することができます。

イワタツールが考える「良い工具」の条件とは

工具の評価基準は精度や寿命など様々あるが、どれかの性能で世界トップだといえる工具開発が役割であると捉えている。そのため、たくさん売れる工具を作るのではなく、ピンポイント市場を狙う。それが当社の強みであり、性能も一切妥協しない。

出典:日本産機新聞 2月20日号 「特集良い工具」イワタツール 社長 岩田昌尚様 取材


産機新聞のWEB版でイワタツールのインタビュー原文を確認することができます。

オーエスジーが考える「良い工具」とは

ファーストチョイスされる工具。切削条件を深く追求しなくてもちゃんと加工ができるという「安心感」を提供できる工具だ。「Aブランド」は、対応被削材が広く専用工具とまでは行かないまでも良い加工ができる。

出典:日本産機新聞 2月20日号 「特集良い工具」 オーエスジー デザインセンター 次長 兼 開発グループ 課長 辻村桂司様 取材


産機新聞のWEB版でオーエスジーのインタビュー原文を確認することができます。

サンドビックが考える「良い工具」とは

ニーズも多様化する中、トラブルがなく、いかに販売店が売りやすい工具を開発できるかだと思う。高い汎用性と高精度の両立が必要で、超硬ソリッドエンドミル「CoroMill Plura HD」もその1つ。そこに、WEB活用などサービスの拡充が「いい工具」の条件に含まれるだろう。

出典:日本産機新聞 2月20日号 「特集良い工具」 サンドビック ソリッドツール推進部 テクニカルスペシャリスト 鎔均様 取材


産機新聞のWEB版でサンドビックのインタビュー原文を確認することができます。

ダイジェット工業が考える「良い工具」とは

それはやはり、ユーザーが求める工具。ニーズを想定してプロダクトアウトでつくるのではなく、加工現場の現実の課題をキャッチアップし、それを解決する。それが良い工具だと思う。

出典:日本産機新聞 2月20日号 「特集良い工具」 ダイジェット工業 営業企画室 室長 有吉倉則様 取材


産機新聞のWEB版でダイジェット工業のインタビュー原文を確認することができます。

田野井製作所が考える「良い工具」とは

ユーザーの課題を解決する工具だと考える。メーカーは一人よがりにならず、ユーザーが抱える一つひとつの課題に向き合い、いかに喜んでもらえる工具を作れるかが大事。今後はそれだけでなく、そこで生み出された技術を他のユーザーにも展開できるように意識しながら開発に取り組んでいきたい。

出典:日本産機新聞 2月20日号 「特集良い工具」 田野井製作所 ミヤギタノイ 技術部長 久保武史様 取材


産機新聞のWEB版で田野井製作所のインタビュー原文を確認することができます。

タンガロイが考える「良い工具」とは

「いい」定義は人や場面で異なる。自動化を進めるユーザーは安定性が必要で、労働時間短縮を求めるなら生産性が高く早く加工が終わる工具がいい。工具管理者は集約できるのがいい工具だ。こうした多様性に応えることが「いい」メーカーだと思う。そのために、新製品を増やしていくし、今後も開発を止めない。

出典:日本産機新聞 2月20日号 「特集良い工具」 タンガロイ 執行役員 最高技術責任者 川口達也様 取材


産機新聞のWEB版でタンガロイのインタビュー原文を確認することができます。

不二越が考える「良い工具」とは

汎用工具では1本で何でもできる工具。専門的な工具では用途に合わせてダントツの性能を持つのがいい工具だと思う。ただ、両者の融合も必要だ。例えば、「HyperZタップ」は、ジェットエンジン向けの専用工具として開発したものをチタン合金用として汎用化した。逆のケースもあり、アクアREVOブランドで開発した技術をニーズに合わせ専用化させていきたい。

出典:日本産機新聞 2月20日号 「特集良い工具」 不二越 工具事業部技術部部長 干場俊洋様 取材


産機新聞のWEB版で不二越のインタビュー原文を確認することができます。

三菱マテリアルが考える「良い工具」とは

「安心して使ってもらえる工具」だと考える。突発的な欠損が無く、寿命もばらつかない。そんな工具が「いい工具」ではないか。そのためにコーティングや素材、形状の開発に取り組んでいる。

出典:日本産機新聞 2月20日号 「特集良い工具」 三菱マテリアル 加工事業カンパニー 開発本部長 大橋忠一様 取材


産機新聞のWEB版で三菱マテリアルのインタビュー原文を確認することができます。

切削工具メーカーの「良い工具」の条件を分類

切削工具メーカーの「良い工具」の条件を私なりに分類した結果、5つにわけることができました。

  • 顧客にとって最適な工具であること
  • ある分野においてトップの性能を発揮できる工具であること
  • 安心して選択できる工具であること
  • 機械工具販売店にとって売りやすい工具であること
  • (汎用工具において)なんでもできる工具であること


それぞれ詳しく確認していきたいと思います。

顧客にとって最適な工具であること

こちらはイスカルジャパン、ダイジェット工業、田野井製作所、タンガロイ、不二越が該当した「良い工具」の条件です。

該当するメーカーが最も多かった条件になります。

切削工具ユーザー(工作機械で切削加工されている方)によって求める条件が異なるという前提で、生産性なのか、品質なのか、それぞれに最適な工具を提供しようという考えです。

ある分野においてトップの性能を発揮できる工具であること

こちらはイワタツールが該当した「良い工具」の条件です。

トヨタ自動車の「ダントツ性能を持った工具」とかなり近い表現で、特長が圧倒的に分かりやすいことでテストしたくなるというものです。

ニッチのトップを狙う戦略においては重要な戦略となります。

安心して選択できる工具であること

こちらはオーエスジー、三菱マテリアル、サンドビックが該当した「良い工具」の条件です。

該当するメーカーが2番目に多かった条件になります。

最初に選んでもらえるメーカーとは、ユーザーファーストであり、かつブランディングにおいても非常に優位であることから理想形といえます。

販売店にとって売りやすい工具であること

こちらはサンドビックが該当した「良い工具」の条件です。

この意見は、機械工具販売店向けの媒体である日本産機新聞であるがゆえの意見ということも考えられますが、切削工具は販売店を通じて流通することが多いため、いかに売ってもらうかを考える上で重要な意見だと感じました。

営業・マーケティングとして達成してほしい条件であるといえます。

(汎用工具において)なんでもできる工具

こちらは汎用工具において不二越が該当した「良い工具」の条件です。

「ある分野においてトップの性能を発揮できる工具であること」の条件と逆の条件になりますが、専門工具ではなく汎用工具においては、非常に重要な要素です。

ATCに取り付けられる工具本数の制限や、工具交換にかかる時間を考えると、1本で複数のことができる汎用性の高い工具も「良い工具」といえると思います。

まとめ

  • 切削工具ユーザー(トヨタ自動車)が考える汎用的な「良い工具」の条件は、再研磨・再コーティングを含めて生涯寿命が長いこと
  • 切削工具ユーザー(トヨタ自動車)が考える特殊な「良い工具」の条件は、特長がわかりやすく、尖っていてテストしたくなること
  • メーカー(イスカルジャパン、ダイジェット工業、田野井製作所、タンガロイ、不二越が考える「良い工具」の条件の1つが、顧客にとって最適な工具であること
  • メーカー(イワタツール)が考える「良い工具」の条件の1つが、ある分野においてトップの性能を発揮できる工具であること
  • メーカー(オーエスジー、三菱マテリアル、サンドビック)が考える「良い工具」の条件の1つが、安心して選択できる工具であること
  • メーカー(サンドビック)が考える「良い工具」の条件の1つが、機械工具販売店にとって売りやすい工具であること
  • メーカー(不二越)が考える「良い工具」の条件の1つが、(汎用工具において)なんでもできる工具であること

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