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プラモデルの企画開発体験ミュージアムで金型を見て学ぶ

プラモデルの企画開発体験ミュージアム BHC PDII MUSEUMをご存じですか

この記事を書いた私は工具メーカーでの営業・マーケティングの経験を活かし、切削工具と切削加工業界に特化した専門サイト「タクミセンパイ」を2020年から運営しています。
切削工具が使われる対象として金型があり、金型から生まれる製品としてプラモデルがあるため、プラモデルの企画開発体験ミュージアムを通じて金型を紹介できないかと考えて本記事を執筆しました。

本記事ではBHC PDII MUSEUMに訪問し、プラモデルの企画開発体験ミュージアムで見て学ぶことができる金型の情報をまとめています。
この記事を読むことで、金型の常設展示施設としてのBHC PDII MUSEUMの魅力を知ることができます

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金型を見て学ぶことができるBHC PDII MUSEUMとは

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金型を見て学ぶことができるのはプラモデルの企画開発体験ミュージアム BHC PDII MUSEUMです。

BHC PDII MUSEUMの正式名称は「BANDAI HOBBY CENTER PLAMO DESIGN INDUSTRIAL INSTITUTE MUSEUM(バンダイホビーセンター プラモデザインインダストリアルインスティチュートミュージアム)」です。

BHC PDII MUSEUMはバンダイホビーセンターの挑戦、そしてBANDAI SPIRITSのプラモデルの進化と挑戦の過程を見ることができ、学びと体験によってプラモの新たな一面を感じることができる施設になっています。
INSTITUTEとは研究所という意味で、工場の従業員一人ひとりが専門性を深め、成功事例やナレッジを横展開してさらに生産量を上げていくといった想いが込められています。

プラモデルの常設展示施設はほとんど存在せず、さらにBHC PDII MUSEUMでは金型の実物や金型に関する資料を見ることができるため、貴重な施設になっています。
BHC PDII MUSEUMはプラモデルのミュージアムではありますが、本記事では金型に注目してこの施設を紹介しています。

BHC PDII MUSEUMの概要について下記にまとめています。

施設名BHC PDII MUSEUM
運営会社株式会社BANDAI SPIRITS
所在地〒420-0813
静岡県静岡市葵区長沼500-15 バンダイホビーセンター新工場2階・3階
アクセス方法長沼駅より徒歩3分(静岡鉄道)
東静岡駅より徒歩8分(JR東海道線)
・電車やバスなどの公共交通機関の利用が推奨されています
・来場者向けの駐車場・駐輪場はありません
開館日2025年9月2日
営業時間9:00~17:30
日曜日・月曜日・祝日・年末年始・その他会社指定日は休館
チケット購入方法事前予約制
・チケットは抽選での販売
・抽選は1か月ごとに行われ、毎月1日0時より来場3か月前の受付を開始
・抽選申込・購入にはプレミアムバンダイ会員登録(無料)が必要
入場料大人(13歳以上):2,860円 (税10%込)
小人:1,100円 (税10%込)
未就学児:無料
公式サイトBHC PDII MUSEUM公式サイト


BHC PDII MUSEUM入場当日はスマートフォンまたはタブレット端末上での「二次元コード」の表示と「本人確認書類」が必要となっています。
「二次元コード」の準備と「本人確認書類」の持参を忘れずに参加しましょう。

BHC PDII MUSEUMの開館に合わせて、最寄駅の長沼駅に「バンダイホビーセンター前」の副駅名が付きました。

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BHC PDII MUSEUMのすぐ近くにはバンダイホビーセンターがありますが、こちらは見学不可な施設となります。

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BHC PDII MUSEUM入口から見えるシャッターがAランナー・Bランナーデザインとなっており、遊び心があります。

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プラモデルの企画開発体験ミュージアムで金型を見て学ぶ

プラモデルの企画開発体験ミュージアム BHC PDII MUSEUMで見て学ぶことができる金型の情報を紹介していきます。

見学ルートに沿って、マニアックな部分も含めて気になるポイントを紹介していきます。

また、エリアごとの見学可能な時間制限など注意点もあるので記載しています。

1.入口のガンプラモニュメント

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BHC PDII MUSEUM入口では、実物大ガンダムサイズのガンプラモニュメント(頭部モデル)を見ることができます。
実物サイズというのはテンションが上がります。

タイトルに「金型を見て学ぶ」と書いておきながら、いきなり妄想からスタートしますが、実物大ガンダムサイズのプラモデルに必要な金型の大きさをイメージすることでワクワクします。

ガンプラモニュメントの裏側にも説明文があるため、こちらも忘れずにチェックしておきましょう。
階段の中段以降は再入場でも入れないため、裏側の説明文は入場前の確認・撮影が必須です。

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2.エントランスの多色成形機模型と大量の金型

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エントランスではまず入場手続きを行います。
この時、体験用IDカードが渡され、こちらを使ってプラモデルの企画開発体験をしていきます。

体験用IDカードがプラモデルのランナーを模したデザインになっていてテンションが上がります。
このカードは最後に返却する必要があるので、撮影するなら今のうちに。

エントランス(2階)では実物大の多色成形機模型が来場者を迎えてくれます。

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白基調で作られたモニュメントとしての成形機は美しく、芸術品のようです。
モニュメントでありますが、しっかり金型が取り付けられています。

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このエントランス空間で注目したいのは、壁面にある金型です。
成形機がモニュメントであることから、この金型も精巧に作られた展示用装飾ではないかと思います。

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全部で6か所、それぞれ25枚あるので、この空間に150枚の金型が存在することになります。

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金型を目的にBHC PDII MUSEUMに参加された方は、この空間がもしかしたら一番楽しいかもしれません。

さらに金型の上には成型されたプラモデルランナーが綺麗に並んでいます。
ランナー状態でも展示の仕方によってアートのように見えます。

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注意しなければいけないのが、この空間は入場前の待機スペースになっているため、デザインロードにつながるゲートに入ってしまうと再び見ることができません。
ゲート入場前にじっくり見ておきましょう。

3.企画書が並ぶデザインロード

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エントランスから入り、スタディエリア(2階)のデザインロードでは、これまで製作されたプラモデルの商品企画書を見ることができます。
企画書を見ることができる機会は少ないため、貴重な資料として見入ってしまいます。

手書きの企画書も見ることができます。

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イラストの横に書かれたちょっとした製造に関わる手書き指示などが気になるのは職業病でしょうか。

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3Dで描かれた企画書もあります。

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さらにデザインロード後半(奥側)には図面も展示されています。

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比較的最近(2020年以降)作成された図面ばかりのようでした。

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こちらの空間も待機エリアのような位置づけで、5分程度しか見る時間がないため急ぐ必要があります。


4.プラモデザイナーテスト登録手続き

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プラモデルの企画開発体験にあたり、配られた体験用IDカードで登録を行います。
使える名前はひらがなと英語でした。

人数を数え忘れてしまったため正確な数値ではありませんが、1つのグループは20人程度だっため比較的スムーズに端末の操作が進みました。

また、施設内で利用できるトイレはこの空間にしかないため注意です。
トイレのサインもオシャレです。

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5.大型スクリーンでのプラモデル製造工程紹介

登録後に移動する空間でまず目にするのが、約15m×約2.6mの大型スクリーンを用いた映像です。

こちらではプラモデル製造工程の奥深さや面白さが紹介されています。
この映像は録画・録音が禁止となっています。

映像は5分程度で、その後工場の内部が公開されます。
工場内部がゆっくり見れるのはこのタイミングになります。

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自動搬送機が動いているところも見ることができました。

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6.プラモデルの製造工程解説

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プラモデル製造工程として「1.企画」「2.設計」「3.金型」「4.調色」「5.成形」「6.パッケージデザイン」「7.出荷」の順に、スタッフの方が解説してくれます。

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さらにこのエリアからは自動倉庫を見ることができます。
自動倉庫を見れる機会は少ないため、これも貴重な経験です。

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7.4000体のガンプラと多色成形機の三面図

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スタディルーム(2階)の途中には、4000体のガンプラ展示と多色成形機の三面図が描かれたエリアがあります。

バンダイホビーセンター新工場では、多色成形機1台あたり1日で約4000枚のランナーが製造可能となっています。
新工場のプラモデル生産力を可視化する形で、このエリアには壁一面に組み立てられたガンプラ4000体が展示されています。

大量生産を可能にする技術の1つが金型を用いた成形加工です。
そのため、このエリアに金型の展示はありませんが、この空間は金型の凄さが表現されているといって過言ではありません。

工場および機械の生産能力の見せ方として、成形された製品を大量に展示するというのは面白い演出でテンションが上がります。

ちなみにこの空間に展示されている4000体のガンプラは、イベント会場などに参加されたファンの皆さまが組み立てられたようです。
「自分が組み立てたガンプラがBHC PDII MUSEUMに展示してある!」とニヤニヤできる人が4000人もいるのはうらやましいです。

床面と壁面には実物サイズの多色成形機が三面図で描かれています。
線画の多色成形機もいいですね。

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8.スタディルームの金型エリア

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スタディルーム(2階)には「3.金型」として金型専用エリアが存在します。
金型専用のエリアが他の工程と同じ扱いで存在しているのは嬉しいですね。

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実物の金型が展示されています。

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保存状態から、こちらに展示されている金型は実際に成形に使われたものであると想像できます。



9.プラモデルの企画開発体験開始

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BHC PDII MUSEUMの目玉コンテンツがラボラトリーエリア(2階および3階)です。
ラボラトリーエリアではプラモデザイナーとなってプラモデルの企画開発が体験できます。

プラモデルの企画開発体験は各工程をシステムが自動採点をしてくれるため、プラモデルデザイナーとしてのスキルが数値化されます。

タッチパネルでプラモデルの形や色を決めていき、様々な角度でデザインをチェックできます。
中間の採点も見ることができるため、最高のプラモデルを開発するためにPDCAサイクルを回していきましょう。

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体験画面について、プラモデルを「ななめ」「まえ」「よこ」から見たり、「分解図」を見ることができるなど凝っています。
画像は最初のステップで各パーツのサイズを決めているシーンです。

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色も自分で決めることができます。
今回私はタクミセンパイのメインカラーであるインディゴと、補色に使っているグリーンを採用しました。

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体験ごとに部屋を移動していくのですが、各部屋で工場見学をすることができます。

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10.プラモデルのランナー設計体験

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金型を楽しみにBHC PDII MUSEUMに参加されている方にとっては、プラモデルのランナーを設計する工程が一番楽しめると思います。

プラモデルのランナー設計体験の様子がこちらです。



金型内でのランナーレイアウトを決めるのですが、これが難しい!
スタッフの方も「難しいですよね…」とお話されていたので、プロの方にこちら是非チャレンジしてみてほしいです。

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決定したレイアウトに対して樹脂を流し込むテストショットで点数が決まる仕組みで、これは学習コンテンツとして単体でのゲーム化希望です。

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さらにこの空間に入ってテンションが上がったのが、まさかの切削工具の展示がありました!
やすりや作業手袋など道具という括りで展示されているのですが、道具の1つとして切削工具も複数並んでおり、事前情報にはなかったのでサプライズでした。

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11.プラスチック成形の実演とミュージアム限定の成形品

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BHC PDII MUSEUMの最後には稼働するプラスチック成形機を見ることができます。
製造業の皆さんが大好きな実機、そして実演です。

成形されたランナーが取り外される様子です。



成形機の近くには金型も置いてありました。

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金型を吊り上げるホイストもあります。

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スタッフの方にお聞きしたところ、運が良ければ金型の交換が見れるかもとのことでした。

成形されたばかりのランナーを触ることもできました。

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この機械で成形されたミュージアム限定の成形品(プラモデルランナー)を3種類のうち1つを持ち帰ることができ、最高のお土産になります。
やはり目の前の機械から生まれた製品を手に取ることができる体験は、製造業や金型に興味を持つキッカケとしては重要だと思います。

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12.パッケージデザイン

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最後の体験として、自分が企画したプラモデルに対するパッケージデザインにもチャレンジすることができます。
パッケージはプラモデルの販売数にも影響するため重要な工程です。

プラモデルの企画開発体験の最後には、パッケージの印刷物(シール)とデータ(QRコード読み取り)を持ち帰ることができます。
ミュージアム限定の成形品・箱・注意書きの3点と、パッケージの印刷物を入れるための袋も用意されています。

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ちなみに私のデザインしたパッケージはこちらです。

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評価としてはA(2000pts)で、まだまだ修行が必要なようです。

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13.ギャラリー

ギャラリーには、各参加者の総合評価がランキングとして表示されています。
プラモデルの企画開発体験で高得点を獲得した子供が、プラモデルデザイナーや企画開発担当を将来の仕事として選ぶかもしれないと思うと胸が熱くなります。

バンダイのインタビューでも、幼い頃にプラモデルを作ってモノづくりの楽しさに目覚め、大人になってモノづくり産業を支える人材になってほしいという想いが紹介されています。

BHC PDII MUSEUM施設内ではプラモデルの販売は行っておらず、プレミアムバンダイ(オンラインストア)で来場者限定オンライン販売商品(限定プラモデル)を注文することができます。
プラモデルはかさ張るので、ネット注文して届けてくれるのは嬉しいです。

金型を目的に参加された方はやはり射出成形機のプラモは買うしかないですね

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プラモデルの販売はありませんが、BHC PDII MUSEUM限定グッズを現地の自動販売機で購入することが可能です。
ラインナップとしてはマフラータオル、ピンズセット、ハンドタオル、エコバックなどがありました。

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支払いは電子マネー決済のみとなっています。

残念ながら金型を模したようなグッズはありませんでした。
金型関連のグッズ化希望です!

14.稼働中のプラモデル工場見学

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BHC PDII MUSEUM内から稼働中のプラモデル工場を一部見学することができます。
3階(梱包、出荷などのゾーン)以外は撮影OKであるため、貴重な体験をすることができます。

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BHC PDIIのコンセプトは「魅せる工場」です。
人が創造の根幹であるという考えから、働く従業員に魅せる工場となっており、家族や友人に自慢できる、そして人が集まる場所を目指して創られています。

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BHC PDIIでは働かれている方の制服も新規で製作されています。
カッコイイデザインで、制服デザイン関連のグッズ化も期待してます!

金型を直接見ることは難しいですが、稼働する成形機の中で活躍する金型をイメージすることができる空間です。
運が良ければ、金型を交換している瞬間に立ち会えるかもしれません(詳細不明)

編集長コメント

「プラモデルの企画開発体験ミュージアムで金型を見て学ぶ」いかがでしたか。

BHC PDII MUSEUMの抽選予約が始まってすぐ9月2日9:30(初日の初回)に応募し、運よく当選して参加することができました。

一般参加者としてBHC PDII MUSEUMに訪問し、見て学べる金型コンテンツを存分に紹介させていただきました。

国内で実物の金型が常設展示されている施設はトヨタ産業技術記念館くらいしか知らず、BHC PDII MUSEUMは金型ミュージアムといっても過言ではない展示数です。

開館したばかりでなかなか抽選に当選することが難しいかもしれませんが、製造業の皆さまにこそ是非訪れてほしい施設です。

1点不満があるとすれば、見る時間が少ないこと。
基本的にはスタッフさんの進行でどんどん進んでいくため、自分のペースで見ることができません。

希望としては通常の2倍の時間で見学できるプラン(金額も2倍)、もしくはリピーター用のスタッフ解説なしで自由見学できるプランなど用意いただけると嬉しいなと思いました。

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執筆者情報

hattori


本記事はタクミセンパイの服部が執筆・編集しました。

私は工具メーカーでの営業とマーケティングの経験を活かし、切削工具と切削加工業界に特化した専門サイト「タクミセンパイ」を2020年から運営しています。
私(服部)の実績や経歴については「運営について」に記載しています。

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