金型業界の今がわかる統計データをまとめて確認したいと困っていませんか。
この記事を書いた私は工具メーカーでの営業・マーケティングの経験を活かし、切削工具と切削加工業界に特化した専門サイト「タクミセンパイ」を2020年から運営しています。
2021年時点で公開されている統計データをわかりやすく表現、一部組み合わせて本記事を執筆しました。
本記事では日本の金型生産額、産業別の生産需要の他、世界の金型生産高と輸出・輸入先、金型製造業の事業所・従業員数の推移をまとめています。
この記事を読むことで、日本の金型業界の現状を過去データとの比較、世界との比較で把握することができます。
世界の金型生産高3位の日本は、金型生産高が2019年と1991年比較で30%減少、金型製造業所の事業所が2019年と1986年比較で45%減少、従業員数が20%減少しています。
本記事と同テーマで書いた最新の記事として「【2024年】金型業界の今を統計データで徹底分析」を公開しています。
金型業界の今を統計データで徹底分析
2021年現在の金型業界を把握するために、下記の情報についてまとめました。
- 日本の金型市場
- 日本の業界別の生産需要
- 世界の金型生産高と輸出・輸入先
- 金型製造業の事業所・従業者数の推移
- 日本金型工業会について
- 令和時代の金型産業ビジョン
- 11月25日「金型の日」
- 学生金型グランプリ
- 金型協会
日本の金型市場について
金型生産額の推移
上記グラフは、金型生産額の推移(1982年~2018年)をまとめたものです。
日本金型工業会がまとめた、工業統計および経済センサス(産業編)のデータを利用しています。
(2011年・2015年・2020年は工業統計調査が実施されなかったため、経済センサス(産業編)を使用)
1991年が金型生産額のピークで、その後二度の下降と上昇を繰り返し、リーマンショックで大ダメージを負い、現在ゆっくりと回復しています。
金型の生産高がピークだった1991年(平成3年)は1兆9,575億円で、2019年(平成30年)は1兆3,602億円であるため、金型生産高は30%減少しています。
都道府県別金型生産額(2018年)
上記グラフは、都道府県別の金型生産額の上位5県(2018年)をまとめたものです。
工業統計のデータを利用しています。
愛知県が圧倒的に金型の生産額が大きく、2位の静岡の2倍以上あります。
また、プレス型、鍛造型、プラスチック型の3つの金型種が、他県と比較して生産額が最も大きくなっています。
神奈川県はプレス型が愛知と同程度、大阪はゴム型・ガラス型が愛知以上、広島は鋳造型・ダイカスト型が愛知以上あります。
日本の業界別の生産需要(2020年)
上記グラフは、需要業界別の金型生産金額構成(2020年)をまとめたものです。
日本金型工業会調べのデータを利用しています。
圧倒的に自動車用が多く、73.7%を占めています。
自動車用以外は、5%未満です。
世界の金型生産高と輸出・輸入先
世界の金型生産高(2019年)
上記グラフは、世界の金型生産高(2019年)をまとめたものです。
ISTMA Statistical Book 2019のデータを利用しています。
世界の金型生産高上位は中国、アメリカ、日本、韓国、ドイツとなっています。
1位の中国は日本の約2.7倍、2位のアメリカは日本の約1.4倍の生産高です。
日本は3位です。
直近では、中国および韓国の躍進が目覚ましいです。
金型の輸出金額(2020年)
上記グラフは、日本の金型輸出金額(2020年)をまとめたものです。
貿易統計(財務省)のデータを利用しています。
日本の金型輸出金額上位はアメリカ、中国、タイ、メキシコ、インドネシアとなっています。
日本は世界の金型生産高1位の中国と2位のアメリカに対して、輸出しています。
金型の輸入金額(2020年)
上記グラフは、日本の金型輸入金額(2020年)をまとめたものです。
貿易統計(財務省)のデータを利用しています。
日本の金型輸入金額上位は中国、韓国、タイとなっています。
日本は世界の金型生産高1位の中国から輸入しています。
金型製造業の事業所・従業者数の推移
上記グラフは、金型製造業の事業所・従業員数の推移(1986年から~2019年)をまとめたものです。
日本金型工業会がまとめた、工業統計および経済センサス(産業編)のデータを利用しています。
(2011年・2015年・2020年は工業統計調査が実施されなかったため、経済センサス(産業編)を使用)
事業所数と従業員数はともに下降傾向です。
2019年は1986年と比較して、事業所数は45%減少、従業員数は20%減少しています。
事業所数の減少が従業員数より大きい理由は、金型製造業は従業員数9名以下の企業が7割、19名以下の企業が8割を超えているからです。
日本金型工業会について
日本金型工業会のあゆみ、目的、事業内容をまとめました。
日本金型工業会のあゆみ
1957年11月 (昭和32年) | 金型製造業者の全国組織「日本金型工業会」設立 |
2007年9月 (平成19年) | 金型産業ビジョン(日本の金型産業が目指す方向性)策定・発表 |
2009年4月 (平成21年) | インターモールド2019にて第1回日・中・韓大学金型グランプリ開催 (のちの学生金型グランプリ) |
2014年3月 (平成26年) | 新・金型産業ビジョン策定・発表 |
2014年10月 (平成26年) | 第1回金型シンポジウム開催(福岡県九州にて) |
2018年8月 (平成29年) | 金型マスター認定制度発足、金型アカデミー開催 |
2020年4月 (令和2年) | 金型学校(仮称)発足 |
2020年9月 (令和2年) | 令和時代の金型産業ビジョン策定 |
2021年3月 (令和3年) | 記事執筆時の3月○○日の正会員は409社、賛助会員は171社 |
日本金型工業会の目的
プレス用金型、プラスチック用金型、ダイカスト用金型、鋳造用金型、鍛造用金型、ゴム用金型、ガラス用金型などに関する事業を行うことで、金型工業および関連産業を発展させることを目的としています。
*読みやすいように原文から編集しています
日本金型工業会の事業内容
日本金型工業会の事業内容は、下記8つがHPに記載されています。
- 金型に関する生産、流通等の調査及び研究
- 金型に関する技術の調査研究
- 金型に関する規格の立案及び推進
- 金型に関する情報の収集及び提供
- 金型に関する普及及び啓発
- 金型に関する内外関係機関との交流及び協力
- 金型工業の構造改善計画の作成、構造改善計画の推進及び指導
- 前各号に掲げるもののほか本会の目的を達成するために必要な事業
令和時代の金型産業ビジョンについて
日本金型工業会が、「令和時代の金型産業ビジョン」を2020年(令和2年)10月に公開しています。
2007年(平成19年)9月に「金型産業ビジョン」、2014年(平成26年)3月に「新・金型産業ビジョン」が作成されており、今回がVer3.0となっています。
ビジョン、戦略、戦術が下記とされています。
ビジョン | 総力を終結し、新たな価値を顧客に提供し、 日本国内の雇用と金型生産インフラを維持 |
戦略 | 金型工場から企業に転換し、顧客提供価値の拡大 |
戦術 | 連携、統合、協業 IoT、自動化、デジタル化 事業形態(専業兼業、国内海外) 人材育成・確保 事業継続計画(BCP)策定 健全な取引慣行の実現 |
11月25日「金型の日」について
日本金型工業会は1974年に11月25日を「金型の日」に制定しています。
金型産業の重要性を国内外に広く訴え、今後の業界の発展を目的として、工業会の創立記念日を「金型の日」と定めています。
毎年、講演会や優良従業員表彰などの記念式典が実施されています。
学生金型グランプリについて
日本金型工業会が主催となって2009年から「学生金型グランプリ」を開催しています。
学生金型グランプリとは
教育現場において金型製作を学ぶ学生たちが同じテーマ(出題)に基づき金型製作を行い、その成果をINTERMOLD展にて金型、成形品サンプルを展示、発表することによって、金型産業の重要性、金型づくりのおもしろさの認識度を国内外に高めるとともに、本グランプリ参加の学生の金型製作技術の向上を目指しています。
(参照:学生金型グランプリのWEBページより)
第12回学生金型グランプリについて
2020年に開催された、第12回学生金型グランプリの概要が下記となっております。
開催期間 | 2020年10月5日(月)~16日(金) |
会場 | インターモールド/金型展 オンライン展示会内 |
部門 | プラスチック用金型部門、プレス用金型部門 |
主催 | 一般社団法人日本金型工業会 |
出題協力 | 大垣精工株式会社 日本金型工業会東部支部金型生産システム研究会 |
審査協力 | 株式会社ミツトヨ |
表彰協力 | 一般財団法人産業デザイン |
参加校 | プラスチック用金型部門 大分県立工科短期大学校 大阪電気通信大学 岐阜大学 九州工業大学 山形県立産業技術短期大学校 プレス用金型部門 岩手大学 大阪工業大学 岐阜大学 山形県立産業技術短期大学校 |
通常、インターモールドの会場内で実施されていますが、2020年は新型コロナウイルスの影響でオンライン開催となり、オンライン展示場内で実施されています。
金型協会
2011年に日本金型工業会・西部支部に所属する関西や西日本の一部の会員が独立して発足した協会です。
しかし、市場のグローバル化やリーマン・ショックによる経済活動の減速等で会員数が発足当初の約70社から40社に減少、新型コロナウイルスの影響で活動中止が続き、2021年3月4日の臨時総会をもって解散することが決まりました。
金型業界の今を統計データで徹底分析まとめ
- 1991年が金型生産額のピークで、その後二度の下降と上昇を繰り返し、リーマンショックで大ダメージを負って現在ゆっくりと回復している
- 2019年の金型生産高は1991年と比較して30%減少している
- 都道府県別金型生産額について、愛知県が圧倒的に金型の生産額が大きく、2位の静岡の2倍以上ある(2018年データ)
- 日本の金型の産業別の生産需要は圧倒的に自動車用が多く、73.7%を占めている(2020年データ)
- 世界の金型生産高上位は、中国、アメリカ、日本、韓国、ドイツ。1位の中国は日本の約2.7倍、2位のアメリカは日本の約1.4倍の生産高(2019年データ)
- 日本の金型輸出金額上位はアメリカ、中国、タイ、メキシコ、インドネシア(2020年データ)
- 日本の金型輸入金額上位は中国、韓国、タイ(2020年データ)
- 日本金型工業会は2020年(令和2年)10月に「令和時代の金型産業ビジョン」を公開している
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執筆者情報
本記事はタクミセンパイの服部が執筆・編集しました。
私は工具メーカーでの営業とマーケティングの経験を活かし、切削工具と切削加工業界に特化した専門サイト「タクミセンパイ」を2020年から運営しています。
私(服部)の実績や経歴については「運営について」に記載しています。
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