タクミセンパイが主催となって開催する切削工具に特化したオンラインイベント「切削工具フェス」の企画の1つが「切削工具改善コンテスト」です。
こちらは2022年7月に開催した切削工具改善コンテスト2022で大賞を受賞した「武井製作所」のインタビュー記事です。
工作機械情報、被削材情報、改善前の加工情報、改善後の加工情報、改善にあたっての担当者の思いを紹介しています。
切削工具改善コンテスト2022大賞
切削工具改善コンテスト2022の概要と、大賞を受賞された株式会社武井製作所の応募内容について紹介します。
切削工具改善コンテストについて
2022年7月1日から7月31日まで開催された「切削工具フェス2022」の企画の1つとして、切削工具ユーザー(工作機械で切削加工されている方)を対象として、切削工具の改善に関するコンテストを開催しました。
切削工具の改善とは、採用中の切削工具を新しい工具に改善(変更)して生産性を向上させることと定義しています。
タップから高性能のタップに変更することも、タップからスレッドミルに変更することも切削工具の改善に該当します。
切削工具の改善によって工具技術者がもっと評価される社会にしたいという想いで、切削工具の改善を競うコンテストを開催し、タクミセンパイが頑張る皆さまを表彰させていただくというコンセプトになります。
受賞者情報
会社名 | 株式会社武井製作所 |
受賞者名 | 製造部 統括部長・工場長 三枝様 製造一部二課・リーダー 纐纈様 |
工作機械情報
使用した工作機械の種類 | 複合旋盤 |
使用した工作機械メーカー | シチズンマシナリー株式会社 |
使用した切削油剤メーカー(型番) | タイユ株式会社(SX-507K) |
被削材情報
加工する被削材の材料名 | SCM415 |
加工する被削材のカテゴリ | その他部品 |
加工する被削材の月間生産量 | 150個 |
改善前の加工情報
改善前の切削工具の種類 | 旋削加工用の内径・外径工具 |
改善前の加工条件 | 周速S180 送りF0.2 |
改善前の加工時間 | 95秒 |
改善前の切削工具の寿命 | 150個 |
改善前の課題 | ・削る量が多いので時間がかかる ・ワーククランプ力が弱い ・摩耗してくると切粉が伸びてしまう |
改善後の加工情報
改善後の切削工具の種類 | 旋削加工用の内径・外径工具 |
改善後の切削工具メーカー(型番) | 株式会社タンガロイ (6C-TOMG250608M-TM) |
改善後のツーリングメーカー(型番) | 株式会社タンガロイ (ATXOR2020K25-A) |
改善後の加工条件 | 周速S150 送りF0.6 |
改善後の加工時間 | 72秒 |
改善後の切削工具の寿命 | 150個 |
改善後の定量的なメリット | ・加工時間短縮による生産性向上と原価低減 |
改善後の定性的なメリット | ・摩耗しても切粉が伸びなくなり、切粉の廃棄処理が楽になった ・新しい加工方法を経験し結果が出せた |
改善にあたっての担当者の思い
今回使用した工具は後挽き加工に特化したものである。
後挽き加工の経験があまりなく、しかもワークのクランプ力もあまり強くない悪条件の中で改善をスタートさせた。
加工者の頑張りもあり、結果とんでもなく早い送りでの加工に成功した。
見たことのない送りでの加工に、加工担当者と一緒に楽しんで改善ができた。
まだ改善の余地が残っているため、今後さらにサイクルアップが期待できそうである。
これにより、削り代が多いワークに横展開も考えており今後がとても楽しみである。
加工時間のかかる製品を効率よく加工できる様に、今後も改善に取り組んでいきたい。
何より新しい経験と実績が出来たことが1番嬉しく思う。
1. 切削工具改善コンテストの参加理由
タクミセンパイ服部(以下、服部):切削工具改善コンテストに参加された理由を教えてください。
武井製作所 三枝様(以下、三枝様):6月から切削工具の改善に取り組んでおり、タイミング良くコンテストが開催されていたため、参加しました。
改善対象は継続的に発注いただいている品で、タンガロイから出たばかりの新製品に目星をつけて、改善に取り組みました。
通常、切削工具の改善を社外に発信する機会はありませんが、コンテストを通じて社外の方に見てもらうことができ、モチベーションが上がりました。
2. 切削工具改善コンテストを受賞して
服部:切削工具改善コンテストを受賞されてからの周りの反応、賞品である10万円の使い道について教えてください。
三枝様:取引先や、改善に協力いただいたタンガロイの営業さんからコンテスト受賞についてご連絡いただきました。
賞金の使い道は、現場での改善のためにヘッドカメラの購入を検討しています。
3. 武井製作所のものづくりの強み
服部:武井製作所におけるものづくりの強みを教えてください。
三枝様:武井製作所は、複合旋盤、NC旋盤等を用いた超複合加工品(工程集約複合加工品)を得意としています。
軸物・シャフト、ボルト・ネジ、継手・配管、空圧部品、油圧部品、精密切削部品等の実績があります。
複合加工品での実績・強みを活かし、複合旋盤加工.comを運営しています。
武井製作所には、工程能力を維持管理し、量産化するための材料選定から旋盤加工、表面処理までのノウハウがあります。
また、工程設計では綿密な打合せのもと、いただいた図面にVA・VE提案を加え、最適な形に起こし直します。
そして、工程ごとに図面を作成することで、間違いをなくし、より高品質な製品をお届けできる体制を整えています。
最近では3Dデータの作成にも取り組んでいます。
その理由は、視覚的にわかりやすくすることで、社内のオペレーターが加工しやすくなり、お客様へのVA・VE提案時に説明しやすくなるからです。
4. 武井製作所のDXの取り組み
服部:武井製作所ではDXへの取り組みを積極的にされているとお聞きしております。具体的な取り組み内容を教えていただけますか。
三枝様:工場の稼働状況のモニタリングを実施しています。
こちらによって工場全体の稼働状況の把握が簡単になりました。
また、AIスタートアップに協力する形で、刃物交換タイミングを通知するシステムのための情報取得に取り組んでいます。
工具・ホルダーの管理システムを導入し、運用を進めています。
在庫状況の把握、無駄な発注の削減、ホルダーを探す手間の削減などの効果を感じています。
編集長コメント
コンテストを通じて切削工具の改善を社外に発信し、モチベーションを上げられていることに、改善意識の高さを感じました。
日本では切削工具の改善が評価されづらく、担当者のモチベーションにつながらないという話を聞くため、コンテストの趣旨を理解して参加いただけたのは主催者として非常に嬉しかったです。
武井製作所様は切削工具の改善だけでなく、DXについても様々な取り組みをされています。
商談ではVA・VE提案を積極的に実施されており、改善意識の高さが武井製作所様の強みであることがわかりました。
切削工具改善コンテストは来年以降も開催する予定ですが、第1回にふさわしい会社・担当者に受賞いただきました。
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執筆者情報
本記事はタクミセンパイの服部がインタビュー・執筆・編集しました。
私は工具メーカーでの営業とマーケティングの経験を活かし、切削工具と切削加工業界に特化した専門サイト「タクミセンパイ」を2020年から運営しています。
私(服部)の実績や経歴については「運営について」に記載しています。
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